ウィリアム・ベネット追悼コンサート レポート
2022年5月11日、イギリスの世界的フルート奏者ウィリアム・ベネット氏が逝去された。ベネット氏(以下 Wibb)はロンドン交響楽団、アカデミー室内管弦楽団などオーケストラの首席奏者を務め、1995年にはエリザベス女王より、大英帝国勲章(OBE)叙勲。
日本でも人気の高い奏者で、アルタスフルートと開発した「アルタススケール」は、奏者にとっての最大の課題である「音程」を改善するものとして大きな注目を浴びた。
夫人である美知恵・ベネットさんが主宰した追悼コンサートは、奇しくもエリザベス女王の国葬と日程が重なってロンドンは大変な状況だったが、無事に開催された。Wibbの弟子であり本誌の連載でも人気の古川仁美さんのレポートによってお届けしよう。
※Wibbとは、ベネット氏の愛称
「Wibbが一番喜ぶことは何か!」を知り尽くした、奥様・美知恵さんの愛情あふれる素敵なコンセプトで企画・構成された『Wibbへの祝福!』の記念コンサートに、Wibbファミリーが集いました。すべての人がとてもフレンドリーで、オープンマインドで、カタコト英語でもすぐに打ち解けてしまうのは、Wibbの存在のとても大きく豊かな温かさが作り上げたこと。『Be Happy!(幸せであれ!)』の言葉のまま、彼の生き様そのもの。ファミリーの一員でいられることを、心の底から幸せに感じた時間でした。
大切な宝物となった1週間の様子を、レポートさせていただきます。
ロンドン1日目 エリザベス女王陛下もロンドンへ
イギリスへの機内のニュースでは、エジンバラでの様子が流され、偶然にも渡英した日は、女王陛下の棺もロンドンに到着というタイミング。街中いたる所に写真が飾られ、ご来訪を受けた所では、選び抜かれたのであろう思い出の写真が飾られ、追悼の言葉が掲げられていました。混乱もなく人々はとても親切で、かえって街は穏やかな印象を受けました。
ロンドン2日目 ロイヤル・オペラ
宿の周りの散策と、生活必需品の買い出しの後は、ホテルに戻って日本のZOOM講座を受講できてしまうのが今の時代ならでは。その後、ナショナル・ギャラリーで、お気に入りのターナーを堪能。懐かしいセント・マーティンズ・イン・ザ・フィールドを覗いたら、古楽のリハーサル中。『AtoZ』ではなく、Googleマップを頼りにうろ覚えの方向感覚で、唯一日本で予約をしていたオペラ鑑賞へ。ロイヤル・ボックスの電気は消灯されていて、緞帳の《エリザベスⅡ世》の称号は黒い布で隠され、開演前には挨拶と国歌の演奏があり、会場の全員が起立して斉唱。歌詞は「♪God save the King」に。この日の演目は「サロメ」。美しいフルートのソロと、大好きなコヴェント・ガーデンのオーケストラの響きに浸りました。