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N響首席対談 神田寛明&𠮷村結実
自分だけの世界にとらわれず周りを見渡す─そうすれば演奏の答えが見つけられる
“オーケストラで演奏するとき、他の楽器の奏者はフルートにどんなイメージを抱いているのか”“フルート以外の楽器にはどんな苦労があるのか”——そんな疑問があり、NHK交響楽団(以下 N響)にフルート奏者との対談を打診したところ、本誌でもおなじみ神田寛明さんと、首席オーボエ奏者の吉村結実さんとの取材が実現! オーボエのあれこれや合わせ方などをたっぷり話してもらった。
取材協力:NHK交響楽団
オーボエの戦いとは?
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今回、ザ・フルートでは珍しくフルート以外の奏者さんにご登場いただきました。では最初にお二人がN響で気を配っていることからお願いします。
神田
いろいろなことに気を配っていますがバランスですね。指揮者は「ここは抑えて」などの指示は出しますが、我々もそれと同じ感覚が必要です。指揮者の指示通りにやるけれど、指揮者がすべてを一から指示するのは現実的ではないでしょう。それに我々のやりたいこともありますし。指揮者は何をしたいのか、ということをこちらは判断しないといけません。
𠮷村
神田さんのおっしゃるとおりですね。同じことかもしれませんが、いろんなところにアンテナを張り巡らせる必要があります。リハーサルの時間も限られているので、その場その場で対処することも多いですね。
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お二人は隣同士で吹くことが多いですが、𠮷村さんから見たフルートはどういう楽器ですか?
𠮷村
リードがなくて羨ましいです(笑)。すぐに良い音で音出しができますし。私たちはまずリードを水につけて、“今日はどんな音が出るかな”というところから始めないといけません。音を出すための準備がけっこうあるんですよ。
神田
木管楽器4種類の中で、フルートだけリードがありません。だから他の木管楽器の人から見ると、フルート奏者は湿度や温度の話が通じないヤツと思われているかな。リード楽器の人は「今日は湿度が高いよね」と言うことが多いけど、私は「そう?」と返すだけだから(笑)。
𠮷村
湿度と気圧、天気の変化はすごく気になりますね。朝一番で音出しをして良いリードを見つけても、1時間経って気圧が変わるとさっき選んだのは使えない、ということはしょっちゅうあります。
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これはフルートにはない苦労ですね。
𠮷村
オーボエはリードにストレスを感じている人が大半だと思います。音が出るか出ないかの戦いから始まります。もちろんフルートにはフルートなりの難しさがあると思いますが……。
演奏会の最後の曲が終わるまで何が起こるかわかりません。ブレスや休符の間にリードが歯に当たってしまって使えなくなることもあります。曲が終わるまで、ずっと頭の片隅にはリードのことがありますね。
演奏会の最後の曲が終わるまで何が起こるかわかりません。ブレスや休符の間にリードが歯に当たってしまって使えなくなることもあります。曲が終わるまで、ずっと頭の片隅にはリードのことがありますね。
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オーボエ奏者はリードケースをステージに持って上がりますが、何本ぐらい持っていくものですか?
𠮷村
私は10本入りのケースを持って行き、1回のステージで4、5本使います。その中で本当にいいリードは1、2本で、曲によって使い分けます。
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オーボエの方はリードをいつも削っているイメージがあります。
𠮷村
リードづくりがなかったら、その時間を練習に充てられるのにな、と思います。
神田
その分こちらはもっと練習しないと(笑)。
インタビューは続きます!