フルート記事 何でも観て聴ける時代だからこそ、自分で考え、感覚を養って。
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《ONLINE限定インタビュー完全版》特集1 │ 現代【高木綾子】

何でも観て聴ける時代だからこそ、自分で考え、感覚を養って。

ARTIST

単独インタビューは164号以来となる高木綾子さん。演奏、大学でのレッスン、そして家庭との両立と多忙を極める中で、幸運にも今回お話を伺うことができた。堅実に積み重ねてきたキャリアとこれまでの経験から生まれる華やかさ、そして凛とした雰囲気をまとう高木さんは、名実ともに現在の音楽界を牽引するトッププレイヤーの一人だ。今のフルート界について、奏者と指導者の視点から語っていただいた。
なお、THE FLUTE ONLINEでは本誌に掲載できなかったインタビューを含め、完全版でお届けする。

写真:河野英喜(株式会社エントランス)

 

配信や動画が増えた現代

コロナ禍を経て、インターネット配信や動画共有サイトなどで様々な演奏を聴くことができる時代になりましたが、その中で生演奏の醍醐味や魅力を、奏者の視点からどのようにお考えでしょうか?
高木
やはり響きの違いや演奏との一期一会は、ホールでないと感じられないのかなと思います。インターネット配信などは、世界中の公演を家にいながらリアルタイムで聴けるので、勉強の機会も増えていると思いますが、音の違いが気になります。
家庭用のスピーカーにも限界がありますし、ほとんどの場合はスマートフォンなどで聴いていると思うので、質感の差は否めないですね。あとは目から入る情報の影響はすごく大きくて、今は映像で何回でも再生して観られるので味気ないなとも思います。生配信もアーカイブに残る場合は巻き戻しができてしまいますよね。会場に行って、1~2時間という限られた公演時間の中で「感じたものを取り入れたい!」と思いながら聴くのと、「あとでまた聴けるからいいや」と思いながら聴くのとでは、受け取る側の重みも違ってくる。特に管楽器の呼吸感には差があるように感じます。私も行けない公演を配信で見たことはありますけれど、どうしても何かをしながら観てしまうんですよ。集中力のない聴き方をしてしまって申し訳なく思うことも多々あります。そういう聴き方はしたくないし、できる限り生演奏を聴きに行きますね。
演奏する側としては、私はやっぱり生演奏で聴いてほしいので、基本的に配信はNGにしているんです。たまにアンコールピースなどをSNSにアップしたりすることはありますが、ライブ配信はほとんどしたことがありません。自分のリサイタルは生配信したくないなぁと思っているタイプです(笑)。それくらい違いがあると思いますし、私が聴いてほしいものも違うんです。生演奏をホールで聴いていただいたほうが、自分が用意したものをお客様に全部受け止めてもらえるのかなと思います。
 

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高木綾子 Ayako Takagi
愛知県豊田市生まれ。東京藝術大学付属高校、東京藝術大学を経て、同大学院修了。第17回日本管打楽器コンクール、フルート部門第1位及び特別賞(2000年)、第70回日本音楽コンクールフルート部門第1位(2001年)、ジャン=ピエール・ランパル国際フルートコンクール第3位(2005年)、神戸国際フルートコンクール第3位(2005年)など多数の受賞歴を誇る。これまでに国内主要オーケストラとの共演はもとより、ミラノ弦楽合奏団、サンクトペテルブルク交響楽団、フランツ・リスト室内管弦楽団などと共演。2004年秋にはパリ室内管弦楽団との共演でパリ・デビュー。それに続く日本ツアーにも同行し好評を博した。CD録音も活発に行なっており、2000年3月には「シシリエンヌ~フルート名曲集」「卒業写真~プレイズ・ユーミン・オン・フルート」を同時リリースしてCDデビュー。その後「イタリア」「EARTH」などをリリースしてそのすべてが高い評価とセールス実績を残している。現在東京藝術大学准教授、および洗足学園音楽大学客員教授、日本大学芸術学部、武蔵野音楽大学、桐朋学園大学の非常勤講師として後進の指導にもあたっている。

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