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THE FLUTE 150号 Cover Story
演奏に関して、自分のアイデアをもっと達成するために ダヴィデ・フォルミザーノ
昨年、ドイツ・グラモフォンレーベルよりCD「PORTRAIT」をリリースしたダヴィデ・フォルミザーノ氏。それを記念して、12月に福岡・宮崎・東京の3都市で日本公演を行なった。CD・コンサートともに共演したピアニストのフィリップ・モル氏とは、長年一緒に活動を続けている。そのモル氏とのコンビネーションの秘訣や、CD収録でのエピソード、奏者として指導者として、考えていることや実践していること……など、第一線で活躍するアーティストならではの思いを語ってもらった。また、日々の練習メニューや楽器選びへのアドバイスなど、フルート愛好家にとって大いに参考になる話題もたくさん登場したインタビューとなった。
通訳:嶽道優子/写真:土居政則/取材協力:王子ホール、株式会社日本アーティスト、T&M企画、世田谷桜丘まちづくり
大晦日の夜中まで、ずっと音源を聴き続け……
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あなたはとても若い頃から演奏活動で活躍していらっしゃいますが、十代の頃は、どんなフルート教育を受けてきましたか? また、いつごろからフルーティストになろうと思われたのでしょうか。
フォルミザーノ(以下F)
フルートを始めたのは11歳か12歳の頃です。イタリアでは、中学生になると自分で楽器を選んでそれを練習することができます。それが、そもそもフルートを始めたきっかけだったのですが……最初はクラシック音楽にはまったく興味がありませんでした。初めの頃は練習が嫌いで、練習なしでレッスンを受けるのでまったく上達せず、先生からはいつも叱られていました。「そんなに練習がいやだったら家に帰りなさい」とね。でも私はプライドが高いので、それには反発しました。“帰るものか、やめるものか”とね。それが結果的にはよかったのかもしれませんが(笑)。
ところが、ある日突然、頭の中にパンッと何かがひらめいて「僕はフルートが好きなんだ」と思ったのです。そして、その気持ちは日に日に強くなっていきました。それからはメキメキ上達して、13歳でコンクールで優勝するまでになったのです。気がつけばフルートが自分の人生の一部になっていました。
思春期前の11、12歳頃に考えていたことを、今思い起こして説明するのは難しいのですが……誰に強制されたのでもなく、自然にそうなっていきました。自我の目覚めみたいなもの、「見つけた!」という思いでしょうか、強いて言うなら。
ところが、ある日突然、頭の中にパンッと何かがひらめいて「僕はフルートが好きなんだ」と思ったのです。そして、その気持ちは日に日に強くなっていきました。それからはメキメキ上達して、13歳でコンクールで優勝するまでになったのです。気がつけばフルートが自分の人生の一部になっていました。
思春期前の11、12歳頃に考えていたことを、今思い起こして説明するのは難しいのですが……誰に強制されたのでもなく、自然にそうなっていきました。自我の目覚めみたいなもの、「見つけた!」という思いでしょうか、強いて言うなら。
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今回リリースしたCD「PORTRAIT」の聴きどころを教えてください。
F
フランスの作曲家の作品ばかりを集めて作りました。ヴィルトゥオーゾの曲もあれば、ドビュッシーなどロマン派の優美な曲も収録しています。サラサーテの『カルメン幻想曲』はヴァイオリンの原曲を自分で編曲しました。大いに歌えるところが魅力の曲、そしてフランス音楽独特の見せ場のある曲、それらを織り交ぜているのが特徴です。フルートをあまり聴いたことがない人でも、逆にフルートに詳しい人でも、子どもでも大人でも、さまざまな人が楽しめることを意識して作ったのがこのアルバムです。
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「PORTRAIT」というタイトルにはどんな意味が込められていますか?
F
いろんなスタイルの音楽がたくさん詰まっているという意味を、ポートレイトという言葉に込めています。最終的にタイトル案が3つあったのですが、ドイツ・グラモフォンのマネージャーから「これがいいんじゃないか」と言われたのが決め手になりました。いろんな景色、木や花……写真に映されたそれらのように、多彩な音楽を味わっていただけるアルバムになっていると思います。(次のページに続く)
・次のページの項目
・コンビネーションの最大の秘訣
・名だたる指揮者たちとの共演
Profile
ダヴィデ・フォルミザーノ
Davide Formisano
Davide Formisano
ミラノ生まれ。11歳でフルートを始める。これまで、B.タバレッリ、J.C.ジェラール、A.ニコレの各氏に師事。15歳でガリレオ・ガリレイコンクールで1位受賞後、17歳でランパルコンクール、ミュンヘンコンクールなどの主要コンクールで数々受賞。1995年ハンブルク国立管弦楽団に入団。その後、オランダ放送交響楽団のソロフルート奏者を務めた後、1997年ミラノスカラ座管弦楽団の首席フルート奏者に最年少で合格。
C.アバド、R.ムーティ、CM.ジュリーニ等の著名指揮者の元でオーケストラ活動をする傍ら、リサイタルや室内楽奏者としてもイタリア内外で演奏している。2012年、15年務めたミラノスカラ座管弦楽団を退団。2007年よりシュトゥットガルト音楽大学教授を務め後進の指導にあたっている。世界各地でマスタークラスも行なっている。
C.アバド、R.ムーティ、CM.ジュリーニ等の著名指揮者の元でオーケストラ活動をする傍ら、リサイタルや室内楽奏者としてもイタリア内外で演奏している。2012年、15年務めたミラノスカラ座管弦楽団を退団。2007年よりシュトゥットガルト音楽大学教授を務め後進の指導にあたっている。世界各地でマスタークラスも行なっている。
CD information
「PORTRAIT」
DG-4812042
演奏:ダヴィデ・フォルミザーノ(Fl)、フィリップ・モル(Pf)
曲目:タファネル:「ミニヨン」によるグランド・ファンタジー、ルーセル:笛吹きたち、ゴーベール:ノクチュルヌとアレグロ・スケルツァンド、サン=サーンス:ロマンス OP.37、デュティユー:ソナチネ、ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲、メシアン:黒つぐみ、サラサーテ:カルメン・ファンタジー OP.25
曲目:タファネル:「ミニヨン」によるグランド・ファンタジー、ルーセル:笛吹きたち、ゴーベール:ノクチュルヌとアレグロ・スケルツァンド、サン=サーンス:ロマンス OP.37、デュティユー:ソナチネ、ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲、メシアン:黒つぐみ、サラサーテ:カルメン・ファンタジー OP.25