フルート記事 良い音色と、音程をよくするということが結びついている トレヴァー・ワイ
  フルート記事 良い音色と、音程をよくするということが結びついている トレヴァー・ワイ
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THE FLUTE 149号 Cover Story

良い音色と、音程をよくするということが結びついている トレヴァー・ワイ

ARTIST

昨年9月、4年ぶりに来日したトレヴァー・ワイ氏。東京と関西でマスタークラスが行なわれた。1986年に初版された「トレヴァー・ワイ フルート教本」は世界中のフルートプレイヤーに愛用され、これまで、トータル100万冊以上を売り上げたという。日本でもその人気は根強く、2011年に改訂新版となってからも、初心者から上級者まで数多くのプレイヤーがこの教本を使ってフルートを学んでいる。
また、60種の“笛”を駆使した一風変わったコンサート「カーニヴァルショー」を世界各地で公演。聴衆の耳と目を大いに楽しませたかと思うと、数十年越しのライフワークとしてWEB版「フルート百科事典」の編纂にも取り組むなど、その音楽活動は留まるところを知らない。<br>
今回のインタビューでは、その多彩なライフワークを中心とした活動について、話を伺った。また、この後の特集では引き続き、「フルート教本」との関連も深い“音色づくり”の極意を、ワイ氏自身が語ってくれているので、お楽しみに!

昨年9月、4年ぶりに来日したトレヴァー・ワイ氏。東京と関西でマスタークラスが行なわれた。1986年に初版された「トレヴァー・ワイ フルート教本」は世界中のフルートプレイヤーに愛用され、これまで、トータル100万冊以上を売り上げたという。日本でもその人気は根強く、2011年に改訂新版となってからも、初心者から上級者まで数多くのプレイヤーがこの教本を使ってフルートを学んでいる。
また、60種の“笛”を駆使した一風変わったコンサート「カーニヴァルショー」を世界各地で公演。聴衆の耳と目を大いに楽しませたかと思うと、数十年越しのライフワークとしてWEB版「フルート百科事典」の編纂にも取り組むなど、その音楽活動は留まるところを知らない。
今回のインタビューでは、その多彩なライフワークを中心とした活動について、話を伺った。また、この後の特集では引き続き、「フルート教本」との関連も深い“音色づくり”の極意を、ワイ氏自身が語ってくれているので、お楽しみに!
「トレヴァー・ワイ フルート教本」2011年改訂新版の訳者である笹井純氏が、通訳を務めた。
通訳:笹井 純/カバー写真:土居政則/取材協力:管楽器専門店ダク、株式会社グローバル

キスするのにもパスワード(?)

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ウェブサイト「フルート百科事典」は、とても内容が充実していますね。曲や作曲家にとどまらず、フルートに関するさまざまな情報が載っていて、フルートを学ぶ人にはとても有用だと思います。日本語版がないのが残念ですが……。30年かけて作られてきたそうですが、そのきっかけは何だったのですか?
ワイ
まだまだ作成途中なんですよ。モーツァルトの曲を演奏する生徒に「モーツァルトのフルート曲を全部挙げてごらん」と言うと、挙げられなかったりします。それを見ていて、こういうものが必要なのではないかと思ったのです。
まずは作曲家と作品から作業を始めました。この2年くらいかけて作曲家のエントリーを改良していますが、今のところアルファベットのGのところまでいきました。会員登録もパスワードもありませんから、手軽に使えて便利だと思います。昨今は何でもかんでもパスワード入力を求められて、面倒ですね。そのうち、キスするのにもパスワードが必要になるんじゃないでしょうか(笑)。
30年かけてここまで進められたのには、スタッフの協力も大きかったと思います。スタッフのメンバーは、フルートに携わっている学生などです。
トレヴァー・ワイ
「フルート百科事典」。トップページからすぐに、調べたい用語を検索できるようになっているhttp://www.fluteark.com

 

トレヴァー・ワイ
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百科事典を作るのに苦労した点は、どんなところですか?
ワイ
作り始めたころは、一つひとつ本を読んで調べないといけなかったので大変でした。今はインターネットで調査できるので、だいぶ効率が良くなりました。
私の書斎には、フルートの本はすべてそろえてあります。フルートの歴史に詳しい奏者のアンドラーシュ・アドリアンとか、管楽器の歴史に造詣が深いアンソニー・ベインズといった人々の著書には大変助けられました。それから、古い楽器の協会にも所属しています。アンティークフルートの店主とも仲良くしていて、そういった人たちがみんな、いわばブレーンですね。
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作り始めた30年前は、まだインターネットもなかった時代ですね。当初はこのようなかたちで公開する予定ではもちろんなかったのですよね?
ワイ
最初は、印刷するつもりでした。が、ABCの項目だけでもプリントアウトするとものすごい量だったのです。だから、これは不可能だということに気づきました。
30年前には、1950年で区切って、それ以前の人は入れるけれども、それ以降の人は入れないでおこうと思っていたのですが、フルートに関する情報を集めている人がいろいろアドバイスをくれて、彼が「この人は入れるべきだ」というリストを作ってくれました。そういった意見を取り入れたりするうちに、だんだん収録する人物も年代も、幅広くなってきました。当初のものからはだいぶ修正を加えていて、そんな事情もあったのでAからGまで改訂するのに2年かかりました。完成はまだまだ先ですが、インターネットの使い方もわかったし、どんどん作業は速くなっています。(次のページに続く)

・次のページの項目
・音程の悪い音は“間違った音”
・オーボエみたいな音を……
・Concert review

Profile
トレヴァー・ワイ
トレヴァー・ワイ
Trevor Wye
ジェフリー・ギルバートとマルセル・モイーズに学び、フリーランス奏者としてロンドン交響楽団、アカデミー室内管弦楽団などのオーケストラや、室内楽で長年活躍。英国王立北音楽大学、ギルドホール音楽演劇学校の教授を歴任。現在は英国ケント州に開設したThe Flute Studioにて後進を指導している。インターナショナルサマースクール、イギリス・フルート協会の創設者であり、ミュンヘン、神戸等数々の国際コンクールの審査員を務め、世界各国でリサイタルやマスタークラスを開く。日本を含め各国で翻訳出版されている全6巻の教本など、数多くの著作、楽譜の編曲・編纂によっても広く知られている。60種の「笛」を駆使した愉快なコンサート「カーニヴァルショー」も世界中で好評を博している。
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