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THE FLUTE 166号 Cover Story
指揮者と共に作曲家の世界観を実現させる 東京交響楽団フルートセクション
終戦翌年の1946年に設立された歴史ある オーケストラ、東京交響楽団(東響)。現在はミューザ川崎シンフォニーホールを拠点に、リハーサルから演奏会までを行なっている。フルートセクションは4人。12月に行なわれる定期演奏会では、首席奏者の甲藤さちさんがソリストを務める。 多忙なスケジュールの合間に、4人揃ってのインタビューをお願いした。
終戦翌年の1946年に設立された歴史ある オーケストラ、東京交響楽団(東響)。現在はミューザ川崎シンフォニーホールを拠点に、リハーサルから演奏会までを行なっている。フルートセクションは4人。12月に行なわれる定期演奏会では、首席奏者の甲藤さちさんがソリストを務める。 多忙なスケジュールの合間に、4人揃ってのインタビューをお願いした。
/写真:いしかわみちこ/取材協力:取材協力: 公益財団法人東京交響楽団、ミューザ川崎シンフォニーホール
いま思えば…… 入団のきっかけ
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皆さんがオーケストラのフルート奏者という仕事を選んだ理由は何ですか?
甲藤
音大卒業間近で、まあ、周りもどうやって食べて行こうかと悶々と過ごしているわけですが、先生がオーケストラ奏者だったり、友人がオーディションを受けていたり、という刺激もありましたので、自分の適性とか考えもせず、何でもトライしなくちゃ、と他のコンクール等と同じ感覚で挑戦している間に合格してしまいました。実際にオーケストラの中に入ってみると、これは大変なところに来てしまったとだんだん解ってきて……今もそう思っていますが(笑)。
相澤
僕は最初からオーケストラに入りたかったんです。中高で吹奏楽をやっていたので、もしオケがだめでも学校の先生になって吹奏楽部の指導をしたいな、と考えてましたね。それで生徒を全国大会に連れて行く、というのがもう一つの夢でした。「生徒たちと普門館に行きたいなあ」と。 甲藤 相澤さんは在学中に合格して入団したのよね。私はオーディションする側で、ここにいるお三方とも、選ばせていただいているんです。歳がバレるけど(笑)。
高野
うちは親が邦楽をやっていて、本来ならそれを継ぐ立場だったんだけど……なんだかあまりピンとこなくて。ピアノを習わされていたんだけどそれも嫌で。そんな時、学校に鑑賞教室でオーケストラが来て、「あ、フルートいいな」と思って始めたんです。その後音大に入って、卒業後は留学したいけれど家にそんな金はないし、どうしようか……といろいろ考えた時に、それまで経験してきた学生オケの楽しさがとても印象深かったこともあって、プロとしてやっていこうと思いました。
相澤
高野さんとは、オーディションを受けたのが一緒のときだったんだよね。
高野
そう、あの1次審査のとき自分では全然納得いかなくて……ヤケになって飲みに行って、すごい酔っ払って(笑)。それで結果が出てみたら、受かってた。
甲藤
高野さんのことは、秋山さん(現在、桂冠指揮者の秋山和慶氏)が推していたのよ。学生時代から優秀なのはご存じだったから。
濱崎
私はオーケストラの奏者になりたいという夢を持ったことはなくて、11歳から26歳までコンクール漬けの人生を送っていました。そんなある時、エキストラ奏者として呼んでいただいて、「“東響の”フルーティストになりたい」と思ったんです。ここのオーディションに受かってなかったら、オーケストラ奏者にはなっていなかったかも……。だから、希望する場所にこうして入れたことがすごく幸せです。
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“瞬間”に立ち会える楽しさ
偉大なる音楽監督、ジョナサン・ノット
柔軟性と意志と協調と……必要なのはバランス感覚
Profile
甲藤さち
Sachi Katto
Sachi Katto
東京藝術大学卒業。フルートを甲藤卓雄、林リリ子、峰岸壮一、吉田雅夫、金昌国の各氏に、室内楽を森正氏に師事。1982年ドップラーフルートコンクール第3位(1位なし)。1984年第53回日本音楽コンクール入選。1985年第2回日本フルート・コンヴェンション・コンクール第1位及び委嘱作品最優秀演奏者賞受賞。新星日本交響楽団を経て、1987年東京交響楽入団。1990年より同団首席フルート奏者として現在に至る。楽団内外のコンチェルト・ソリストをたびたび務める他、定期的なリサイタルを開催するなどソロ奏者としても高い評価を受けている。マジカル・サウンズ設立に携わる他、木管5重奏団レサン・コントール主宰。昭和音楽大学非常勤講師。パウエル・フルート・アカデミー講師。
相澤政宏
Masahiro Aizawa
Masahiro Aizawa
1987年、東京音楽大学器楽科フルート専攻に入学。89年、同大学3年在学中に東京交響楽団のオーディションに合格、入団。91年、第5回日本フルートコンヴェンションコンクール ソロ部門第3位入賞。現在、東京交響楽団首席フルート奏者。紀尾井ホール室内管弦楽団フルート奏者。フルートアンサンブル「ザ・フルートカルテット」メンバー。これまでにフルートを山元康生、故小泉剛、故齊藤賀雄、パウル・マイゼンの各氏に師事。東京音楽大学講師。日本フルート協会理事。アジア・フルート連盟理事。
高野成之
Shigeyuki Takano
Shigeyuki Takano
桐朋学園大学音楽学部演奏学科卒業、同校研究科修了。フルートを峰岸壮一、大友太郎、大森義和、藤田雅の諸氏に、室内楽を中川良平、森正、藤井一興、岩崎淑の諸氏に師事。第3回日本フルートコンヴェンションコンクール第2位、第61回日本音楽コンクール第3位入賞。現在、東京交響楽団フルート奏者のほか、横浜バロック室内合奏団のメンバーとしても活躍中。桐朋学園大学、東海大学フルート科非常勤講師、コリーマ州立大学(メキシコ)客員教授。パウエル・フルート・アカデミー、トート音楽院講師。
濱崎麻里子
Mariko Hamasaki
Mariko Hamasaki
東京藝術大学音楽学部附属高校、同学部を経て同大学大学院修了。学内にて安宅賞、アカンサス音楽賞、三菱地所賞。第6回神戸国際フルートコンクール奨励賞。第17回日本木管コンクール第1位、併せて兵庫県知事賞、朝日新聞社賞。第26回日本管打楽器コンクール第2位。第14回コンセール・マロニエ21木管部門第1位。第79回日本音楽コンクール第2位。第8回神戸国際フルートコンクール第6位。都村慶子、浅生典子、金昌国、高木綾子の各氏に師事。東京交響楽団フルート奏者。洗足学園音楽大学非常勤講師。
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