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THE FLUTE 170号 Cover Story
それぞれのスタイルが一つになり、超越した音楽を作り上げる
NHK交響楽団の首席指揮者を務めるパーヴォ・ヤルヴィ率いるエストニア・フェスティバル管弦楽団が、初来日公演を行なった。6都市を回るツアーの最終日、リヨン国立歌劇場管弦楽団の首席奏者で、リヨン国立高等音楽院の教授も務めるボディモンさんに、東京公演の楽屋で話を伺った。
長い連休が始まった4月末。NHK交響楽団の首席指揮者を務めるパーヴォ・ヤルヴィ率いるエストニア・フェスティバル管弦楽団が、初来日公演を行なった。ヤルヴィ氏の故郷エストニアで2011年に立ち上げられた楽団は、エストニアの才能ある若手と、欧州各地の一流オーケストラで活躍している奏者を集めた“ドリームチーム”。ヴァイオリニストの五嶋みどりさんをソリストに迎え、6都市を回るツアーの最終日、リヨン国立歌劇場管弦楽団の首席奏者で、リヨン国立高等音楽院の教授も務めるボディモンさんに、東京公演の楽屋で話を伺った。
聞き手:久保 順/写真:いしかわみちこ/取材協力:株式会社ジャパン・アーツ、サントリーホール
世界の精鋭が集まる舞台
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エストニア・フェスティバル管弦楽団に参加することになったのは、どんな経緯からですか?
ボディモン(以下B)
私が参加し始めたのは2年前からです。楽団自体は2011年に創設されたのですが、音楽監督のパーヴォ・ヤルヴィが友人のエマニュエル・パユに首席フルート奏者について相談し、彼が私を推薦してくれました。
エストニア・フェスティバル管弦楽団は名前にあるように、どこかで定期的に活動するという団体ではなく、エストニアの大使として世界各地のフェスティバル(音楽祭)等へ向かいます。毎年、夏はエストニアのパルヌという美しい避暑地で音楽祭があり、レジデンス・オーケストラとしてそこで演奏します。他にはロンドンや今回のように東京、また北欧でのツアーを行なったこともあります。
エストニア・フェスティバル管弦楽団は名前にあるように、どこかで定期的に活動するという団体ではなく、エストニアの大使として世界各地のフェスティバル(音楽祭)等へ向かいます。毎年、夏はエストニアのパルヌという美しい避暑地で音楽祭があり、レジデンス・オーケストラとしてそこで演奏します。他にはロンドンや今回のように東京、また北欧でのツアーを行なったこともあります。
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エストニア・フェスティバル管弦楽団は、世界有数のオーケストラの首席奏者とエストニアで活動する若い音楽家たちが集まってできたそうですが、メンバーのあなたから見てどんなオーケストラですか?
B
いちばん特徴的なのは、パリ管弦楽団やフランクフルト放送交響楽団、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団など、ヨーロッパの一流のオーケストラから選び抜かれてきた奏者たちが持つそれぞれの演奏スタイルの違いがここで一つになり、超越した音楽を作り上げることです。今までいくつもの有名なオーケストラで演奏してきましたが、ヨーロッパにあるどのオーケストラよりも、心から素晴らしいと私は思っています。第一ヴァイオリンと第二ヴァイオリンの大半はエストニアで活躍する若手演奏家たちが務めていて、首席奏者たちは世界中から集まったアーティストたちが占めているので、本当の意味で国際的なオーケストラと言えるでしょう。
他のオーケストラと違うのは、全体的に年齢が若く生き生きとしていて、常設されている楽団ではないからこそ毎回最高の音楽を作り上げようとする情熱が格別に感じられ、その熱をヤルヴィがさらに芸術的に昇華させていく。彼は本当にすごい音楽監督だと思います。ヤルヴィ自身、若々しい情熱でできているんでしょうね。
他のオーケストラと違うのは、全体的に年齢が若く生き生きとしていて、常設されている楽団ではないからこそ毎回最高の音楽を作り上げようとする情熱が格別に感じられ、その熱をヤルヴィがさらに芸術的に昇華させていく。彼は本当にすごい音楽監督だと思います。ヤルヴィ自身、若々しい情熱でできているんでしょうね。
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ヤルヴィさんの妹のマーリカさんがフルートセクションのメンバーですね。その他フルートのメンバーにはどんな方々がいらっしゃいますか?
B
はい。第二フルート奏者を務めるマーリカはヤルヴィと同じくエストニア人ですが、アメリカのピッツバーグでジュリアス・ベーカー氏に師事していました。ヤルヴィ家は代々の音楽家系で、今回のオーケストラにはパーヴォの従妹のミーナもバイオリン奏者で演奏しています。
第三フルート、ピッコロ奏者はアメリカのイエール大学でランソム・ウィルソンに師事する若手演奏家の一人で、エストニア人の大学院生マリア・ルイスクです。フルートセクションは全員とてもポジティブで仲が良いんです。良い環境で演奏ができていて、オーケストラに新鮮な風を吹き込んでいると思いますよ。
第三フルート、ピッコロ奏者はアメリカのイエール大学でランソム・ウィルソンに師事する若手演奏家の一人で、エストニア人の大学院生マリア・ルイスクです。フルートセクションは全員とてもポジティブで仲が良いんです。良い環境で演奏ができていて、オーケストラに新鮮な風を吹き込んでいると思いますよ。
次のページの項目
・人と芸術への寛大さと愛情と…
・ファミリーのような信頼関係
Profile
ジュリアン・ボディモン
Julien Beaudiment
Julien Beaudiment
1978年生まれ。ロンドンのギルドホール・スクールにてポール・エドモンド・ディビス、パリ国立高等音楽院にて、ソフィー・シェリエ、ヴァンサン・リュカ、室内楽をミッシェル・モラゲスに師事。在学中、最年少の22歳でリヨン国立歌劇場管弦楽団の首席フルーティストに就任。2005年にBBCウェールズ国立管弦楽団首席奏者に任命され、リヨン国立歌劇場管弦楽団に戻る2006年まで在籍。イギリスのオーケストラとして初のフランス人首席フルーティスト。ソリストとして、イヴァン・フィッシャー、大野和士、エトヴェッシュ・ペーテル、コリン・デイビス、エマニュエル・クリヴィヌ、クリストフ・エッシェンバッハ、ウイリアム・クリスティー指揮のもとロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、スコティッシュ・チェンバー・オーケストラ、ハレ管弦楽団、パリ管弦楽団、パリ歌劇場管弦楽団、トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団、ローザンヌ室内管弦楽団等、多くのオーケストラと共演。シャトレ座(パリ)、東京文化村ホール(東京)、ラインガウ・ミュージック・フェスティバル(ドイツ)、モストリー・モーツァルト・フェスティバル(NY)等世界各国でコンサートに出演。バルセロナ・インターナショナル・ソナタ・コンクール優勝。マレイ・ペライア、ジョシュア・ベルと共に、セント・マーティン・アカデミーに招かれるなど多くの著名演奏家と室内楽のコンサートにも多数出演。
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