一度立ち止まって、ゆっくり考えてみるのもいい─上野星矢
「いま自分が動かずにじっとしていては、フルート界の未来がなくなってしまうと思うのです」─コロナ騒動で音楽公演が消えてなくなった3月。そんな中で上野は、決断してからたった1週間でオンラインのフルートオーディションを立ち上げた。インタビューは5月半ば、スカイプの画面越しでの会話となった。
「いま自分が動かずにじっとしていては、フルート界の未来がなくなってしまうと思うのです」─上野から送られてきたメッセージには、そう書いてあった。コロナ騒動で“3密”という言葉が生まれ、またたく間にすべての音楽公演が消えてなくなったこの3月。オンラインのフルートオーディションを立ち上げること、コンクールなども中止や延期になる中でフルーティストたちのモチベーションになることを模索し、各方面への協力を依頼している……そんな内容が率直に綴られ、「拙い文章で長文を申し訳ありません」と結ばれていた。
実際、審査員となる奏者たちからの協力をとりつけて様々な賞と賞品を準備し、応募できるしくみをオンライン上に作り、告知サイトを公開するという作業を、決断してから1週間でなしとげたのだという。
今号の巻頭インタビューは、彼にお願いしよう。そう決めるまでに、時間はかからなかった。実現したインタビューは、長引くコロナ禍のもと緊急事態宣言真っ只中の5月半ば、スカイプの画面越しでの会話となった。
写真:Shohei Sato
ネガティブになっている時間はない
「ピンチはチャンス」なんてよく言われますが、それと似ているかもしれません。この状況の中で、本当はできたはずだったのに今までやってこなかったことが浮き彫りになった面があると思います。もちろん、大変なことのほうが多いのは確かで、僕自身、予定していた海外公演―台湾、韓国、フランス、ルーマニア、スイス、フィンランドでのコンサートが全滅しましたから。
次のページの項目
・人脈から生まれたコラボレーション
・“ノーライフ、ノーミュージック”
Seiya Ueno
W.F. バッハ: 2本のフルートのための二重奏曲集
[曲目]二重奏曲 第1番 ホ短調 FK.54、二重奏曲 第2番 変ホ長調 FK.55、二重奏曲 第3番 変ホ長調 FK.56、二重奏曲 第4番 ヘ長調 FK.57、二重奏曲 第5番 ヘ短調 FK.58、二重奏曲 第6番 ト長調 FK.59
[演奏]上野星矢、アレキシ・ロマン(Fl)
[録音]2019年2月 栃木 岩舟コスモス・ホール
[価格]¥2,800(税別)
上野星矢