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THE FLUTE vol.181 Cover Story
素晴らしきオーケストラの日々
コロナ禍の中で音楽業界全体が活動自粛による窮乏状態に陥る中、組織的に打撃を受けたのがオーケストラだ。そんな窮状を率直に訴え支援を呼びかけたのが日本フィルハーモニー交響楽団。そこでフルートセクションの二人にインタビューを敢行。シリアスな話題ながらも、和気藹々とした雰囲気で場を明るくしてくれた。
2020年、にわかに起こったコロナ禍の中で、音楽家や音楽業界全体が活動自粛による窮乏状態に陥った。中でも、組織的に打撃を受けたのがオーケストラだ。音楽以外のメディアでも報道されたことで、オーケストラの受難とその背景にある事情を初めて知った人も多いのではないだろうか。詳細は特別企画「オーケストラの“いま”」に譲るが、これまでにない財政難の中、その窮状を率直に訴え支援を呼びかけてきたのが日本フィルハーモニー交響楽団だ。
今回、そんな“日本フィル”フルートセクションの二人にインタビュー。楽団員として感じてきたこととは? そして、これまでとこれからのオーケストラを、どんな思いで見つめているのか─。少々シリアスな話題ながら、同年代で同時期入団だという二人の和気藹々とした雰囲気は、場を明るく盛り上げてくれた。
写真:森泉 匡 取材協力:日本フィルハーモニ交響楽団、杉並公会堂
楽器を出さない生活
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昨年は公演の中止が相次ぎましたが、楽団員としての立場でいちばん苦しかったのはどんなことですか?
難波
私は、ずっと家にいる状態でまったく演奏しないのに給料をもらうことが、辛いというか心苦しかったですね。世の中全体が大変な状況になっている中、公演はすべて中止で何も動けない、けれど給料はもらっている……という状態に、とてももやもやしていました。
真鍋
いつまでこの状態が続くのか、今後どうなるのかと、自分で考えてどうなるものでもないことを考えてしまいましたね。でもそうしていても仕方がないので、今までできなかったエチュードを引っぱり出してきて、練習したりしていました。
それでもまだ時間が余ってしまって、これまで経験したことがなかったそんな状態が辛かったです。時間を持て余すというのとも違う、時間ができたといっても、それを楽しむような心の余裕もない。どこに気持ちを持っていけばいいのかわからない、不安な日々でした。できることはやるけれど、先につながるのかどうかわからないし……といった感じで、前向きになることがなかなかできませんでした。
それでもまだ時間が余ってしまって、これまで経験したことがなかったそんな状態が辛かったです。時間を持て余すというのとも違う、時間ができたといっても、それを楽しむような心の余裕もない。どこに気持ちを持っていけばいいのかわからない、不安な日々でした。できることはやるけれど、先につながるのかどうかわからないし……といった感じで、前向きになることがなかなかできませんでした。
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毎日をどんなふうに過ごしていらっしゃいましたか?
難波
自分にできることはとにかくコロナにかからないこと、と腹を括って、必要最低限の用事以外は家に籠もっていました。ずっとできなかった家の片付けとか、あとは子どもが中学受験を控えていたので、勉強の手伝いをしたりもしていました。エチュードをさらっていた真鍋さんは偉いなあ、という感じなのですが(笑)、私は楽器を出さない日が結構ありました。この機会に、あえて楽器から離れる時間を作ってみるのもいいかもしれない、と思いまして。結果的に、楽器を出さない生活をわりと楽しんだかもしれません。
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きっと、今までに経験したことのない日々だったのでしょうね。
難波
そうですね。楽器を触らないことによって、新たな発見があったりもしました。自分の吹き方を見直して、レッスンで生徒にNGだと言っていることを実は自分がやっていたことに気がついたり……(笑)、いろいろ見つめ直す機会になりました。
真鍋
私もだんだんとあきらめてというか(笑)、今までにやらなかったことを楽しめるようになりました。スニーカーを買って散歩をしたり、料理を作ってみたりと、音楽から離れてゆっくりすることもありました。
次のページの項目
・すごいことをやっていたんだ……
・10年の節目に
・素晴らしきオーケストラ
Profile
真鍋 恵子
Keiko Manabe
Keiko Manabe
香川県出身。東京芸術大学卒業。同大学大学院修了。 フルートを金昌国、パウル・マイゼンの両氏に師事、室内楽を小林道夫、 守山光三、四戸世紀の各氏に師事。音楽学部在学中に東京文化会館オーディションに合格し、室内楽ENSEMBLE BACHIANAとして東京文化会館でリサイタルを行う。2000年第11回日本木管コンクール第2位。2001年第6回びわ湖国際フルートコンクール第1位。2003年第20回日本管打楽器コンクール第1位。東京交響楽団とモーツァルトフルート協奏曲第一番を共演。2007年日本フィルに入団。2009年より首席奏者となる。洗足学園音楽大学では講師として後進の指導にあたる。日本フィルハーモニー交響楽団首席奏者。
Profile
難波 薫
Kaoru Namba
Kaoru Namba
3歳よりピアノを、11歳よりフルートを始める。 桐朋学園大学卒業、同大学研究科修了。 日本フルートコンベンションコンクール第2位、管打楽器コンクール第2位、日本木管コンクール第1位など、数々のコンクールで入賞後、ソリストとして新日本フィルハーモニー交響楽団等、国内のオーケストラと共演を重ねる。2006年CD「フルート・レボリューション」を発表。フルートを三宅貴子、峰岸壮一、白尾彰、工藤重典の各氏に、室内楽を藤井一興、鈴木良昭の各氏に師事。現在、ソロや室内楽、オーケストラなど幅広く活動。 日本フィルハーモニー交響楽団楽員、紀尾井ホール室内管弦楽団メンバー。桐朋学園芸術短期大学非常勤講師。
日本フィルハーモニー交響楽団 公演情報
今後の状況により、出演者・曲目が変更となる場合があります。日本フィルHPでご確認ください。
第392回名曲コンサート
[公演日時]2021/5/23(日) 14:00開演
[会場]サントリーホール
[出演]ピエタリ・インキネン(指揮)、神尾真由子(Vl)
[曲目]ワーグナー:ジークフリート牧歌、ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.77、ベートーヴェン:交響曲第5番《運命》ハ短調 op.67
[詳細]https://japanphil.or.jp/concert/24211
[会場]サントリーホール
[出演]ピエタリ・インキネン(指揮)、神尾真由子(Vl)
[曲目]ワーグナー:ジークフリート牧歌、ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.77、ベートーヴェン:交響曲第5番《運命》ハ短調 op.67
[詳細]https://japanphil.or.jp/concert/24211
第730回東京定期演奏会<春季>
[公演日時]2021/5/28(金)19:00開演 、2021/5/29(金)14:00開演
[会場]サントリーホール
[出演]ピエタリ・インキネン(指揮)
[曲目]ドヴォルジャーク:管楽セレナーデ ニ短調 op.44、バルトーク:ディヴェルティメント、他
[詳細]https://japanphil.or.jp/concert/24096
[会場]サントリーホール
[出演]ピエタリ・インキネン(指揮)
[曲目]ドヴォルジャーク:管楽セレナーデ ニ短調 op.44、バルトーク:ディヴェルティメント、他
[詳細]https://japanphil.or.jp/concert/24096