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クリスティーナ・ヴァツロヴァ│THE FLUTE vol.191 Cover Story
自分がよくなると信じ、道を見つけていくこと
2022年8月まで京都市立芸術大学の客員研究員として来日していたクリスティーナ・ヴァツロヴァ博士。ヴァツロヴァ博士は、京都市立芸術大学の副学長を務めている大嶋義実氏の演奏を聴いて、日本に憧れを抱いていたという。聡明でかつ可愛らしさを併せ持つヴァツロヴァ博士は、現在母国チェコに戻り、ヤナーチェク音楽アカデミー助教授(Assistant Professor)として後進の指導にあたっている。今回は群馬県高崎市での大嶋氏とのコンサートの翌日に京都に戻る途中で取材を受けてくれた。
インタビュア:大嶋義実 翻訳:清水理恵 写真:橋本タカキ
フルートを宝物のように抱えて家に持ち帰る
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さっそくですが、7月2日に行なわれた大嶋義実さんとのコンサートの感想を聞かせてください。
クリスティーナ・ヴァツロヴァ
(以下K)
(以下K)
大嶋先生とのコンサートはとても楽しく素晴らしい経験でした。以前お会いしたのをきっかけに今回このような機会が得られて、本当に夢のようです。実現できたことが信じられません! 高崎のホールの響きも良かったですね。
大嶋義実
(以下O)
(以下O)
高崎芸術劇場 音楽ホールはまだ新しいホールなんです。
K
建設されてから2、3年でしょうか。響きもいいし、建物も素敵です。このような美しいホールで、大嶋先生やピアニストの水野雅子さんと演奏できる喜びを感じました。
O
室内楽に適したホールとしては、日本でも5本の指に入るほど響きの良いホールだと思います。
K
そうなんですね。また曲の合間などに作曲家や曲について、大嶋先生が語ってくれたので、お客さんがとても気持ちよくコンサートを楽しんでいるのが伝わってきました。
O
お客さんは、みんな私の話で笑っていましたね。
K
そうそう! 嬉しそうでした。
O
僕がジョークを飛ばしたからね。
K
ええ、私たちもお客様も、とってもいい雰囲気で心地よかったわ。
―
フルートを始めたきっかけを教えてください。
K
6歳のときピアノを弾きたいと思いましたが、両親が「まずはリコーダーから始めてみたら? 本当に音楽が好きかどうかそれで試してみましょう」と言ったので、7歳からリコーダーを習いました。当時の先生はトランペットが専門でした。どの町にも6歳から18歳まで通えるミュージック・スクールがあり、月謝が高くないのでたくさんの人たちが学んでいて、バレエや絵画も習えました。
O
トランペットの先生がリコーダーを教えていたのですか?
K
そうなんです。オーボエやクラリネットの先生もリコーダーを教えています。誰もが最初はリコーダーを習います。特に小さい子には親しみやすいので、音の出し方や呼吸法を習得できます。最近は違うかもしれませんが、よりシンプルに演奏できる楽器から習い始めるのが良いと思っています。そしてリコーダーに慣れた後に、フルートなど他の楽器に取り組むと、いきなり始めるより入りやすいでしょう。
O
リコーダーからフルートに変えたのはいつですか?
K
10歳です。夏休みの2ヶ月前でした。トランペットの先生が「クリスティーナ、ここにフルートがあるけど、吹いてみたい?」と言ったのです。それは中国製のH足部管フルートで綺麗な楽器でした。フルートを実際に見たのはこのときが初めてでした。「わー、ぜひ吹いてみたい!」と答えました。私はその楽器を宝物のように抱えて家に持ち帰り、両親に見せました。私の父は、趣味でトランペットをやっていましたので、フルートを見て「これどうやって組み立てて、どうやって音を出すんだろうね」などと、二人で試行錯誤したのも楽しい思い出です。そして私はフルートをやり始めました。
次ページにインタビュー続く
・ヴァーツラフ・クント教授に師事
・日本の学生は先生に対してより従順
Profile
クリスティーナ・ヴァツロヴァ博士
Dr. Kristina Vaculova
Dr. Kristina Vaculova
ブルノ・ヤナーチェク音楽アカデミーにおいてヴァーツラフ・クント教授に師事。同校修士課程修了後博士課程に在籍。2015年論文「20世紀におけるフルート奏法の発展と現代トレンドへの適用」において博士号取得。在学中ブダペスト・フランツ・リスト音楽院にても研鑽を積む。2021年までブルノ・フィルハーモニー管弦楽団フルート奏者を務め、現在ヤナーチェク音楽アカデミー助教授(Assistant Professor)として後進の指導にあたっている。フルート奏法のさらなる発展研究のため2022年4月より8月まで京都市立芸術大学客員研究員を務める。2001年コンチェルティーノ・プラガ第1位、2009年フリードリヒ・クーラウコンクールソロ部門2位、2011年同コンクールトリオ部門1位等、受賞歴も数多い。