フルート記事 セッションはコワくない! 鈴木和美
  フルート記事 セッションはコワくない! 鈴木和美
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153号特集「フルートでGroove!」オンライン特別版

セッションはコワくない! 鈴木和美

ARTIST

本誌153号の特集「フルートでGroove!」に“セッションはコワくない!”で登場した鈴木和美さん。セッションイベントを毎月開催し、「初参加の人大歓迎!たくさんの人に参加してほしいです」と話す。セッションが“コワくなくなる”、鈴木さんからのメッセージ。

本誌153号の特集「フルートでGroove!」。その中に、“セッションはコワくない!”というタイトルで登場していただいたのが、フルーティスト・鈴木和美さんです。鈴木さんは毎月1回、フルートでグルーヴしたい人たちが集まるセッションイベントを開催しています。本誌では、セッションはどんなふうに行なわれている? どんな人たちが集まってくる? ……などを中心に、その内容を紹介していただきました。
もっともっといろんな人にセッションを知ってもらい、100人のフルーティストに来てもらうのが目標!という鈴木さん。フルートで自由にグルーヴすることについて、熱く語ってくれました。ここでは、本誌に収まりきらなかった鈴木さんからのメッセージを、インタビュー形式で紹介します。

 

鈴木さんが、セッションイベントを開催しようと思ったのはなぜですか?

鈴木:私自身が初めて勇気を持って行ったセッションがすごく内輪な感じで、悲しい気持ちで帰ってきたのを今でも覚えています。セッションできるようになりたいから行ったのに、“できない人はお断り”みたいな空気を感じて、行くのが怖くなりました。
だから、初めての人でも楽しくやれるセッションの場をつくりたいってすごく思ったんですよ。私がメンバーになっているニューアクションというバンドが結構セッション的な要素を持っていたので、このバンドがホストになってセッションイベントをやれたらいいなと思ってお店(高円寺にあるライブができるカフェ「グリーンアップル」)に相談しました。
でも一番の理由はやっぱり、「自由って楽しいんだよ、バンドで吹くのって最高なんだよ!」っていうことを伝えたいな、と思ったことですね。

セッションはコワくない!
セッションはコワくない!

参加してみたいけれど、クラシックしかやったことないし、どう吹けばいいのか全然わからない……という人でもセッションに参加できますか?また、そういう人へのアドバイスをお願いします。

もちろん誰でも参加できるし来てほしいです!セッションに行くのって本当に勇気がいります。
私もそうだったので、すごく気持ちがわかります。クラシックしかやったことない人でも音は出せるから、それでもう大丈夫!あとは私がこの音を使えばいいよとか、このスケール使えるよ……ということをアドバイスできるので、ひとつの音を伸ばしてみるだけでもセッションになるんです!初参加の方のセッションの時には私も一緒に横で吹いて、それをなんとなくマネしてもらうのもOKです。
最初はみんな“できないできない!恥ずかしい!”ってなるんですけど(笑)、最後には「楽しかったー!」って言いながら帰っていきます。それがほんとに嬉しいです!

アドリブが吹けるようになるコツやよい練習法はありますか?

とにかく勇気を持って音を出す(笑)! あとはその曲にのれるかっていうのも大事です!
だいたいみんな音大とか部活とかでスケール練習は一生懸命やってきたので、「この音の中でこのスケールを使ってみて」と言うとできるんですけど、でもリズムにのれてないからカッコよくない。たとえば、ひとつのラの音だけでも“ンタンタ”っていうリズムにのれて吹けていれば、それだけでかっこいいアドリブソロになるんです。
だから、のれない場合は、踊ることがおすすめです(笑)。私もほんとにリズムが苦手で……でも踊るのが好きになってから、すごくリズム感が良くなりました。
クラシックとそれ以外のジャンルの一番の違いって、リズムだと思います。だからまず、難しいことをやろうとする前に、リズムにのって踊れるかが大事ですね。あとはひたすら“ンタンタ”のリズムで裏に音入れて吹き続けられるようにすると、リズムにのれるようになると思います。
リズムにのれたら、どんな音を吹いてもカッコよくなります。ジャズなんかだともっと難しい練習が必要だと思いますが、私のやってる音楽だと、とにかく大事なのはノリですね!
たとえばラソミっていう音3つだけでも、いろんなリズムにして吹いてみて(ラソミー、ラーソミ、ラソッミー、ラッソミーとか)、フレーズのバラエティを増やすといいと思います。
あとはひたすら好きなフルーティストのソロをコピーする!フルーティストじゃなくてもいいです。
私はロックの中でカッコいいソロが吹きたかったので、ギタリストのソロをコピーしてみたりもしました。コピーすることで、自分の中になかったフレーズがどんどん入ってきます。

鈴木さんご自身が、クラシック以外の音楽をフルートで演奏することに興味を持ったきっかけは何でしたか?

バンドをやりたい!というのはずっとありました。JUDY AND MARYのYUKIちゃんがすごく好きで、あんなふうに真ん中でイエーイってやりたいと思ってて(笑)。
短大を卒業してから何をしたらいいかわからなくて、そんな時に友達からフルートを探してるバンドがあると言われて。それが私が最初に参加した「内核の波」というバンドで、でも初めてライブに行った時はライブハウスが暗くて、音も爆音でうるさくて、「怖い。早く帰りたい」と思いました(笑)。
一応そのあとリハーサルに参加してみましたが、メンバーがギターをワンコードでずっと弾いているわけですよ。「この中で自由に吹いてみて」って言われたんですけど、私本当に何もできなくて。「楽譜ありませんか?」って聞いたら、「ロックに楽譜なんてねぇよ!」って言われました(笑)。
そこが私の“自由への道”のはじまりです。でもその時は本当に何も音が出せなかった。自由って何!?っていうのがわからなかったのもあるし、すごく怖かったのもあるし、まず音を出す勇気がなかったんですね。
その時は、10年以上フルート吹いてきてるし音大も出たのに、一音も出せなかったことがほんとにほんとに悔しくて(笑)。あの時が人生で一番悔しかった。だからこそ「このバンドでやりたい」と言いました。悔しくて何もできないまま終わりたくなかったので。
でも今思えば逆に、メンバーは何もできない私をよく辞めさせずに一緒にやってくれたなと(笑)。このバンドのみんながいなかったら今の私はいないし、育ててもらいました。「魂込めて練習しろ」というメールとともに練習課題が送られてきたり(笑)。

セッションはコワくない!
セッションはコワくない!

その後はどんな活動を?

海外の大きなフェスに出たり、CDもリリースして日本でも海外でもたくさんの方に聴いてもらえたり、すごくいい経験をしました。
このバンドの1stアルバムをリリースする時に、レーベルの社長から「FOCUSというフルートがいるバンドがいるから、そのバンドの曲を一曲カバーして入れよう」と言われて、その時に初めてFOCUSというバンドを聴いたんですが、そのフルートが衝撃過ぎて! こんなフルートがあるのか!と。そこからロックの中にフルートがいるバンドのCDを聴きまくりました。
FOCUSのほか、イギリスのJethro Tullなどもフルートがいるロックバンドで有名です。Jethro Tullのイアン・アンダーソンはロックに初めてフルートという楽器を取り入れた人。FOCUSのタイス・ヴァン・レアは、バッハの音楽なども好きな人で、FOCUSの曲もクラシカルなサウンドで美しいメロディが多いので、クラシックの方も聴きやすいと思います。ぜひ聴いてみてください!

フルートを始めた最初はクラシック音楽を勉強されたと思いますが、そこからロックやジャズについて、どのように学びましたか?

クラシック一筋からロックバンドに入ったので、最初はバンドの中で自由にアドリブを取れるようになるのがほんとに大変でした。最初はそのバンドに私の前にいたフルートの方の録音を聴いてコピーしてそれを吹いたり、あとはメンバーに書き譜を作ってもらったり……。
だいたいソロはワンコードなんですが、使えるスケールと音などバンドのメンバーからヒントをもらって、だんだん自分で作れるようになりました。それが今のセッションで、初参加の人に教えてあげられることとつながります。
あとは自分の好きなフルーティストのCDを聴いてソロなどをコピーして、楽譜に全部書き出したりしました。耳コピだけより楽譜に書き出すと、こんな音を使ってるんだ!という発見がしやすくなります。
ジャズはロックバンドをしばらくやってから、自分のソロにバラエティがないなと思った時に新たな要素を入れたくて、ジャズを習い始めました。私は激しい音のほうが好きなのと、ジャズは難しそうに思えて、それまでは聴いてきませんでした。でも、私が習った小島のり子師匠は私の中のジャズのイメージを変えてくれて、レッスンでも理論からではなく、そのコードの中でカッコいいフレーズを吹く(師匠が吹いたのをマネして吹く)というのをまずやりました。そしてそのあとにそのフレーズがどういうスケールとか音使いをしてできているかというのを書き出してくれて、あとから理論をつける……という教え方でした。あぁ、こうだからカッコいいのか、とか、いい感じになるのか、ということがすごく納得できました。
今でもジャズは苦手ですが(笑)、でもロックと同じくらい好きです!

インフォメーション

ニューアクションのプレイナイト7
2016年8月25日(木)  ※この後も毎月1回開催
会場:高円寺グリーンアップル
対象:誰でも参加できます!(楽器貸出もあり)
参加費:¥1,000(別途ドリンク代) ※観覧のみは¥500(別途ドリンク代)
詳細は、https://twitter.com/newaction_jp


ニューアクションの「プレイナイト7」は、こちらで開催中!

喫茶・軽食 グリーンアップル
アクセス:JR中央線・総武線 高円寺駅南口徒歩3分
〒166-0003 東京都杉並区高円寺南4-9-6 第三矢島ビル2F
TEL: 03-5305-8086
http://www.greenapple.gr.jp/
 

鈴木和美 Kazumi SUZUKI
昭和音楽大学短期大学部音楽学科を卒業。フルートを穂苅由美子、増村修次、各氏に師事。ジャズを小島のり子氏と、オランダでタイス・ヴァン・レア(FOCUS)に師事。現在はバンドを中心に活動中。クラシックというジャンル以外に、ロック、ポップス、歌謡曲、ジャズ等、幅広いジャンルで活動してきた経験を活かし、メジャーからインディーズまで数々のレコーディングやライブに参加。2007年、ロックバンド「内核の波」で世界最大のプログレフェス・メキシコ Baja Prog 2007、アメリカ Progday 2007に出演。2009年、音楽と絵とおはなしを融合させたフルートとアコーディオンのユニット「カナリヤ」を結成。病院や老人ホーム、石巻の保育園などでも演奏活動を行なう。2014年、サイケロックインストバンド、ニューアクションを結成。2016年、プログレッシブロックバンド「キクラテメンシス」に加入。


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