フルート記事 ケルステン・マッコール インタビュー
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映画「ロイヤル・コンセルトヘボウ オーケストラがやって来る」

ケルステン・マッコール インタビュー

ARTIST

2016年1月より公開の映画「ロイヤル・コンセルトヘボウ オーケストラがやって来る」。2013年に行なわれた、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団創立125周年を記念するワールドツアーをめぐるドキュメンタリーだ。THE FLUTE148号本誌に掲載した、木村奈保子さんによる首席奏者・ケルステン・マッコール氏へのインタビューにはまだまだ続きが……ここで、一挙にご紹介します!

2016年1月より公開の映画「ロイヤル・コンセルトヘボウ オーケストラがやって来る」。2013年に行なわれた、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団創立125周年を記念するワールドツアーをめぐるドキュメンタリーだ。THE FLUTE148号本誌に掲載した、木村奈保子さんによる首席奏者・ケルステン・マッコール氏へのインタビューにはまだまだ続きが——ここで、一挙にご紹介します!

通訳:久野理恵子/協力:KAJIMOTO

 

ケルステン・マッコール
木村
楽団では、フルートセクションにエミリー・バイノンさん、ジェリー・ムーランさん、ジョセフィーヌ・オレックさん、と女性が多いのですね。人間関係はどうですか?
マッコール(以下M)
エミリーと私が首席を分けているのですが、首席というのは単純に高い音域、ソロパートがあるときはソロを吹くだけで、だれがリーダーとか、男か女かといったことはまったく問題ではありません。我々の楽団は競争関係があまりないのです。すごく仲が良くて、いつも一緒に食事をしたり、ツアーでは一緒に過ごしたりしているので、ほとんど家族みたいです。ほかの世界的なオーケストラでは、必ずしもそうじゃないとところもあるようですが……。
木村
自分のオーケストラ以外のアーティストとは、友だちになったりしますか?
M
そうですね、学生時代からの友だちもいますし。うちのメンバーは指揮者やソリストたちともとてもフレンドリーで、彼らと良好な関係を築いている人も多いですよ。
木村
そういう空気は、聴衆にも伝わるものでしょうか?
M
他のオーケストラを聴くと、「もっとフレンドリーにできればいいのに」と思うことはありますね。自分の楽団に関しては客観的に聴くのが難しいですが、外に出ると、やはりそういうことが音色に影響しているんだなあ、と思います。
木村
私は俳優さんに知り合いが多いのですが、俳優だと人間的に問題があっても演技を見た瞬間、好きになってしまうことがよくあります。音楽家の場合はどうですか?
M
最高レベルの音楽家は、俳優と同じような部分が絶対にあると思います。よく若い子を指導するときに、自分の好みに合わない曲だから演奏したくないと言ったら、もしエージェントがこの作品でコンサートをやるといったら、コンサートなしになるのとありになるのはどっちがいい?と質問するんです。そうすると、たとえ好きじゃない作品でも、好きであるかのように演奏することを求められる。そういう部分では演じるというのは音楽家としてもないわけではありません。
私自身が選曲するときは演奏したい曲しか選びませんが、オーケストラのメンバーとしては、本当にそのへんは柔軟にやらないといけません。人間に関わるキャラを根本的に変えるという意味では、役者さんのほうが音楽家以上に変えないといけない部分が大きいと思います。ただ演奏家としては、自分のあるがままの姿を見せられるというのは、最高の至福ですね。
木村
フルートで演奏する場合に一番好きな曲はなんですか?
M
一曲に絞るのは難しいですが……やっぱりバッハのソナタが好きですね。『無伴奏フルートのためのパルティータ』とか。古い音楽ですけれど、熱い思いを感じます。最近レコーディングしました。
木村
生徒を教えるときに、難しいと感じることは何でしょうか?
M
自己中心にならないように、いつも気をつけています。つまり“自分の生徒は自分の作品”だなどとは、間違っても思わないようにということです。“こうすべき”という考え方を押しつけず、個々の生徒に合わせて考えてあげないといけません。生徒がコンクールを受けて結果が芳しくなかったとしても、一緒に落ち込むのは違うと思いますし、逆に成功しても「それは俺の生徒だ!」と勘違いをしない。そのへんの距離感がとても大事です。
自分の好みに合わない作品でも、演奏に賛同しなくても、客観的に考えて教えないといけない。ただ、私もまだ未熟なところがありますから、つい“こうやるべきだ”と言ってしまうこともあります。これが大変なところですね。
ロイヤル・コンセルトヘボウ オーケストラがやって来る

INFORMATION

映画「ロイヤル・コンセルトヘボウ オーケストラがやって来る」

ウィーン・フィル、ベルリン・フィルと並ぶ世界三大オーケストラである、オランダのロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(RCO)。2013年、コンセルトヘボウが創立125周年を記念して、1年で50公演を行なう世界一周のワールドツアーへと旅立った! アルゼンチンから南アフリカ、ロシアへと、気さくな素顔をのぞかせながら、王立御用達(ロイヤル)オーケストラが世界をめぐる。その先々で彼らが出会うのは、音楽を心のよりどころに毎日を生きる人びと。文化も境遇もちがう人びとがコンセルトヘボウのコンサートに集い、その演奏に人生を重ねる瞬間。ひとりひとりの心には、かけがえのない宝物が生まれてくる――。

ロイヤル・コンセルトヘボウ オーケストラがやって来る
出演:ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団 ほか
指揮:マリス・ヤンソンス 
監督:エディ・ホニグマン
2016年1月より、渋谷ユーロスペースにて公開 他全国順次 
>> 映画ホームページ
ロイヤル・コンセルトヘボウ オーケストラがやって来る
ロイヤル・コンセルトヘボウ オーケストラがやって来る
ロイヤル・コンセルトヘボウ オーケストラがやって来る

 

映画「ロイヤル・コンセルトヘボウ オーケストラがやって来る」
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この映画のチケットを、3名様にプレゼントします。応募方法など詳細は、THE FLUTE本誌149号(2016年1月10日発売)“読者プレゼント”コーナーにて告知します。奮ってご応募ください。
※渋谷ユーロスペースでの鑑賞券になります

ロイヤル・コンセルトヘボウ オーケストラがやって来る

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