ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団2015東京コンサート
2015年11月にロイヤル・コンセルトへボウ楽団の来日公演が行なわれ、東京ではサントリーホールと東京芸術劇場でのコンサートとなった。ここでは木村奈保子さんによる、東京芸術劇場での公演のレビューを紹介。
2015年11月12日(木)東京芸術劇場
[出演]指揮:グスターボ・ヒメノ、ピアノ:ユジャ・ワン、
管弦楽:ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
[曲目]チャイコフスキー/ピアノ協奏曲第2番 ト長調 op.44、交響曲第6番 ロ短調 op.74 「悲愴」
来春1月公開映画「ロイヤル・コンセルトヘボウ オーケストラがやって来る」に出演した首席フルート奏者、ケルステン・マッコール氏へのインタビューをこちらで紹介した。
さる11月には楽団の来日公演が行なわれ、東京ではサントリーホールと東京芸術劇場でのコンサートとなった。インタビュアーを務めた木村奈保子さんによる、東京芸術劇場での公演のレビューを紹介する。
ロイヤル・コンセルトへボウ管弦楽団
かつてマーラーが指揮したことでも知られるロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団は、歴史を誇る世界最高峰の楽団のひとつ。安定した技術とまろやかなサウンドが愛される。最近はメンバーも若くなったが、今回の来日では指揮者も若い。元々同楽団の打楽器奏者で、6代目指揮者ヤンソンス氏に学んだスパニッシュ、グスターボ・ヒメノ氏である。打楽器DUO経験もあり、ラテンの血……とくると、ついつい私はダンサブルな感じを期待してしまうが、インタビューした首席フルート奏者・マッコール氏によると、西洋人のリズムに思えるものは‘タイミング’であるということ。
昼間の取材で印象に残ったことを胸に、東京芸術劇場のコンサートに挑むと、前半はソリストのユジャ・ワン(中国生まれ、28歳のピアニスト)がチャイコフスキーのピアノ協奏曲第2番ト長調をエキセントリックなまでに強い個性で披露。大胆な衣装やユニークなお辞儀ぶりを含めて、いっきに聴衆の歓心をさらった。鳴り止まぬ拍手とアンコール。
ジャズバンド風に表現すれば、ここでの楽団は“ひとりで持っていける歌手を後ろで支える超一流のバンドマン”。ユジャ・ワンにとって最高の環境ではないか?
そして2幕。チャイコフスキー最後の大作、交響曲第6番 ロ短調 作品74 「悲愴」。やっと楽団の音、アンサンブル感が楽しめる。感情過多にならない冷静さと切れ味が美しい、それでいて、失わない暖かみ。ヤンソンス氏が棒を振った終わりのない広がり感は、ヒメノ氏にとって今後の課題であろうが、ともかくコンサートの完成度は高い。
Text by 木村奈保子