第5回 ぼあかるむコンサート ”J.S.バッハ in にいざ”
“静かでおだやかな林”というフランス語に由来する「ぼあかるむ」。忙しく、時間に追われて生活することが多い現代社会の中で見失いがちな心を少しでも豊かに!という理念のもと、2005年にスタートし、新座の地で今年5回目の開催となるコンサート。「0才から親子で楽しむクラシック」もプログラムされ、午前中は子どもも楽しめる、午後は大人のためのコンサートが行なわれた。ピッコロからダブルコントラバスフルートまでがずらりと並び、バラエティに富んだ音色が聴ける「ぼあかるむフルート合奏団2018」の演奏にも注目。
- 2018年5月27日(日) ふるさと新座館ホール(埼玉・新座)
[出演]笹倉強(指揮)、前中榮子(ソプラノ)、粟飯原俊文(テノール)、星野惠里(アルト)、笹倉直也(バス)、ブルク・バッハ室内合唱団、ぼあかるむフルート合奏団2018〈酒井秀明(コンサートマスター)/本田玲子/槇本吉雄/大竹菜緒/佐々木真/吉野裕子/鈴木誠治/大越絵梨花/飯島諒/山根尊典/素来聡子/岡崎明義/松井菜緒/石井孝治/岡山暁子/古川仁美/石野裕一/糸井正博/平田公弘/古田土勝市(以上Fl)、山崎香(オルガン、キーボード)〉
【午前公演】0才から親子で楽しむクラシック うたとふえ
[曲目]ヨハン・パッフェルベル:カノン(ぼあかるむフルート合奏団2018)、トマス・アーン:どれが歌によい日(ブルク・バッハ室内合唱団)、アドリアーノ・バンキエリ:森の音楽会(ブルク・バッハ室内合唱団)、三木露風 作詞・山田耕筰 作曲:赤とんぼ(前中榮子)、林古渓 作詞・成田為三 作曲:浜辺の歌(粟飯原俊文)、山川啓介 作詞・渋谷毅 作曲:お母さんは春(星野惠里)、馬場倖弘 作詞・アメリカの曲:森のくまさん(笹倉直也)、ヨハン・セバスティアン・バッハ:カンタータ147番より 第1曲「心と口と行いと生活が」第10曲「イエスは変わらざる私の喜び」(ブルク・バッハ室内合唱団、ぼあかるむフルート合奏団2018)
【午後公演】カンタータが心に響く「バッハって 素晴らしい!」
[曲目]ヨハン・パッフェルベル:カノン、トーマス・モーレ:今こそ五月、トマス・アーン:どれが歌によい日、オルランド・ギボンズ:しろがねの白鳥、アドリアーノ・バンキエリ:森の音楽会、三木露風 作詞・山田耕筰 作曲:赤とんぼ、石川啄木 作詞・越谷達之助 作曲「初恋」、林古渓 作詞・成田為三 作曲:浜辺の歌、北原白秋 作詞・山田耕筰 作曲:からたちの花、山川啓介 作詞・渋谷毅 作曲:お母さんは春、山村暮鳥 作詞・中田喜直 作曲:たあんきぽーんき、馬場倖弘 作詞・アメリカの曲:森のくまさん、北原白秋 作詞・山田耕筰 作曲:松島音頭、ヨハン・セバスティアン・バッハ:小フーガ BWV.578/カンタータ147番より「心と口と行いと生活が」
指揮:笹倉強/フルート合奏 編曲:佐々木真
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“静かでおだやかな林”というフランス語に由来する「ぼあかるむ」。忙しく、時間に追われて生活することが多い現代社会の中で見失いがちな心を少しでも豊かに!という理念のもと、2005年にスタートし、新座の地で今年5回目の開催となるコンサートだ。「0才から親子で楽しむクラシック」もプログラムされ、午前中は子どもも楽しめる、午後は大人のためのコンサートが行なわれた。
今回の公演で注目が集まったのは、何といってもさまざまなフルート属の楽器が“大集結”した「ぼあかるむフルート合奏団2018」の演奏だ。新座市在住のフルーティスト・佐々木真さんの呼びかけで参集したプロ奏者たちにより結成されたこの合奏団は、2013年の公演に続き、今回が2度目の出演となった。今回のステージは、ピッコロからダブルコントラバスフルートまでがずらりと並び、見た目の壮観さもさることながら、同じフルート仲間とは思えないようなバラエティに富んだ音色が聴ける――実はそんな貴重な場でもあった。
演奏の合間には楽器紹介のコーナーもあり、ピッコロを皮切りに高音の楽器から最も低音であるダブルコントラバスまで、音とともに紹介していくという趣向を凝らした内容であった。
フルートやピッコロは何度も見たことがある、という人でも、一般的にはコントラバスフルートまでを目にする機会はなかなか少ない。「こんな4の字みたいな大きなフルートがあったんですね!」という驚きの声は、フルートに普段なじみのない人からよく聞かれる感想である。ましてダブルコントラバスフルートとなると、フルーティストにとっても珍しく、今回のように舞台上で演奏されるのを見ることもめったにない……というくらいのレアな存在だ。そんな貴重な楽器を演奏したのは、低音フルートの第一人者で楽器製作者でもある古田土勝市さん。ちなみに、今回ステージ上に並んだほかの低音フルートも、古田土さんの手によるものだ。
さらに、低音だけでなく高音のほうも……普通のコンサートフルートより小さく、ピッコロよりは大きい「ソプラノフルート」も、コンサートなどで目にする機会のめったにない珍しい楽器だ。音色もピッコロとフルートの中間くらいの高音で、フルートアンサンブルの中によく溶け込みつつ存在感を発揮する、頼もしい存在である。これも古田土さん製作によるもので、この日演奏したのは、飯島諒さん。このソプラノフルートには「Beモード」という少々変わった仕掛けがあり、この仕掛を使うと、さらに変わった不思議な効果音のような音色を奏でる。
普段見たり聴いたりすることのまずないこういった楽器に触れ、ほぼ満員の観客が、興味津々でそれらの音色に耳を傾ける様子が伝わってきた。午後の公演で客席は大人のみだったが、きっと午前中にこれらを見聞きした子どもたちも、その体験を存分に楽しんだに違いない。
新座市長も来場し客席で演奏に耳を傾ける、盛大なイベントとなった今回の公演。錚々たる奏者たちによる多種多様なフルートの演奏は、バッハのカンタータを初めて聴く人の心にも強い印象を残したことだろう。音の層を厚くする多彩なフルートの調べが、「バッハって素晴らしい!」というタイトル通りの言葉を聴く人々の心に呼び起こしたに違いない。
(写真提供は、フジミフルート工房 野口恵三氏)