フルート記事 ジュネーブ国際コンクールフルート部門レポート
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フルート部門ファイナルの結果発表

ジュネーブ国際コンクールフルート部門レポート

REPORT

世界三大フルートコンクールと言えばなにが浮かぶだろうか。
ランパル国際フルートコンクール、ミュンヘン国際コンクール、日本の神戸国際フルートコンクールも入るであろう。その候補に挙がるコンクールのひとつが昨日ファイナルを迎えたジュネーブ国際コンクールだ。

2010年に開催された本コンクールのピアノ部門では萩原麻未が日本人初として優勝し、一躍メディアで大きく取り上げられた。フルート部門はこれまでにオーレル・ニコレ、レイモン・ギオー、エマニュエル・パユなど世界のトッププレイヤーが優勝している伝統ある超難関のコンクールだ。
今回のフルート部門は50名が第一次予選を受け、その中から3名がファイナルに駒を進めた。
ファイナルの課題曲は、W.A.モーツァルト『フルート協奏曲ニ長調』または『フルート協奏曲ト長調』と、現代作曲家作品から任意の1曲を選択。3名のファイナリストは全員、モーツァルト『フルート協奏曲ニ長調』とA.ジョリヴェ『協奏曲』を選んだ(演奏曲順は1.モーツァルト 2.ジョリヴェ)。
ファイナルの会場はジュネーブの由緒あるホールとして知られる、ヴィクトリアホール。

まずトップバッターで演奏するのはロシア出身のエレーナ・バダエヴァ。序盤から非常にアグレッシブで瞭な音色を奏でる。モーツァルトのこの協奏曲といえば個性ある表現を取り入れるのが難しいほど形式的。その中で彼女は自由に表現をつけていたのが印象的で、特に自身のカデンツァはユーモアがあふれた、まるでモーツァルト本人の性格を物語るかのようであった。ジョリヴェはミステリアスな第一楽章が彼女の音色に合っていたが、曲が進むにつれ集中力が薄れていくのか、上手く表現ができていない様子が残念であった。
2番目に演奏するのはファイナリスト最年少韓国出身のキム・ユビン。若干17歳の彼は現在リヨン音楽院に留学中で、第1回アジアフルート連盟のジュニアフルートコンクール in 上海で優勝(当時中学2年生)、第8回神戸国際フルートコンクールでは特別賞を受賞している世界が注目する若手奏者だ。どんなフレッシュな演奏をするのかと思うと、驚くほど落ち着いていて、ニュアンスを水のように変化させる大人の演奏を聴かせた。ジョリヴェも最後まで集中力を切らさず渾身の演奏が伝わる。しかしあまりに自分の演奏に集中しているからか、時よりオーケストラを置いていってしまう部分が見られた。この曲は技術的にも難易度が高く、テンポも大きく変わるため、オーケストラとのアンサンブルが非常に難しいのだ。
休憩を挟んで最後に演奏したのはポルトガル出身のアドリアナ・フェレイラ。第8回神戸国際フルートコンクールで第3位、2010年のニールセン国際コンクールでは第1位を受賞している国際コンクール常連の奏者だ。その実力はモーツァルトの序盤のフレーズからわかる。オーケストラをバッグに華やかで際立つ音色。しかしきちんとオーケストラに溶け込んでいて、フルートを聴いているというより音楽そのものを聴いているような印象だ。そして彼女の表現したい音楽がはっきりしているため指揮者もオーケストラも自然についてくる。これこそがフルートコンチェルトだというほど、素晴らしい演奏であった。

Report:川上葉月

 

フルート部門ファイナルの結果は以下の通り(演奏順)
第一位 受賞なし
第二位 キム・ユビン、アドリアナ・フェレイラ
第三位 エレーナ・バダエヴァ

審査員 エミリー・バイノン、シルビア・カレドゥ、マチュー・デュフォー、エヤル・アイン・ラーバー、アンドレア・リーバークネヒト、フェリックス・レングリ、酒井秀明

ファイナルの動画はこちらから見ることができる。
http://concert.arte.tv/de/69concours-de-geneve-finale-kategorie-flote
ジュネーブ国際コンクール公式HP|http://www.concoursgeneve.ch/


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