THE FLUTE 150号 記念CD紹介!
THE FLUTE150号発刊を記念して、新収録を含めたたくさんのプレイヤーによるコンピレーション・アルバム(2枚組)が登場しました! Disc1は150号と連動した音源や新録音、ジャズ、ボサノバなどの楽曲。Disc2はこれまでTHE FLUTE誌面に協力してくれたプレイヤーの皆様からの提供トラックという豪華な内容です。
TRACK 01| ラ・モッラ
ハインリッヒ・イザーク
La morra / Heinrich Isaac
使用楽器:ルネサンス・フルート
演奏:前田りり子・菊池かなえ・菅きよみ・国枝俊太郎(ルネサンス・フルート)
CD「魅惑のルネサンス・フルート ~優しい眼差し~(5月発売予定)」
盛期ルネサンス時代(15C後半~16C初頭)、音楽界をリードしていたのは現在の北フランス、ベルギー、オランダなどのフランドル地方出身の作曲家たちだった。中でもフランドル楽派の巨匠イザークは1450年頃生まれ、フィレンツェのロレンツォ・デ・メディチやハプスブルグ帝国を築いたマクシミリアン1世などの宮廷楽長として活躍した。非常に多作家で、当時としては珍しい器楽曲も多数残している。ドイツ・リート(『インスブルックよさらば』)がよく知られている。
この『ラ・モッラ』は1分ほどの短い曲だが、ルネサンス・フルート4本を使ったもの。この楽曲を収録した前田りり子さんのアルバムは2016年5月に発売される予定だ。
本誌連動 THE FLUTE特集1「時代を駆ける楽器のストーリー 知って楽しむフルートの歴史」連動
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TRACK 02| 組曲集第1巻 第4番 ホ短調 作品2の4 第1楽章 プレリュード
ジャック=マルタン・オトテール
Premier Livre, Quatrième Suite En Mi Mineur Op.2-4 / Jacques-Martin Hotteterre
使用楽器:オトテールモデル 3分割バロック・フルート[フランス・18世紀初頭]
演奏:前田りり子(バロック・フルート)、市瀬礼子(ヴィオラ・ダ・カンバ)、ロベール・コーネン(Cemb)
CD「J.M.オトテール[ル・ロマン]フルートと通奏低音のための組曲集」より
ジャック=マルタン・オトテールは、フランスのバロック音楽の作曲者、フルート奏者、木管楽器製作家。1674年、パリの楽器職人の家庭に生まれ、ローマに留学したことから「オトテール・ル・ロマン」という愛称でも知られている。作曲家としては自身がフルート奏者のため、フルートの楽曲を多く残している。この時代にフルートは改良され、3分割フルートが生まれすべての半音階を吹けるようになっている。この曲は『通奏低音を伴う横笛吹きフルートとその他の楽器のための組曲集第1巻』として1708年に出版されており、再販されたときにはアマチュアでも楽しめるようにと装飾音符が加えられている。ちなみに第2巻は1715年に出版。この組曲を作った時代のフランスは太陽王ルイ14世が君臨しており、第2巻が出版された年にルイ14世が没している。フランスの時代の移り変わりを感じられる組曲集と言える。
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TRACK 03| フルートとオブリガート・チェンバロのためのソナタ
ロ短調 BWV1030 第1楽章
ヨハン・セバスチャン・バッハ
Sonata für Flöte und Cembalo h-moll BWV1030 h-moll “Andante” / Johann Sebastian Bach
使用楽器:G.A.ロッテンブルグ 4分割バロック・フルート[ベルギー・18世紀中期]
演奏:前田りり子(バロック・フルート)、市瀬礼子(ヴィオラ・ダ・カンバ)、ロベール・コーネン(Cemb)
CD「前田りり子 バロックフルート J.S.バッハと同時代の作曲家によるフルート音楽」より
「音楽の父」と呼ばれる大作曲家ヨハン・セバスチャン・バッハは音楽家一家の8人兄弟の末子として1685年に誕生した。幼くして両親を亡くし、兄クリストフの元で音楽の手ほどきを受けている。セバスチャン自身には二度の結婚で20人の子どもがいる。その半数は夭折したものの、カール・フィリップ・エマニュエル・バッハなど今も愛されるフルート作品を残した音楽家も多い。このロ短調ソナタは、オブリガート・チェンバロ付きのソナタの中でも特に美しく、最高峰と賞される全3楽章から成る作品である。フルートの掛け合いとチェンバロの緊密な対話は、表面的には穏やかでありながらも、深い愛情、慈悲、愛……すべてが込められているようである。このCDに収録した1楽章は8分ほどの壮大な楽章である。
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Profile 前田りり子
モダン・フルートを小出信也氏に師事。全日本学生音楽コンクール西日本大会フルート部門高校生の部第1位入賞。その後、バロック・フルートに転向して桐朋学園大学に進学。オランダのデン・ハーグ王立音楽院の大学院を修了。有田正広、B.クイケンの両氏に師事。1999年、ブルージュ国際古楽コンクールで第2位入賞。バッハ・コレギウム・ジャパン、ソフィオ・アルモニコなどのメンバーとして演奏・レコーディング活動のほか、「フルートの肖像」を東京書籍より出版し、執筆活動にも力を入れている。東京芸術大学、上野学園大学非常勤講師。公式ホームページ「りりこの部屋」で検索。
(左)「J.M.オトテール[ル・ロマン]フルートと通奏低音のための組曲集」
(右)「バロックフルート J.S.バッハと同時代の作曲家によるフルート音楽」
TRACK 04| 恋する羊飼い(『3つの小品』より第1楽章)
ピエール=オクターヴ・フェルー
BERGERE CAPTIVE(Trois pièces pour flûte seule)/ Pierre-Octave Ferroud
使用楽器:ルイ・ロット
演奏:白川真理(Fl) / CD「無伴奏フルート作品の夕べ〜銀のロットと共に〜」より
ピエール=オクターヴ・フェルー(1900〜1936年 仏)は大学で科学を専攻したが、フローラン・シュミットに作曲を学んでいる。この作品は1921年、兵役に就いていた21歳の折に書かれ、当時流行していた東洋へのあこがれが反映されている。女羊飼いの切々とした恋慕の情感漂う『恋する羊飼い』、五音音階から成る民謡風の『硬玉』、捕虜になるのを厭い入水自殺した英雄を祀る5月5日の祭りを主題とした『瑞陽』(タンヤン)の3つの全楽章から成る。このCDでは第1楽章を収録。
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Profile 白川真理
武蔵野音楽大学卒業。ミュンヘンに一年半留学。女性のみのプロアンサンブル「ムジカ・フィオーレ」メンバーとして活躍後、フリー奏者に。2000年より植村泰一氏に師事しヴィンテージフルートの魅力に開眼。2003年より武術研究家・甲野善紀氏の下、その術理を楽器演奏に生かす研究に取り組む。「ザ・フルート」にて連載(2014年まで)。「第16回日本フルートコンヴェンションin高松2013」では関連の講習会を招聘される。2012年より毎年、「無伴奏フルート作品の夕べ」を開催。フルートトリオ「トロワ・パルファン」メンバー。CD、楽譜出版。
「無伴奏フルート作品の夕べ〜銀のロットと共に〜」
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TRACK 05-06| 贈る言葉
千葉和臣
演奏:藤田哲志/鈴木芽玖(Fl)
1979年にリリースされたフォークの名曲。武田鉄矢が主演するTBS系テレビドラマ「3年B組金八先生」の第1シリーズの主題歌として使われ、100万枚以上シングルを売り上げた大ヒット曲である。作詞は武田鉄矢が担当している。卒業式の定番曲となっており、老若男女に広く知られた作品である。
本誌連動 THE FLUTE連載「ちょっとおしゃれに、懐かしきJ-POP」連動
TRACK 07-08| ビリーブ
杉本竜一
演奏:藤田哲志/鈴木芽玖(Fl)
1951年生まれの杉本竜一は、東京芸術大学大学院を卒業後、ウィーン国立音楽アカデミーで学んでいる。『ビリーブ』はNHK「生きもの地球紀行」の3代目エンディングテーマとして、1988年に発表されている。歌っているエンジェルスハーモニーは、3歳〜80歳までの百名以上で番組スタッフが中心。テレビドラマでも使用され、この曲は2006年には井上あずみがカバー、ジャニーズのV6は2008年に発売したシングルに収録している。教科書にも掲載されていることもあり、学校の合唱や卒業式の歌としてよく歌われる作品である。
TRACK 09| オリビアを聴きながら
尾崎亜美
演奏:藤田哲志/鈴木芽玖(Fl)
歌手・杏里のデビューシングルで1978年に発売。当初はヒットはしなかったものの、長い年月を経るうちにリタ・クーリッジ、河村隆一、徳永英明など多くの歌手がカバーし、今や誰もが知るJ-POPの名曲となっている。タイトルの「オリビア」とは、日本人にもファンの多い、オーストラリア出身の歌手オリビア・ニュートン=ジョンのこと。いわゆる失恋ソングだが、杏里の透明感のある歌声とメロディの爽快感が、印象的な曲である。楽譜はTHE FLUTE vol.145号に掲載。
Profile 藤田哲志
1991年生まれ。香川県高松市出身。12歳よりフルートを始める。第14回びわこ国際フルートコンクールアドヴァンス部門奨励賞など多くのコンクールで上位入賞を果たしている。フルートを砂山佳美、野口博司、木ノ脇道元の各氏に師事。Vincent Lucas、Aldo Baerten、Pierre-Yves Artaudのマスタークラスを受講。霧島国際音楽祭にてPaul Edmund-Daviesのマスタークラスを修了。ピアニスト、キーボーディストとしても活動しており、日本テレビ「ミュージックドラゴン」等に出演。作曲・編曲等も手掛け、2013年にウインズスコア社よりフルート三重奏「海のパレット」を出版。高松第一高等学校音楽科を経て、現在東京藝術大学器楽科に在学中。
Profile 鈴木芽玖
桐朋学園大学音楽学部卒業、同大学研究科修了。第19回山形県出身者新人演奏会に出演。第40回フルートデビューリサイタルに出演。現在、桐朋オーケストラ・アカデミー研修課程に在籍。三響フルートプラザ講師。これまでにフルートを森谷恭子、倉田優、荒川洋、高野成之の各氏に師事。室内楽を篠崎史子、高野成之の両氏に師事。
TRACK 10| ルパン三世のテーマ
大野雄二
演奏:FEAMS (Fl)
CD「FEAMSコレクション VOL.1〜アニメ〜」より
イントロを聞けば「ルパン三世!」とすぐに分かる躍動感あふれる作品。アニメは1971年に放送開始となり、劇場用長編アニメも多い。作曲はジャズ・ピアニスト、作曲家の大野雄二が担当。このテーマは第二シリーズのオープニングから放送され、その後のシリーズでも多く使用されている。原曲はトランペットから始まる印象的なフレーズだが、このCDに収録したフルートカルテットFEAMSが原曲の雰囲気を損なうことなく、フルートのみで演奏しているのが聴きどころ。
Profile FEAMS
メンバー:尾形誠、窪田恵美、満丸彬人、石田彩子、大久保祐奈によるユニット。2010年1月、東京藝術大学の学生4人により結成。名古屋アンサンブルフェスタに参加の他、仙台、福井、東京、群馬でコンサートを行なう。定番クラシックから、jazzアレンジ、ゲーム音楽などの他、多数の委嘱作品を演奏。日本のフルート界における現代音楽の第一人者、木ノ脇道元氏の委嘱作品の演奏は話題を呼んだ。2012年に「Chant de quatre d'eux」から「FEAMS」に改名。「第3回jfosフルートアンサンブルコンクール」最優秀賞受賞。
「FEAMSコレクション VOL.1〜アニメ〜」
TRACK 11| Confluência
Yuka Kido
演奏:城戸夕果(Fl) / CD「ARACUÃ」より
私が住む広大なブラジルには、地方により、いろいろな音楽があり、リズムがある。この作品は、ブラジルの東北部ペルナンブーコ州に伝わる、竹の横笛『ピッファノ』で奏でられたフォホーという音楽に魅せられて作曲。1996年リオデジャネイロで録音。フィロ・マシャードを始め、ブラジルの素晴らしいミュージシャンとの音の掛け合いは楽しく、まさにConfluência(合流)というタイトルにつながった。(城戸夕果)
Profile 城戸夕果
洗足音楽大学卒。ブラジルのリオデジャネイロにて、ボサノバ創始者のジョニー・アルフィやカルロス・リラ等のレコーディングやツアーを行ない、ブラジルやデンマーク、日本にて録音したアルバムを6枚リリース。EPOや宮沢和史等のポップスとのコラボレーションのほか、ジャズの渡辺香津美や向井滋春ともツアー。結成10年以上になる4人のジャズフルーティストのユニット『Four Colors』でも、1枚リリース。2014年よりブラジリアに転居し、活動。
「ARACUÃ」
TRACK 12| O Pato(アヒル)
Jayme Silva / Neuza Teixeira
演奏:Bossa Flauras〈大久保はるか、森昌代、飯田真由美、川原夕香(Fl) 〉 / CD「Song Of The Jet」より
ジョアン・ジルベルトやアストラッド・ジルベルトの歌でもお馴染みのボサノヴァ・スタンダード。アヒルとガチョウが一緒にサンバを練習する、というかわいらしい歌詞は、アヒルの鳴き声を随所で巧みに取り入れている。ちなみに日本ではアヒルの鳴き声はただうるさいだけだが、ブラジルのアヒルは「クェン、クェン」と楽し気に歌って踊る、と言ったのはボサノヴァ歌手の小野リサ氏である。(大久保はるか)
Profile 大久保はるか
玉川大学芸術学科フルート科卒業後ヤマハ・ポピュラー・ミュージック・スクールフルート科講師を経て、トレヴァー・ワイ氏主宰〈THE STUDIO〉にて研鑚を積む。在籍中触れたA.C.ジョビンの音楽に感銘し、ボサノヴァの演奏活動を開始。 3枚のCDを発売。『ボサノヴァ・フルート』1~3巻など著書18冊。a-note+MUSIC SCHOOL講師。
「Song Of The Jet」
TRACK 13| ロスタイム3分
坂上領
演奏:チャランガぽよぽよ[坂上 領(Fl)、帆足 彩(Vn) 他]
CD「チャランガぽよぽよ」より
今はアディショナルタイムと呼ばれるロスタイム。サッカーの試合ラスト3分は、勝っているチームは「早く終われ」って思うし、負けているチームは「3分あれば追いつける」って思う、そんなドラマチックな駆け引きを描いた楽曲。途中フォーレのファンタジーをヒントにしたフレーズからのフルートのアドリブソロは、仮録音だったものがあまりにも調子良かったので本テイクになった。チャランガぽよぽよはライブも大好評。今年は2枚目を作りたいと意欲的!(坂上領)
Profile チャランガぽよぽよ
坂上領(フルート)、帆足彩(ヴァイオリン)により2001年結成、ほんわかあたたかいラテン音楽をコンセプトとする「ラテン系脱力バンド」。“熱い”というより“暖かい”ライブを展開中。チャランガとは、フルートとヴァイオリンが活躍するキューバのエレガントなラテン・スタイルの1つ。『チェブラーシカ』や『みんなのうた』などを“愛”のあるアレンジでぽよぽよ風に料理している。
「チャランガぽよぽよ」
TRACK 14| TIME TO SAY GOODBYE
Francesco Sartori
演奏:岡本謙/上田章代(Fl)、成田有花(Pf)
原曲は『Con Te Partirò(コン・テ・パルティロ)』をタイトルとし、イタリア人歌手のアンドレア・ボチェッリの代表曲である。1995年のサンレモ音楽祭での初披露をきっかけに、CDを発売後は多くの国でヒットとなった。さらにこの曲を有名にしたのは、ボチェッリがイギリス人ソプラノ歌手のサラ・ブライトマンとデュエットで共演したことであろう。これを機にタイトルを英語に変更したことでヨーロッパを始め全世界で記録的なヒットとなった。ボレロ風のリズムを持つ力強い曲で、サビは伸びやかなメロディと躍動感のある伴奏のからみ合いが印象的。日本でもドラマの主題歌として使われるなど、耳にすることの多い作品である。
Profile 岡本謙
香川県高松第一高等学校音楽科を経て、国立音楽大学を卒業。シエナ・ウインドオーケストラ、東京吹奏楽団にてピッコロ奏者を務める。現在はフリーとしてミュージカルのオーケストラ・プレイヤーを中心に演奏活動を行なう。これまで『エリザベート』、『モーツァルト!』、『美女と野獣』等、数多くのミュージカル作品にて演奏を行なっている。フルートアンサンブル“ザ・ステップ”、タッド・ウインドシンフォニーメンバー。
Profile 上田章代
香川県出身。13 歳よりフルートを始める。香川県高松第一高等学校音楽科を経て、東京芸術大学卒業。在学中、よんでん文化財団法人の奨学生に選ばれる。また東京芸術大学の校内選抜により第37 回室内楽定期演奏会に木管四重奏で出演。ザルツブルクモーツァルト国際室内楽コンクール入賞。現在は、フリーランス奏者としてソロや、室内楽、また吹奏楽やオーケストラ、スタジオミュージシャンとして幅広く活動している。iTunesで配信中のLa Plage 大人のためのフランス語入門6 のBGM ではフルートソロで勤めている。フルートアンサンブル“ザ・ステップ”、タッド・ウインドシンフォニーメンバー。
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