フルート記事 リーフレック×パユ
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THE FLUTE vol.173

リーフレック×パユ

GEAR

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の首席奏者であり、名実ともに現代フルート界のトップに君臨するエマニュエル・パユ。彼の楽器本体に付いている小さなパーツが、響きを増すアイテムとして話題の「リーフレック」だ。常にケースに入っており、現場で愛用しているというこのアクセサリーの魅力について聞くと、自ら積極的に、楽しげな口調で語ってくれた。

楽器に対する考え方を根底から変えてくれた画期的な発明です

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の首席奏者であり、名実ともに現代フルート界のトップに君臨するエマニュエル・パユ。彼の楽器本体に付いている小さなパーツが、響きを増すアイテムとして話題の「リーフレック」だ。常にケースに入っており、現場で愛用しているというこのアクセサリーの魅力について聞くと、自ら積極的に、楽しげな口調で語ってくれた。

リーフレック,パユ

濃密なサウンドが、音楽にインパクトをもたらす

このパーツは「リーフレック」ですよね。どのような効果があるのでしょうか?
パユ
リーフレックは楽器の接続部分にブリッジさせて使うのですが、この2枚のプレートがバイパスのような役割を果たしてくれて、振動をそのまま頭部管から胴部管へと伝えてくれます。その結果、とてもパワフルなサウンドを得ることができるんです。響きが少ないドライな場所でも、リーフレックを付けることで会場全体に響いてくれるようになる。そういった意味では、特にインパクトが欲しい場面でとても活躍してくれるアイテムですね。
ひとつ誤解しないでほしいのは、リーフレックは「大きい音が出せるようになるものではない」ということ。響きが豊かになることによって、音の芯の部分がしっかりしたものになり、密度の濃い音になるイメージだと思ってください。
曲によっては、濃密な音が求められない場面もあります。そのときは、付ける位置を少し下にずらすと効果が和らぐんです。私は効果がまったく必要ないときは、位置を完全に胴部管側にずらして、ブリッジさせないようにしています。取り付け位置によって、自由に効果を調節できるのも魅力ですね。
この頭部管と胴部管のジョイント部分に加えて、頭部管とヘッドスクリュー部分にブリッジさせるなど、2つ付ける奏者もいますね。私は調節する作業がシンプルなほうが良いから、付けるのは1つだけ。付けて最も効果があるのがこの部分です。もちろん、楽器や奏者自身のクセもあるでしょうから、自分が良いと思う場所が見つかるまで試してみると良いでしょう。
あと、リーフレックにはさまざまな素材があるけれど、自分の楽器と同じ材質のものを使うことをおすすめします。私は14Kの楽器を使っているから、同じく14Kのリーフレックを使っています。材質によって持っている振動の性質が異なるから、違うものだとぶつかり合ってしまうこともあるんです。

オケのメンバーで揃えて付けると、より音がマッチする

初めて使ったときの印象はどうでしたか?
パユ
初めて付けたとき、確かな効果をすぐに実感できて驚きました。特に二つのフルートを使って試すと、付けているときと付けていないときの違いがよりはっきりと分かりました。
以前、アメリカのフルート奏者にリーフレックを勧められて、二人で付けてデュオで演奏してみました。すると、ハーモニーがとても澄んだ響きになって、非常にやりやすかった。例えば、このコップの水の中心に水滴を落とすと、波形が水面に広がっていきますよね。普通なら淵に当たって反射して返ってくると、そこで波形は乱れてしまう。それがリーフレックを付けると、常に綺麗な波形のままでいられるんです。
ただ、さっきの話と重なりますが、曲によって波形がクリーンな状態が良いときもあれば、反対に乱れているほうが効果的な場面もある。100%リーフレックに委ねるのではなく、いかにうまく調整しながら使うか。自分でコントロールしながら使えれば、演奏の幅をグンと広げてくれる頼もしいアイテムになりますよ。
ちなみに現在、オケでリーフレックを使うときは、同じセクションのメンバー全員で付けます。付けることで、個々の音色の幅が広がり音がマッチしやすくなるので、一つの音楽を作り上げるのが容易になります。
ベルリン・フィルのフルートセクション全員が使うなんて、凄いことですね。
パユ
リーフレックの効果は音や響きだけではありません。オクターブの移動がとてもラクになります。音程が狂うことなくスムーズに移動できるようになるから、演奏に安定感をもたらしてくれます。

リーフレックのおかげで、音に対する新たな発見ができる

ソロでもオケでも、さまざまなプラスの影響をもたらしてくれるのですね。
パユ
レコーディングの現場で使っていても、リーフレックのおかげで音に対して新しい発見があったりするから、非常に面白いですよ。
リーフレック開発者のハンス・カウト氏はサックス、フルート奏者です。実際に会ったときに開発の経緯を聞きました。楽器というのは、接合部分や異なる材質の組み合わせなど、息を吹き込む部分から楽器の端までエネルギーを伝える過程でどうしてもロスが生じてしまう。いかに効率良く最後まで響きを伝えられるか、徹底的に追求したそうです。彼の説明は論理的で、とても説得力がありました。
フルートという楽器の改良に関しては、これまではデザインを変える、寸法を変える、材質を変えるといった手段しかあり得なかった。ところが、リーフレックはこの小さなパーツで振動を伝えるという、非常にシンプルな方法によってそれを成し遂げた。楽器に対する考え方を根底から変えてくれた、画期的な発明だと思っています。
ただし、最後に一つだけ。リーフレックを付けたらフルートが上手くなるわけではありません。金のフルートを手にしても技術が上がるわけではないですよね。練習のみが、あなたの演奏力を高めてくれるということを忘れないでください。
リーフレック,パユ
 
 

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