フルート記事 MeTooの土壌、日本では?
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木村奈保子の音のまにまに|第2号

MeTooの土壌、日本では?

MUSIC

木村奈保子さんのOnline限定連載「音のまにまに」。今回はセクハラへの怒りを唱えるMeToo運動から映画と音楽について取り上げます。

セクハラへの怒りを唱えるMeToo運動から、女優の低額ギャラ差別まで、欧米女性の権利運動は、エンタテイメント業界の著名な女性たちによって、世界的な広がりを見せている。我慢しないと先がなかった我々の世代は、いまさらメリットはないところだが、これからの若い世代の女性たちへの貢献として、声を上げることに意味がある。にもかかわらず、年配女性議員がそれを口にすると、「そんなに騒がなくても、あなた方のようなおばさんには、だれもセクハラしませんよ。」などと男性陣から揶揄された。

これが男性社会というもので、まず女性はセクハラしたい対象か否かで判断される。性的対象でないと、嘲笑われたり無視されたりするが、対象に入ると一見選ばれたようでも、その分不快な言動にさらされたり、ひどい仕打ちを受けることがある。

人間は、芸やキャリアを磨く上で、死にものぐるいの訓練をしなければならないのは男女とも当然だが、多くの女性はその途中で、余計な努力を強いられることがある。それが、無意味で価値のないアンフェアなセクハラというものだ。

映画『パティ・ケイクス(原題) / Patti Cake$』は、そんな女性の怒りを音楽的に共有できる傑作。オーストラリア出身のふっくら女優、ダニエル・マクドナルド演じるヒロインは、憧れのイケメンラッパーから、女子としての見た目だけで非難され、いじめに近い仕打ちを受ける。しかし彼女は、傷つくどころか、怒りをバネに、イケメンラッパーとのラップバトルに挑むことを決意。


映画『パティ・ケイクス(原題) / Patti Cake$』


主演:ダニエル・マクドナルド

 

魂の叫びを歌うラッパーのセリフが生きた、女性ヒーローの音楽映画。侮辱されたら、面と向かって、その男を攻めるたくましさが痛快だ。

それも、手法はラップ! まさに、芸は女子を救う。大作映画ではないが、サンダンス映画祭で注目されたといえば、作品の魅力は太鼓判。私も、この映画祭に一度出席したが、地味ながら新人の才能にあふれているものが多い。ジェンダー映画としても、音楽映画としても成功作といえる。女子会の前に見て、盛り上がれること間違いなし。

一方、女性映画で「 ダリダ~あまい囁き~」は大人の女性向け音楽映画。


©2017BETHSABEEMUCHO-PATHEPRODUCTION-TF1
FILMSPRODUCTION-JOURORCINEMA

フランスの歌手、ダリダを主人公にした伝記映画で、私ぐらいの年配の女性なら、「あまい囁き」~パローレ、パロレ、パローレ~♪でデュエットし、アラン・ドロンとも浮名を流した美人歌手といえば、すぐに歌が思い出されるだろう。

イタリア移民でミス・エジプトから歌手に転じ、世界のアイドルとなったダリダを、今作ではイタリア出身のモデルで、映画初主演となるペバ・アルビティが演じる。女性監督がペバを発掘し、見事にダリダを蘇らせた実にパワフルな作品。

この美しいヒロインは、モテるというより、肉食系で自らの意思によりバッタバッタと男性を食い尽くしていく。この描き方が悪女的ではなく、アグレッシブな純粋さでいやらしくもなく、エロすぎることもない。さすがに女流監督の視点ということろか、そこには、歌の力と存在の魅力がエネルギッシュにあるだけだ。

モデルがどうして、初主演でここまでやれるのか、不思議なくらいのなりきりようだ。男性の願望目線がないところが実に心地よいのだ。

彼女の愛に生きる姿は、ファム・ファタールとはまるで異なる清々しさで、音楽に消化されていく。同じく肉食系のブリジッド・バルドーと比べて、再考したい女性の生き方だ。

そういえば、セクハラ反対運動に賛同していない昨今のバルドーは、アメリカ型女性運動に、興味を示していない。

カトリーヌ・ドヌーブも、本件では、男性に女性を誘う勇気を失わせるのでは、と危惧していた。余裕のコメントというべきか。怖いものなしのアグレッシブな人生を歩んできたせいか?

欧州はアメリカよりも、女性の権利は明らかに進んでおり、権利の土壌が異なる。 日本はどうか?

 


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第2回:MeTooの土壌、日本では?
第3回:エリック・クラプトン~サウンドとからむ生きざまの物語~
第4回:津軽のカマリ、名匠高橋竹山の物語
第5回:ヒロイックな女たち
第6回:アカデミー賞2019年は、マイノリティーの人権運動と音楽パワー


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