権力にしがみつくエリートと芸を磨くアーティスト
最近、もっとも喜ばしいニュースは、袴田巌事件で無罪判決が出たことだ。
高橋伴明監督の「BOX袴田事件 命」は、2010年にミニシアター系で公開されたが、映像の質から、リメイク版は必須だろう。「それでもボクはやっていない」の周防正行監督は、チカンの冤罪より、袴田事件のような題材で骨太の作品を期待する。
権力ある立場で、メンツのために、冤罪を作った人たちに罰はないのだろうか?
中身を伴わない権力が人を醜くする。
一方、派閥に影響を受けない新総裁が誕生。いったい、どこまで刷新できるのだろうか?
マイノリティ=女性リーダーに期待したいものの、女性であればいいわけでもなく、もちろん、男性のほうがいいわけでもない。その人の資質次第だろう。
与えられた権力をいかに使うのか?
問題山済みの中で、まず災害の被害救済に安心な国を期待したい。
一方、阪神大震災で大きな被害を受けた兵庫県では昨今、権力の暴走による事件として、自己愛知事の抑揚のないトークサウンドに日本中が振り回された。
デジタル時代の不協和音に心響く真実はないと感じさせられた今日この頃。
画面に映し出された独特の能面表情には、心理分析癖をそそるものがあった。
まるで、サイコホラー映画を観るときのように……。
権力により歪んでいった心の闇は、映画の題材として描かれやすい。
政界にも、いつか、美しいスピリット“大谷’’ヒーローは、生まれるのだろうか?
さて、エンタメ界では、国際俳優、真田広之がアメリカ製作のTVドラマシリーズ「SHOGUN 将軍」でエミー賞を受賞したことが話題だ。
「SHOGUN 将軍」といえば、1980年、TVシリーズから劇場公開用に編集した映画版で、島田陽子がゴールデングローブ賞を受賞した、あのジェームス・クラベルの原作である。
時を経て、英語圏で活動する真田広之が、家康を演じながら、自らプロデュースも兼ねた作品作りに期待しない人はいないだろう。
アメリカで活動する真田広之の存在は、いつも気になっていたから、大きな受賞については実に感慨深いものがある。日本人のグローバルスタンダードを追い求めてきた私としては、国際的に活動をするアーチストを応援する。
真田は、そもそも子役から千葉真一や高倉健など、グローバルな方向を目指す大物と接してきた恵まれた境遇。古き良き時代の空気感を受け継いでいる。
私も、千葉真一や高倉健など、時代の大物と接し、そのエアーを感じた、ぎりぎりのラッキーな年代だと思っている。先駆者は、人間的な面白みや器が違うのだ。
何より、海外でのアジア人の扱い、イメージについての問題は重要だ。
ブルース・リーがあの時代に果たせなかったアジア人俳優の位置を、のちにジャッキー・チェンやジェット・リーが、時代の流れとともに、カンフーアクションを武器に地位を勝ち取ったように、真田もまた、殺陣アクションを武器に、日本人俳優の存在を確固たるものにしたといえる。
しかし、スポーツ選手やアーティストは、キャリアによる権力を悪用しない。
そのために戦っているわけではないからだ。
すでに真田は、「ラッシュアワー3」でジャッキー・チェンと、「ジョン・ウィックコンセクエンス」でドニー・イエンとなど、世界のマーシャルアーツ第一人者たちと見事なアクションシーンを作ってきた。またアクションのみならず、あの名優、アンソニー・ホプキンスとゲイ関係を演じる文芸作「最終目的地」で共演している。
真田の文化的貢献度は大きいが、そのエネルギーは、先人に対するリスペクトの精神と、同時に映像のコンテンツが劇場映画に限らず、TVシリーズや配信メディアなど、世界中で素早く見られるようになったことが、チャンスを広げたといえよう。
ハリウッドの重鎮、ロバート・デニーロやアル・パチーノが、劇場公開しないネトフリ映画をアカデミー賞候補に入れたくないという思いを伝えた時期もあったが、結局は新メディアによって、作りたいものが作れるチャンスを得たことで、時代を受け入れた。限られた劇場公開の採算を考えると、予算を組むのは本当に大変だ。
かつて、黒澤明監督も、人生の後半で映画製作の予算調達ができないと悩める時期が続いた。
今の時代のような受け皿があれば、まだまだ傑作が残せたに違いないと思うと残念だ。
さて、真田の今後はというと、私の勝手な妄想だが、アル・パチーノ路線に行きたいのではないか?そこで、ジョン・ウー監督の「ゴッド・ファーザー」アジア版のコルレオーネ役を演じることができれば、と熱望する。もちろん、ドニー“イップマン”イエンの共演は必須だ。
時代劇にそれほど興味がないのだが、これからまずはエミー賞受賞作をゆっくり鑑賞したい。
Drama INFORMATION
SHOGUN 将軍 テレビドラマ(アメリカ)
[エグゼクティブ・プロデューサー]エドワード・マクドネル/ティモシー・バン・パタン
[プロデューサー]真田広之
[脚本]ジャスティン・マークス/レイチェル・コンドウ
[出演]真田広之/コズモ・ジャービズ/アンナ・サワイ/浅野忠信/金井浩人/平岳大/穂志もえか/西岡徳馬/阿部進之介 他
木村奈保子
作家、映画評論家、映像制作者、映画音楽コンサートプロデューサー
NAHOKバッグデザイナー、ヒーローインターナショナル株式会社代表取締役
www.kimuranahoko.com
N A H O K Information
木村奈保子さんがプロデュースする“NAHOK”は、欧州製特殊ファブリックによる「防水」「温度調整」「衝撃吸収」機能の楽器ケースで、世界第一線の演奏家から愛好家まで広く愛用されています。
Made in Japan / Fabric from Germany
問合せ&詳細はNAHOK公式サイトへ
PRODUCTS
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