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情報操作とコメント部隊
SNS時代の危うい問題が表面化している今日この頃。
韓国映画の新作「コメント部隊」は、一人の新聞記者が追及した特ダネのはずだった記事が掲載後すぐに“誤報”とされ、ネットで炎上してしまうところから、物語は始まる。
大手企業が中小企業の技術を盗むという情報から、とことん裏取りまで行っていたにもかかわらず、なぜ、一瞬にして“真実”はひっくり返ったのか?
ネット上では、あっというまに大企業の擁護コメントであふれ、記者に対するバッシングとプライベートまでさらされるはめに……。
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やがて、記者の前に、「事実をひっくり返したネット操作は、自分たちが行なった」と告白する若者があらわれる。
いったい彼らの正体は?
あっというまに白を黒と捻じ曲げる“ネット操作”の方法とは、どんなものなのか?
本作は映画と言うより、実話をもとにした題材であることが興味深いポイント。
韓国、国家情報院の“世論操作事件”を題材にしたチャン・ガンミョン氏の同名小説が原作だ。
登場する謎の“コメント部隊“は、吐く。
「完全な真実ではないが、完全な嘘ではない
嘘が混ざってる方が、真実に見える」
このようなフレーズを聞いていると、いまそこにある危機、兵庫県知事問題に重ねて考えてしまう。
ネットを悪用して、明らかなデマ情報をばらまきながら、正しいものをぶっ壊し、これぞ“真実”と日々、騒いでいる。
いったいこのデマのリーダーや彼を仰ぐコメント部隊は、何のために、誰のためにそれを行なっているのか?
陰で犬笛を吹く存在とは?
映画の中では、コメント部隊を動かす黒幕が明確に現れる。
“コメント部隊”をスカウトするときのフレーズは……。
「この仕事には野生の勘が必要だ。
大衆心理をつかんで、それを利用する。
これが世界を変える方法だ。」
いかにも、県知事選で活躍したトリックスター氏にあてはまるようなセリフだ。
目的のためなら、真実をねじまげても、人を貶めても、手段を選ばない“コメント部隊”はもはや世界中に存在するだろう。
ネットの時代に、ますます真実を知るのが難しくなる時代、私たちは、情報をキャッチしながら、自らの勘と正義感で判断をしなければ、大いなる間違いを犯すことになるだろう。
残念ながら、多くの人々がそこまで真剣に考えたり、感じたりすることなく、仕組まれたコメント部隊にあおられて、洗脳されていく。
兵庫県知事問題は、再任後も解決に向けて、ジャーナリスト、パーソナリティや弁護士たちが、記事やYouTubeで日々、ぶれない情報を発信している。
真実に向かう彼らの対するリスペクトを込めて、映画の主人公のセリフを贈りたい。
「記者の道は孤独だ。
しかし、その勇気は世界を変える。」
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*兵庫県知事問題を考えるユーチューブチャンネル
菅野完チャンネル
子守康範チャンネル
西脇亮輔チャンネル
ドンマッツの反カルト思考チャンネル
郷原信郎チャンネル
MOVIE Information
「コメント部隊」
1/31(金)2月14日(金)よりシネマート新宿ほか全国公開
2024年/韓国/109分/ビスタ/DCP5.1ch/字幕翻訳:福留友子/映倫【G】区分
[原題]댓글부대/英題:TROLL FACTORY
[配給]クロックワークス
[監督・脚本]アン・グクジン
[出演]ン・ソック、キム・ソンチョル、キム・ドンフィ、ホン・ギョン
©2024 ACEMAKER MOVIEWORKS & KC VENTURES & CINEMATIC MOMENT All Rights Reserved.
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木村奈保子
作家、映画評論家、映像制作者、映画音楽コンサートプロデューサー
NAHOKバッグデザイナー、ヒーローインターナショナル株式会社代表取締役
www.kimuranahoko.com
N A H O K Information
木村奈保子さんがプロデュースする“NAHOK”は、欧州製特殊ファブリックによる「防水」「温度調整」「衝撃吸収」機能の楽器ケースで、世界第一線の演奏家から愛好家まで広く愛用されています。
Made in Japan / Fabric from Germany
問合せ&詳細はNAHOK公式サイトへ
PRODUCTS
2コンパート・リュック「Carlito2/wf」
これひとつ!
2コンパート・リュック「Carlito2/wf」(フルート・オーボエ・クラリネット対応)は、Wケースサイズのブリーフサイズ+マチ幅4cmのコンパートメントを追加し、手持ちハンドルをつけないリュック専用型。
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頭部管&ストレート共用 C管アルトフルート(15x50cm)のハードケースやB4譜面も収納可能です。
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