close up| ガスパール・ホヨス 外へ出よ、音楽を届けよう
ハープとのデュオアルバムをリリースした、さん。ハープ奏者でデュオのパートナーでもある東海林悦子さんと共に、リサイタルを行なった。東京公演の当日、リハーサル直前の楽屋にお邪魔した。 ( 通訳:東海林悦子(ハープ奏者)取材協力:白寿ホール、株式会社ドルチェ楽器 )
ハープとのデュオアルバムをリリースした、ガスパール・ホヨスさん。ハープ奏者でデュオのパートナーでもある東海林悦子さんと共に、リサイタルを行なった。東京公演の当日、リハーサル直前の楽屋にお邪魔した。 ( 通訳:東海林悦子(ハープ奏者)取材協力:白寿ホール、株式会社ドルチェ楽器 )
思い込みや制約から自由であること
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- あなたはコロンビアのご出身だそうですね。フルート歴と、どんな音楽環境の中で育ってきたかなど、教えてください。
- ホヨス
- フルートを始めたのは14歳になってからです。コロンビアではフルートを探すのがとても難しくて、父が1週間かけて探してくれたんです。今は違いますが、私が子どもだった80年代は、欲しいものはアメリカなどから探してこないと手に入らなかったものです。楽譜やCDもそうでした。しかし逆に、その環境がいろいろなものに興味を持って探したり、手に入れる努力を教えてくれたのも確かです。 最初にフルートを習ったのはアメリカ人のサラ・ブラウン先生といって、レイモンド・ギヨーに師事した人でした。彼女に教わったおかげで、とても良いスタートを切ることができました。最初からパリに勉強しに行ってレイモンド・ギヨーに教わることが目標でした。
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- コロンビアのクラシック音楽事情は、どんな感じですか? 南米というと、サンバやタンゴ、ボサノヴァ、フォルクローレなど、民族音楽のイメージが強いのですが。
- ホヨス
- そうですね。私もリコーダーで民族音楽を演奏していたのが、笛を吹くという体験の最初でした。楽譜は読まずに、耳で聴いて覚えました。みんなそういう感じで自然に音楽を始めます。私の父もギターを弾きますが、楽譜を読まずに耳で覚えていました。仲間同士でも耳で聴いて覚えた音楽を演奏することが多かったのですが、それが耳を鍛え、リズム感を養うことに繋がったと思います。
いわゆる中流階級や上流階級の人々は、ヨーロッパの文化を取り入れることがステイタスであり、クラシック音楽を非常に大切にする空気がありました。国立大学の中にとても大きなホールがあって、毎週金曜日と土曜日にコンサートをやっていますが、安い料金で入れることもあっていつも満席になります。それを見ていると、教養ある階級だけがクラシック音楽を聴いているわけではなく、一般の人たちも興味を持って聴いているのだということがよくわかります。 - ――
- 今回のリサイタルのプログラム、そしてリリースされたアルバムの収録曲とも、南米ゆかりの作曲家の作品をたくさん取り上げていますね。
- ホヨス
- (デュオのパートナーでハープ奏者の東海林悦子さんと)二人で相談しながら、普段よく耳にするクラシックの曲とは違うレパートリーを考えました。音楽家にとって、新しいものを作り上げていくことは一つの役割だと思うのです。現状では残念ながら、コンサートで同じような曲ばかりが演奏されるのを見ることが多い。アーティストの役割は、まずレパートリーの面でリミットを作らないことです。それから、大きいコンサートホールでばかり演奏しなければいけないという思い込みも取リ払うべきです。いろんな制約から自由でいることが、使命だと思うのです。コンサートは聴きに来たお客さんに笑顔になって帰ってもらわなければ、意味がありません。
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- リサイタルの曲目にもCDにも入っている『マルバロカ』という曲には、思い入れがあるそうですね。
- ホヨス
- ええ。ルイス・アントニオ・カルボはコロンビアの作曲家なんです。ロマンティックでナイーブな感じの作風で、ピアノの作品をメインに書いています。この曲は何度も演奏してきましたが、今回は自分で編曲をしました。カルボは、多くの作品のタイトルに女性の名前を冠しています。きっと、ロマンチストな彼はいろんな女性に恋をして、好きな人ができるたびに作品を書いていたのではないかと思います。ただ、「マルバロカ」というのは花の名前ですが。野生の、ちょっととっぴな花なんです。この花の名前をつけたということは、よほど好きな女性ができて、狂おしいほどの恋をしたということを表しているのだと思います。
※雑誌の一部を掲載しています。全文は本誌164号にてお楽しみください。
プロフィール
Gaspar Hoyos
フランス、ナンシー歌劇場交響楽団のトップフルート奏者。1998年、ジャン=ピエール・ランパル国際フルートコンクール、マルクノイキルヘン国際器楽コンクール(ドイツ)、1995年、NFAフルートコンクール(米)などで受賞したのをきっかけに各国でデビュー。室内楽の奏者としても活躍しており、特にナンシー歌劇場交響楽団のメンバーを中心に室内楽グループ“「ウルティマソナタ」を結成し、20世紀、21世紀の現代作品を発表し続けている。2011年にはベネズエラのカラカスで行われたジョン・コリリアーノ音楽祭において、国家音楽財団エル・システマから招聘され、作曲家コリリアーノ自身立ち合いのもと、幻想曲「ハーメルンの笛吹き」を演奏。また、教育者としても認められており、定期的にアメリカ、コロンビア、ペルー、クロアチア、フランス、日本、台湾などでマスタークラスを行ない、毎年夏にクロアチアで講習会を10年間に渡って企画している。ボストンのニューイングランド音楽院でポーラ・ロビソン、そしてパリでレイモンド・ギヨーに師事。またランパルがこの世を去る前に貴重な教えを受けた最後のフルート奏者である
New Album
「Canción カンシオン〜歌〜」
(ALCD-9179)
【演奏】(Fl)ガズパール・ホヨス、東海林悦子(Hp)
【価格】¥2,500(税別)
【曲目】マーク・ベルトミュー: 5つのニュアンス、エリック・サティ: ジュ・トゥ・ヴ 〜あなたが欲しい、ジャン=ミシェル・ダマーズ: 5拍子のパヴァーヌ、ほか