【第1回】齋藤寛Presents 録ってもデュエッツ「ハトと少年」
自分の音に自分で音を重ねてアンサンブルすることで、自分の演奏をふり返り、上達をめざしていく企画です。“録って”“デュエット”するから“録ってもデュエッツ”。難しく考えず、スマホなどで簡単に録音してデュエットしてみましょう。 スタジオジブリの映画を彩る楽曲の中から、毎回1曲ずつを選曲していきます。自分と2重奏しながら、基礎的な練習方法や演奏のポイントなどを学んでいきます。
自分の音に自分で音を重ねてアンサンブルすることで、自分の演奏をふり返り、上達をめざしていく企画です。“録って”“デュエット”するから“録ってもデュエッツ”。難しく考えず、スマホなどで簡単に録音してデュエットしてみましょう。
スタジオジブリの映画を彩る楽曲の中から、毎回1曲ずつを選曲していきます。自分と2重奏しながら、基礎的な練習方法や演奏のポイントなどを学んでいきます。
ONLINEだけの"とってもコラム"も毎回更新します。動画と一緒にお楽しみください♪
第1回目の曲目は『ハトと少年』。「天空の城ラピュタ」に登場する、トランペットの高らかな響きが印象深い1曲です。
今回は、セルフレコーディングのやり方を説明する「準備編」動画も用意しましたので、まずはこちらから見てみてください。
Chapter01:準備編
Chapter:02
“世界一気が合わない人”とのアンサンブル
自分の演奏を聴いた感じってどうでしょう?思った通りでしたか? 私は自分の演奏を聴くのは本当に嫌でした。まったく思い通りじゃない。最初に「誰これ?」って。聴くたびに「なんて下手なんだろう!」って、反省よりも前に拒否反応が出てしまうほどに寒気のするものでした。
まず、音です。ボサボサのスピスピのザラザラの、全然イメージしているフルートの音とはかけ離れた「雑音」が聴こえてきます。「こんなはずじゃないんだけど……もう少し上手く吹けてるはずなんだよな~」と、何度挑戦しようとも曲を変えようとも同じことで、挙句の果て機材のせいにし始め、「やっぱり安いマイクがいけなかったのかな? 出力がチープなスピーカーだったから?」とか、中古で買ったマイクとラジカセに疑念が湧いてきます。
そこで、マイクを高性能のモノに、スピーカーをいいモノに変えるともっと良くなるはず!と、思い込み練習そっちのけでカタログとにらめっこしながら、再生・録音周波数帯やスペックをチェックしたりして、予算内で機材を揃えることに一心になったりして。
熟考の末、密閉型のスタジオヘッドホンと8チャンネルのトラックレコーダー(MTR)、コンデンサーマイクを買い揃えることに。
そして、お目当ての機材を揃えたところで、いざ再挑戦。だがしかし!なおのこと「いい音」で拾ってくれるわけで、悪いところから悪いところまで「キレイに」録音されているわけで、さらにアラが目立ってしまって、結局いっそう落胆してしまうのです。いやこれは録音場所のせいだ、と広い練習室で録音しても、響く風呂場で録音しても、最終的にはイコライザーで周波数をイジり、リバーブやらコーラスやら片っ端からエフェクターで響きを調整しても、ダメなものは何をやってもダメなんですね。
いえ、気づいていましたよ。そんなの。結局自分なんだって。ここまで色々とコンクールも受験も卒業後の演奏も頑張ってきたし、認めたくなかったけれど、こんな下手な演奏を聴いてしまったら認めざるを得ないでしょ。それまでレッスンを受けた先生方の教えに感謝しつつ、その惰性だけで演奏していてはいけないと気づいたんです。自分も確かな「耳」を持たないといけません。尻が重くて強情なので、時間がかかりました。
だからそれが、Youtubeに投稿を始めた7年前の一念発起です。音楽家として生きるなら、ちゃんと自分と向き合わないといけません。そして今自分の演奏している音に責任を持たないといけません。本来ならば、その場で音を確認し、修正しながら演奏できれば理想でしょう。でも大体において「客観的な耳」はどこかに行ってしまっているんですよね。私の「客観的な耳」はといえば、機材のせいにするくらいですから、はるか彼方にありましたよ。それが、身も凍るほどに実際に思っている演奏と録音された演奏のギャップに感じたんですね。
最初の頃は心が折れそうになると思いますが、このギャップを縮めること、自分というプレイヤーを自分でプロデュースするように弱点や悪い癖に気づいて直していきましょう。
そして、これが一番重要な点。多分世界一気が合わない人、「自分」。その「彼(彼女)」と「アンサンブル」することで自分しか気づけないことに気づくことができるんです。アンサンブルの相手としたら、本当にいろいろな注文が出てくると思いますが、それ、「あなた」ですからね。
慣れてると面白くなってくるので是非たくさん録音して、たくさんアンサンブルしてみてください!
それではまた、次回お会いしましょう!
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第1回:準備編(録音方法)&「ハトと少年」天空の城ラピュタより
齋藤 寛 (さいとう・かん)
東京芸術大学卒業。フルート奏者、作編曲家。2011-2014年ザルツブルクモーツァルテウム音楽院マスタークラスにてP.L.グラーフ氏に師事。京都フランスアカデミーおよびパリにて室内楽をクリスチャン・イヴァルディ氏に師事。2013年「あまちゃんスペシャルビッグバンド」参加。フルート四重奏「宵待小町」主宰。主な著作「フルートデュオ名曲集25」、「ディズニーソング・デュエットコレクション」、「ジブリメロディー集」等。
齋藤寛