【第5回】新・国産フルート物語 4代にわたって受け継がれる歴史 ームラマツフルート
今回は、村松フルート製作所社長・村松明夫氏と、同相談役・曽根勝氏にインタビュー。日本のフルートメーカーの中では最も歴史が古く、100周年を目前に控える同社。“世界のムラマツ”となるまでの歴史を振り返りながら、現在のムラマツフルートがたどってきた道のり、そしてこれからについても聞いた。
本誌THE FLUTE vol.166より新たに連載がはじまりました「新国産フルート物語」。THE FLUTE Club会員限定でオンラインでもご紹介します。
アルソ出版社内にたった1冊だけ残る、貴重な1冊
1998年に刊行された書籍『国産フルート物語』。日本のフルートメーカーを丹念に取材し、トップメーカーから個人経営の工房まで、その黎明期から現代に至るまでの歴史と道のりをつぶさに書き連ねた貴重な記録だ。しかし現在はすでに絶版となっており、社内にある在庫もたった1冊のみ。20年の時を経ているだけに、このままでは風化し埋もれた存在になってしまうという危機感もある。世界中にその品質が認められるようになった現在の日本産フルート——ここまでそれらを先導してきた技術者たちと、メーカーや工房のあけぼのを知る人々も高齢化し、またすでに亡くなった人もいる。
そんな今、あらためて日本のフルートとそれを創り支えてきた人々の足跡を記すべく、「新・国産フルート物語」としてあらためて記録を残しておきたい。さまざまな国内メーカーが創業50年の節目を迎えるこの時期に、“日本で唯一のフルート専門誌”であるTHE FLUTEの使命の一つと考え、新たなフルート物語を紡いでいく。
前回は、ムラマツフルート(村松フルート製作所)から独立した人々のエピソードを紹介した。今回は、村松フルート製作所社長・村松明夫氏と、同相談役・曽根勝氏にインタビュー。日本のフルートメーカーの中では最も歴史が古く、100周年を目前に控える同社。“世界のムラマツ”となるまでの歴史を振り返りながら、現在のムラマツフルートがたどってきた道のり、そしてこれからについても聞いた。
(取材協力:村松フルート製作所)
第5回:4代にわたって受け継がれる歴史——ムラマツフルート
村松フルート製作所社長・村松明夫氏(右)と、同相談役・曽根勝氏(左)
村松明夫氏
ありがたいことにもうすぐムラマツフルート100周年になりますが、これまでの社歴上、いつも順調に引き継ぎができずにきたわけですよね。初代の孝一は急に亡くなって、私の父もそこまで急ではないにしろだいぶ早逝しましたし。曽根さんもそうだったと思いますが、師匠がいなくなって、残された人たちが工夫しながらやってきたから頑張れた、ということを繰り返してきた会社なんです。
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