ボサノヴァ生誕60周年!本格ボサノヴァをフルートで演奏しよう!
ボサノヴァ生誕から今年で60周年!街で耳にすることも多く身近にある音楽ですが本格的に演奏をしたことのない人も多いのではないでしょうか?今回はそんなボサノヴァの魅力をお伝えすべく歴史から聴くべき名盤、お洒落に演奏するポイントや毎日の練習法まで特集しています!
60周年のいまだから、本当のボサノヴァが知りたい!
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『ジャズはかっこいい音楽、ボサノヴァはおしゃれな音楽』と、ある雑誌のインタビューの中でボサノヴァ歌手小野リサ氏がお答えされています。名言だと思います。
ボサノヴァ〔Bossa Nova〕はブラジル・ポルトガル語で「新しい感覚」といった意味で、ブラジルのサンバ、サンバカンソン(サンバのバラード)などのリズムと、ジャズやクラシックのハーモニー感覚がミックスされて生まれました。近年の日本においては、カフェやレストランのおしゃれなBGMとして使用され、いたる所で耳にすることができるほどに普及してきています。
新しい音楽の誕生
1958年にアントニオ・カルロス・ジョビンが作曲、ヴィニシウス・ジ・モライスが作詞した『想いあふれて』という曲が、最初のボサノヴァだといわれています。
歌手でギタリストのジョアン・ジルベルトがその後録音し、また同じ年にセカンド・シングルの『デサフィナード』もリリースされました。これはジョビンとニウトン・メンドンサの共作で、その歌詞の中に初めて“Bossa Nova”という言葉が出てきます。
ブラジルの若者たちが従来の音楽に満足できずに、新しい音楽を求めていたときに現れたのが、ジョアン・ジルベルトでした。彼は歌手になるためにリオへ出ましたが、うまくいかずに数年で放浪の旅に出た後、自分のスタイルを完成させてリオに戻ってきました。それが大歓迎を受け、一大ブームとともに誕生したのがボサノヴァという音楽でした。
ジルベルトは何日間もバスルームにこもり、ギターを鳴らして試行錯誤した末に、それまでになかったスタイルのギター奏法を生み出しました。サンバやジャズの要素を含みつつ、独特なリズムや曲調を持つ音楽。「ボッサ」とは“素質・傾向”、「ノヴァ」は“新しい・独自の”という意味を表します。
アメリカのボサノヴァ旋風
作曲家のアントニオ・カルロス・ジョビンは、ジルベルトが現れる少し前から独自の音楽を完成しつつありました。そしてジルベルトと出会ったことにより、インスピレーションを得て新たな音楽を完成したのです。
1959年にはリオの大学のキャンパスで初のボサノヴァフェスティバルが開催され、ボサノヴァはリオの若者文化の代名詞となるまでになっていきます。63年にはジルベルトがアメリカのサックス奏者スタン・ゲッツと共演した「ゲッツ/ジルベルト」が制作され、アメリカで大ヒットしました。アメリカにもボサノヴァ旋風を巻き起こすきっかけになったのです。
ブームの象徴『イパネマの娘』
ボサノヴァになじみがない人でも、どこかしらで聴いたことがあるボサノヴァナンバーに、『イパネマの娘』があるのではないでしょうか。この曲にまつわる有名なエピソードがあります。
1962年のボサノヴァブーム真っ只中に、ジョビンとモライスがイパネマ地区のレストランにいる時に前を通り過ぎていった15歳の少女・エロイーザの美貌に魅入られ、その場でこの曲を完成させた――というもの。
このエピソードは少々誇張されているという説もあります。が、この曲をジルベルトの妻アストラッドが英語で歌い、先に紹介した「ゲッツ/ジルベルト」に収録したところ、世界的なボサノヴァブームを象徴するヒットとなったことは間違いありません。
ボサノヴァが誕生して60年。民衆や若者の文化から自然発生してきた音楽が多い中、創始者や起源がはっきりしているところもまた、ボサノヴァという音楽の面白さなのかもしれません。
参考資料
「ボサノヴァの歴史」(ルイ・カストロ 著、国安真奈 訳/音楽之友社刊)
「音楽でたどるブラジル」(Willie Whopper 著/彩流社刊)
WAVE
Antonio Carlos Jobim
おいしい水
Astrud Gilberto
想いあふれて
Joao Gilberto
マシュ・ケ・ナダ
セルジオ・メンデス&ブラジル’66
O AMOR O SORRISO E A FLOR
Joao Gilberto
Dippin’
Hank Mobley
Brasamba!
Bud Shank 、Clare Fischer 、Joe Pass
イパネマの娘
Antonio Carlos Jobim
ボッサ・カリオカ
小野リサ
ぜひともレパートリーに加えたいボサノヴァ。ただ、いざチャレンジしてみると、譜面の通りに吹いているはずなのになかなかカッコ良くならない……そんな悩みを持つ方も多いのでは?
ボサノヴァをフルートで演奏するために必要な要素について、今回は、THE FLUTEでの連載や多くのボサノヴァ関連著書でおなじみの大久保はるか先生による教則&曲集「はじめよう! フルート de ボサノヴァ」と、公開中のレッスン動画(全6回/定額オンライン会員限定)より、大きく4つのポイントにまとめてご紹介します。
フルートでボサノヴァをおしゃれに演奏するための基本ポイント
リズム / アンティシペーション / コード&スケール / メロディフェイク&アドリブ
1、ボサノヴァのリズムを覚えよう
「ボサノヴァの魅力のひとつは、ギターが支える一種独特な浮遊感のある不思議なリズムにあるとも言えます。(中略)フロント楽器であるフルートの役割としては、ギターやパーカッションのバッキングに乗って、ボサノヴァのフィーリングをリズム隊とともに上手く表現しなければなりません。ロックや2,4拍が強拍となるジャズとは異なる、ボサノヴァ特有のリズムやグルーヴを身につけましょう。」(曲集より抜粋)
O Grande Amor イントロ部分
「はじめよう! フルート de ボサノヴァ」の付属CDにはギターとパーカッションの生演奏を収録しています。 「ボサノヴァの基本的リズムに乗って心地よく演奏するためには、付属CDを活用してボサノヴァ・ギターとパーカッションのサウンドに耳で慣れていくことから始めるとよいでしょう。(大久保はるか)」
2、「アンティシペーション」に慣れよう
「ボサノヴァには特有のシンコペーションがあります。16分音符ひとつ分前のめり(先取り)に奏するこの技法は、いわゆる裏打ちのシンコペーションとは区別され、アンティシペーション(anticipation)と呼ばれています。ボサノヴァを演奏するにあたって、このアンティシペーションに慣れ親しんでおく必要性があります。」(曲集より抜粋)
曲集内では、誰もが知る名曲「イパネマの娘」のテーマメロディを使ったエクササイズを掲載しています。付属CD音源に合わせて楽しみながら練習しましょう。
3、コードネームとスケールを覚えよう
これまでクラシックを中心に演奏してきた方の中では、コードネームに苦手意識を持っている方も多いと思います。 そんな方のために、本書では「コードネームとは?」と題して、コードの読み方や成り立ちを分かりやすく解説。また、主要なコードネームの一覧を掲載しているので、忘れてしまってもすぐに戻って復習することができます。さらにコードネームをボサノヴァのリズムに合わせてアルペジオとスケールで吹いてみましょう。この実践的エクササイズで、第二章のメロディフェイクやアドリブ作成に、無理なく楽しくつなげていきましょう!
アルペジオ練習トラック in Major Key
4、ボサノヴァ演奏の醍醐味、メロディフェイクやアドリブを楽しもう
「歌の場合には、歌詞が1番、2番(それぞれファーストコーラス、セカンド・コーラスと呼びます)と付くことにより曲に変化をもたらしますが、フルートなど楽器で演奏する場合はときにセカンド・コーラスより先はメロディ・フェイク(メロディを楽譜通りではなく、リズムをくずしたり自由に装飾して演奏すること)やアドリブ(主にジャズなどのソロ演奏で即興的に演奏すること)を行なうことで曲に変化を生み出します。これらはその時々の奏者の判断で自由に行なうため、ポピュラー音楽を演奏する人にとって、大きな醍醐味の一つとなっています。」(曲集より抜粋)
本書には、難しいと思われているアドリブを気軽に作成することができるヒントをたくさん掲載しています。 「このコードの時には、この音を使っておけばだいたいOK!」というスケールを記してあるので、例えば、大久保さんのお手本演奏から気に入ったリズムを拝借して、スケールの音を当てはめていけば、あら不思議!自分なりのアドリブが出来上がり!!
最初は真似でも良いんです!そこに装飾音符を加えてみたり、何種類か作ったフレーズをつなぎ合わせてみたり……。そうしながら自分オリジナルのフレーズを見つけて、育てていきましょう!
5、お手本演奏を聴いて真似してみよう
その後、いろいろなボサヴァのCDなども聞いて参考にするのもいいですね。大久保はるかさんの模範演奏CDをしっかり聴いて、メロディやアドリブ演奏の際のリズムやニュアンスをつかみましょう。
「より洗練されたアドリブを演奏するためには、いわゆる「聴き込み」と言われる作業も大切な要素です。できるだけたくさんの音源を聞き、耳を肥やし、ご自身のフレーズ作りにお役立てください。」(曲集より抜粋)
いかがでしたか?ボサノヴァ奏法の基本的な考え方を理解するだけで、グッと演奏が変化するのではないかと思います。ぜひチャレンジしてみてくださいね♪
「はじめよう! フルート de ボサノヴァ」
「メロディフェイクやアドリブについて、もっと知りたい」
「アドリブとかスケールって難しそうで……」
「どうせチャレンジするならとことん本格的な演奏を目指したい!」
「はじめよう! フルート de ボサノヴァ」は、これからボサノヴァフルートにチャレンジしようとしている方にオススメの教則&曲集です。基本からアドリブまで、ボサノヴァフルート演奏に必要な要素がすべて網羅されています。
コードに馴染みのない人でも分かりやすい解説。さらに付属のCDでは大久保先生の模範演奏のあとにフレーズを練習できる「アルペジオとスケールの練習」を掲載。ボサノヴァのリズムに合わせててアルペジオとスケールを習得できます。日々の練習に取り入れてアドリブに挑戦しましょう!
この一冊をマスターすれば、ボサノヴァ演奏がカッコ良くキマるだけでなく、ジャズやポップスにも応用できるはず!演奏ジャンルの幅を広げたいとお考えの方必見です。
特徴
・付属CDはフルート、ギター、パーカッションによる生演奏(模範演奏&カラオケ)を収録。
・吹いて聴いて上達できる!大久保先生のお手本を聞いて練習できるCDの練習トラック。
・アドリブ、メロディフェイクをイチから楽しく学べる、基礎練習&名曲アナリーゼ
・「アドリブなんて無理!」という方でも、より簡単にスケールを理解できる「オオクボ流トラの巻」
・楽譜にはリードシートを掲載。最終的には自身のオリジナルアドリブが完成!
大久保はるか