THE FLUTE ONLINE 連載 「岩崎花保のハッピーフルートライフ」
第14回 インタビュー編《オーケストラ奏者に聞く》vol.2 神田勇哉
オーケストラ奏者として活動するフルーティストの方々にお話を聞いていくシリーズ。第2回目は、東京フィルハーモニー交響楽団の首席奏者・神田勇哉さんをゲストにお迎えいたしました。
オーケストラ奏者として活動するフルーティストの方々にお話を聞いていくシリーズ。第2回目は、東京フィルハーモニー交響楽団の首席奏者・神田勇哉さんをゲストにお迎えいたしました。
フランス留学で得たこと
岩崎
神田さんは芸大を卒業された後パリに留学されていますが、何年間行かれていたのですか?
神田
2007年から2010年までの3年間を、パリで過ごしました。マグナムトリオの梶原くんとも1年だけ被っています。
岩崎
そうなんですね! ちなみに、このインタビューでマグナムトリオのメンバーのインタビューコンプリートです!パリでの学生生活はいかがでしたか?
神田
日本にいた時よりも時間がたっぷりあったので、たくさん練習することができました。それから、演奏会にもパリでは数えきれないほど行くことができましたね。学生券がとても安いし、「留学している間になるべく聞きに行こう!」という気持ちもあったので……。
岩崎
留学されていた方にお話を聞くと、皆さん演奏会にたくさん行けてよかったっておっしゃいますよね! その環境は本当に羨ましいです。神田さんはパリに永住したいなとは思わなかったですか?
神田
それは思いませんでした。元々、パリで学んだことを持って帰って日本で仕事がしたいと思って留学をしたので、永住という選択肢は浮かばなかったですね。それに実際向こうで生活をしていく中で、改めて自分の考え方は日本人なんだなぁ~と感じましたし、そういう違いを感じながら向こうで仕事をするのは難しいなと思いました。
岩崎
違う文化の中に身を置くというのは簡単なことではないですよね……。
神田
そうですね。でもずっと日本に住んでいたら感じることも考えることもなかったと思うので、留学をしてよかったなあと思います。
意見は“違って当たり前”
神田
そうそう、パリに限らずですが、ヨーロッパの学生ってしょっちゅう門下の先生と討論しているんですよ。
神田
揉めているわけではないんです。基本的にみんな意志が強いので、先生に「そこはもっとこういうふうに」と言われたらそのままハイとは答えないで、「私はそうは思わないんですけど、なんでそうしないといけないんですか?」と質問をしている感じですね。
岩崎
なるほど~。日本だとあまり見ない光景ですよね。
神田
そうですね。僕なんかはいろんな人の意見を取り入れて成長したいなと思うタイプなので、先生に何か言われたらとりあえずそれをやってみようと思うのですが、留学先ではあまりそういう人はいませんでしたね。普段から討論をしているので、レッスンでもそうなるのは当たり前という雰囲気でした。
岩崎
日本人は意見を言うのをためらう人が多いので、本当に真逆ですね。
神田
人と意見が違うのが当たり前という感覚なんでしょうね。あと少し話が逸れますが、みんなあまり基礎練習をしないです(笑)。やっぱり日本人ってまじめなんだな~と思いました。
フランスのオーケストラと日本のオーケストラ
岩崎
フランスのオーケストラと日本のオーケストラの違いを感じたことはありますか?
神田
はい。日本人は先ほども話したように、まじめな人が多いし空気を読む力も強いので、合わせる能力というのはとても高いと思います。点数に例えるとすると、常に95点の演奏ができるような感じです。逆にフランス人は個人の主張も強いですし、合わせるのは難しいのですが、たまに99.9%揃う時があるんですよね。あれは本当に不思議でした。育ってきた環境や感じてきた空気、考え方などいろいろな要素が相まって、そういう瞬間が生まれるのかなと思いますね。
岩崎
逆にフランス人から見ると、日本のオーケストラはいつも揃っていて完成度が高いなぁと思われているかもしれないですね。
最初が肝心
岩崎
神田さんが普段オーケストラの仕事で心掛けていることはありますか?
神田
僕は初日のリハーサルを大事にしています。本番、お客様に対して最高のパフォーマンスをするためには、団員との信頼関係を築くことが大切だと思うので、緊張感をもって現場に行っています。
岩崎
オーケストラは、当たり前のことですが一人で演奏をするものではないですもんね。
神田
そうですね。「お、神田今回も気合入っているな」と思ってもらえるように、これからもたくさんの演奏を聴き、勉強をして音楽と向き合っていきたいなと思います。
岩崎
本日は貴重なお話をお聞かせくださり、ありがとうございました。
私の連載の中で、今までに2回YouTubeの動画を使った記事を出しているのですが、神田さんもYouTubeに演奏動画の投稿をたくさんされているので、今回特別に動画でもコラボレーションをさせていただきました!
あわせてお楽しみください。
▶F.Couperin Duoクープラン:デュオ
▶おもしろヘッドジョイント紹介!【前編】
▶おもしろヘッドジョイント紹介!【後編】
神田勇哉 Yuya Kanda
東京フィルハーモニー交響楽団首席奏者、マグナムトリオメンバー。東京藝術大学を首席で卒業後、文化庁海外派遣研修生として渡仏。パリ地方音楽院、エコール・ノルマルにて研鑽を積む。これまでにアンサンブルofトウキョウ、芸大フィルハーモニア管弦楽団、カメラータ・ザルツブルグ、チェコフィルハーモニー弦楽三重奏団、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団、東京フィルハーモニー交響楽団と共演。ソリストとして日本各地、ソウル(韓国)、マンチェスター(イギリス)、トロント(カナダ)、サンクトペテルブルク(ロシア)にて演奏。日本、フランスのコンクールにて優勝および入賞。
岩崎花保 Kaho Iwasaki
愛知県豊田市出身。
第15回日本クラシック音楽コンクール中学校の部全国大会第1位。
第61回全日本学生音楽コンクール高校の部全国大会第1位。
第13回万里の長城杯国際音楽コンクール管楽器部門第1位をはじめ、様々なコンクールで入賞。
2012年豊田市文化振興財団より文化新人賞受賞。
小澤征爾音楽塾、浜松国際管楽器アカデミー、ロームミュージックファンデーション音楽セミナーに参加。
NHKのクラシック音楽番組「ららら♪クラシック」や「スコラ」などに賛助出演し、人材派遣の協力もしている。
学生時代から古楽の世界にも興味を持ち、トラヴェルソ奏者としても活動しているほか、朝♪クラ音楽ディレクター、コラムライター、コンサートの企画運営など、演奏以外の仕事もボーダーレスに行っている。
東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校、東京藝術大学を卒業。
同大学大学院音楽研究科修士課程器楽専攻を修了。
2019年より東京藝術大学管打楽科の非常勤講師として藝大ウィンドオーケストラの授業を担当している。
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