フルート記事 第23回|「The Sheltering Sky」
  フルート記事 第23回|「The Sheltering Sky」
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kokoro-Neがお届けする〜フルートで彩る フィギュアスケートの世界〜

第23回|「The Sheltering Sky」

こんにちは! 2本のフルートとピアノのトリオ、kokoro-Neです。
続々と新プログラムや新体制が発表されて楽しみなシーズンが始まりました。5年目となるこのコーナーの初回は、4月に競技を引退した髙橋大輔さんのシングル復帰のSPでもあり、3月に惜しまれつつ亡くなった坂本龍一さんの名曲「The Sheltering Sky」を取り上げます。

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映画『The Sheltering Sky』

第2次世界大戦が終了して間もない1947年。倦怠期の夫妻が互いの関係を見つめ直す旅(?)のとして、ニューヨークから北アフリカにやってきました。なぜか、夫の友人(男性)も同伴(゚∀゚)(夫婦+男1のトリオなんて、そもそも……ていうツッコミは我慢です(笑)。

ポート(夫)♡現地の娼婦(しかもグルの男たちに追っかけられて危ない目に遭う)
キット(妻)♡タナー(同伴の友人)

結局、不倫(・o・)
不幸な出来事も続く中で、お互いの大切さに気付くも……というあらすじをあちこちで読んでしまい、実は映画は見てなかったのですが、今回ついに観ました、映像とサントラが美しいです!!(映画の見方は人それぞれだから難しいですね)

タイトルの「The Sheltering Sky」は、「その向こうにある暗い虚無から守ってくれる空」という意味だそうです。確かに劇中でも、現地の人(黒)と⇔キットたち西洋人(青)の瞳の違いがアップで印象的に映し出されていました。
【植民地だったアフリカ⇔戦時中に自国領土は割と被害がなかった欧米】という対比もあって、考えどころはあるなぁ、と感じた作品です。

2018年 SP「The Sheltering Sky」

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演技開始に立った瞬間にプログラムの世界観が広がる、いやもう6分間練習でリンクに入った時点でオーラがハンパないです!

演技開始直後に、繊細なピアノソロの音色に載せてピボットで円を描いただけで、映画の中の虚無感やはかなささえ滲み出るような……ソチからシングル復帰までの間に、ダンスや歌舞伎とのコラボをした経験が上乗せされ、表現力がさらに神がかっています。一歩一歩が滑らかで美しい! 助走という感じがまったくなくて、音楽がずっと密着して見えます。1コーラス目のフレーズ終わりにピタッと合わせるように1本目の3アクセルがフワッと決まります。

曲は2コーラス目に入り、ピアノの8分音符のフレーズにヴァイオリンの中音でロングローンが加わります。大ちゃんの伸びやかなスケーティングと音楽が、お互いを表現し合っているようでたまりません。2本目の3フリップ+3トゥループ連続3回転ジャンプまでの間、ターンなど美しい上に、手や腕の動きが繊細で一瞬たりとも目が離せません!

この間に、ヴァイオリンがじわじわと音域を上げていて、3コーラス目の上がりきったところでスピン。あえてレベル3に落としていたそうなのですが、足替えやポジションの変化に添えられた腕〜指先までの繊細さが美しくて、1回転ごとに泣けてきてしまいます。音楽的な熱量の高まりと同時に、3ルッツに向かいます。聞き飽きたかもしれませんが、ここがまた助走じゃなくて……なんなら大ちゃんのジャンプに入る前が好きです♡

バラバラだったピアノとヴァイオリンの動きが合流して、曲調が重苦しい雰囲気に変わった所で3ルッツとスピン。ここで音源が編集されていて、原曲の3拍子の部分が丸ごとカットされています。

曲は終盤の1コーラスのちょっと手前、一旦テンションが落ちた緊迫感のある所まで飛びます。その間に、大ちゃんが例のポジションに移動します。「世界一のステップが始まるよ!」のあの位置です!!(≧∇≦)b
リンクを突っ切るその姿は「あぁ、こういう演技が見たかったのよ!」という感じです。特に、ヴァイオリンとチェロがユニゾンになった「シ♭ラドシ♭レー」の、音ハメを超越したマリアージュ。ここまで表現してくれるのか!という感じです。

私がすごいな、と思ったのが最後の1コーラスが終わった後のトレモロが連続する部分です。教授作品に割とある終わり方で、演奏者としては「こんなにトレモロ続けてどうすっかなぁ……」と困ってしまうこともあります。大ちゃんの演技は、和音5つ分のトレモロを、大きめのターン→動き徐々に小刻み→最後はツイズル、と和音の変化まで表現するようにぐいぐい進み続けます。「こういう感じで迷いなく演奏すればいいのか!」とこちらが気付かされてしまいました。天晴れ! ラストは音楽も静かで重厚に終わっていきますが、そこにかけてのスピン、最後のポーズ、うっとりです。

アイスダンスからの引退会見で「膝が……」という話がありましたが、どれほど多くの人々が「私のでよければどうぞ(๑ノ>ω<)ノ」と思ったことでしょう(T_T) ソチまでの現役時代で十分過ぎるほど、楽しませてもらった上に、男子シングルで現役復帰からアイスダンスへの転向、そして生まれた名プログラムたち。こんなに幸せな思いができると思いませんでした。改めてお疲れ様&ありがとうございました。そして、今後の活躍も楽しみにしています。

坂本龍一

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第17回「春よ、来い」 にも書いたように、自称ユーミン育ちが故、バックで弾くこともあった細野晴臣さんのベースに惚れ、YMO及び坂本龍一さんに行き着きました。私たち世代は『NHKみんなのうた』の「コンピューターおばあちゃん(※)」が出会いだった方も多いかもしれません。

他のミュージシャンへの曲提供含め、ご紹介するまでもない名作がたくさんあります。アレンジへの耐性というか柔軟性が脅威的で、ピアノソロ版、弦楽器入り、オケ編成、YMO版、ヴォーカル入り……など、1曲でも違いを聴き比べるだけで夜更かしできてしまう魅力があります。

今日現在の個人的ハマりものはこの辺↓
・大貫妙子さんとのコラボ作品
・「BEHIND THE MASK」のマイケル・ジャクソン版(だいぶソウルフル)と、そのデモ版(←ドラムが幸宏さんのコピーみたいで笑っちゃうくらい萌えます)
・高橋幸宏さんに提供した『エラスティック・ダミー』。曲もエレピソロも圧巻です!(細野さんのベースも垂涎もの)

kokoro-Neでもまだまだ演奏したい曲がたくさんあるので、いつかお披露目を、そして長く演奏し続けて、名言「芸術は長く人生は短し」を体現できたらと思ってます。

※作詞・作曲は伊藤良一さん、補作曲と編曲・プロデュース、ドラム以外を教授が担当しています。ドラムは盟友の高橋幸宏さん。当時は気づかなかったけど、PVでも、コンピューターのモニターに「I LOVE YOU・・・YMO」というテロップが流れています。

 

楽譜のご紹介

フルート、アルトフルート(または2本のフルート)とピアノのための「The Shelterinng Sky Theme」はこちらです。

「The Shelterinng Sky Theme」for Flute, Alto Flute (or 2Flutes) and Piano / Ryuichi Sakamoto

https://kokoroneshop.thebase.in/items/78879088

演奏動画

kokoro-Ne YouTubeチャンネル
 
 

原曲の美しさを出せるように、弦のラインなど何回も聴き直して仕上げました。オプションで収録されている2ndのパート譜も、単なる移調ではなく音色に合わせて音域を調整しました。フルート2本はもちろん、ラストのトレモロの奏法だけ工夫していただければ、フルート以外の楽器でも演奏できると思います。色々な場面でご活用いただけると幸いです。

おかげさまでkokoro-Ne Libraryも6周年を迎えることができました。今回はメルマガ会員様限定のクーポンを、このコーナーをご覧の皆様にもプレゼントいたします。これまでにご紹介した楽譜にも是非ご利用ください。

【クーポンコード:3YBL9GVE】お買い物の際にコピペで入力してご利用ください。

コンサートのお知らせ

「生湯がビートルズ」「ユーミン育ち」と言いながら、クラシック、シャンソン、タンゴ、映画音楽、邦人作品……と、ここまでの23回で「この人たちの感性、どうなってんの?!」と思われた方……大正解です!(//∇//) 音楽嗜好雑食の田仲&もはや節操ないまでに聴き散らかす大和田が、クラシックから歌謡曲までなんでもお任せ!な歌手お二方とご一緒させていただく夢の企画です。お気軽に聴きにいらしてください。

コンサートサロンALKAS 自主企画 第18回演奏会〈大和田真由プロデュース〉
アルカス気ままにコンサート
[日時]2023年10月29日(日)14:00開演 (13:30開場)
[会場]コンサートサロンALKAS(JR「西船橋」より徒歩5分)
[出演]加藤義男(Ten)、伊藤邦恵(Sop)、田仲なつき(Pf)、大和田真由(Fl,Arr) ※門井はお休みです
[料金]¥3,000(税込、全席自由)
[プログラム]「オペラ座の怪人」ハイライト版、「夢」(トスティ)、「小さな木の実」、『鉄道組曲』(信長貴富)より「上野ステエション」「恋の山手線」、美空ひばり・さだまさし名曲選、他
[問い合わせ・予約]E-mail(コンサートサロンALKAS)alkas2018@au.com

※チラシに全曲編曲とありますが、ちょっと楽器を足す程度の曲もあります。

 
 
 
 
 
 
 
 
 

kokoro-Ne(ココロネ)プロフィール

kokoro-Ne (ココロネ)
門井のぞみ・大和田真由・田仲なつきによる、2本のフルートとピアノのトリオ。
クラシックで培った確かな技術と表現力を基に、色彩豊かなアレンジやハイレベルな演奏で好評を博している。
2007年結成当初より、ジャンルを超えたレパートリーに挑みながらも、リズムセクションや打ち込みなどを敢えて加えず室内楽トリオの可能性を追求し続けている。
TPOに合わせた演奏を得意とする一方、CD・楽譜・オリジナル作品の発表にも力を入れており、オーディエンスはもとより多くのプレイヤーからも支持を得ている。
主な作品
・2009年 1st Album 「 kokoroーNe/ココロネ 」
・2013年 「 コンサートで使えるフルートデュエット曲集kokoro-Ne編 」(ドレミ楽譜出版社)初版以降も増刷を重ね、ロングセラーとなる
・2016年 2nd Album 「 Microcosmos 」
同収録のオリジナル曲「 ミクロコスモス 」楽譜出版
・2017年 楽譜出版「 kokoro-Ne Library 」を立ち上げ、これまでに30タイトルを超える楽譜を発表。続々と新作発表を控えている。

kokoro-Ne公式HP https://www.kokoro-ne.net/
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フルート奏者カバーストーリー