フルート記事 kokoro-Neがお届けする〜フルートで彩る フィギュアスケートの世界〜
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第25回|「リベルタンゴ」

kokoro-Neがお届けする〜フルートで彩る フィギュアスケートの世界〜

LESSON

こんにちは!2本のフルートとピアノのトリオ、kokoro-Neです。
シーズンも終盤に差し掛かかってきました。どの選手もプログラムが熟成して益々見応えのある演技になっていますね。2月に開催された4大陸選手権で銀メダルに輝いた佐藤駿選手。今回は、SPで自己ベストを大幅に更新した『リベルタンゴ』をご紹介します。

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A.ピアソラ

今回で4回目の登場。それだけスケーターからも音楽家からも、世界中で愛されるピアソラ。音使い、コード進行、リズム、いずれもそこまで難解ではないのですが、その中に「あ、ピアソラっぽい」と感じさせる揺るがない“らしさ”や、吸引力の高いメロディ、圧倒的な独創性で数々の名曲を生み出しました(第4回「ブエノスアイレスの冬」第5回「オブリヴィオン(忘却)」第7回「鮫(Escualo)」 、でもピアソラのプログラムをご紹介しています。よろしければご覧ください)。

このコーナーでご紹介していない曲も含め、kokoro-Neでもたくさん演奏してきました。それでもまだ網羅しきれない名曲の数々……今後、取り組みたい曲は?

まゆ「【Allegro Tangabile】を完成させたい! すんごい難しくて、むちゃくちゃ練習したのに、結局トリオ化による人手不足が解決できなくて撃沈したままになってるの(;▽;)」
なつき「個人的にレパートリーにしたいのは山ほどあるんだけど、kokoro-Neとして完成させてみたいのは技巧的にもアンサンブル的にも追求したい【Fuga Y Misterio】、中年トリオの内面を追求できそうな【天使の組曲】をやってみたいな」
のぞみ「【天使の組曲】いいねぇ!でもミロンガとかロングトーン系は苦しいんだよねw【天使の死】がめちゃくちゃかっこいいからやりたいな。中間部が痺れる〜(♡∀♡)」
まゆ「全部やるとなると、書いて⇄練習して⇄直して、相当なエンドレス苦行の日々が訪れるね(ノ∀;`)」

 

『リベルタンゴ』

リベルタンゴもピアソラも知らなくても♪ミファミドシミ〜♪ならわかる。日本ではピアソラの代名詞のような曲です。私たち世代は「=ヨーヨー・マ」「=ウィスキーの曲」という方も多いのではないでしょうか。今回は泣く泣く書くのを断念した名プログラムを、ここでちょっとだけご紹介します。

・三原舞依選手 2017-18 SP
振付はブノワ・リショー。音源は、佐藤駿選手と同じ部分もあります。それまでの舞依ちゃんの妖精のようなイメージから一変。大人びた新たな魅力を感じました。年齢が上がってからの再演もきっと素敵だろうな、と思えるプログラムです。

・鈴木明子さん 2008-10 EX
可憐なクリスティーヌと同一人物(第19回「オペラ座の怪人」)とは思えないヽ(>∀<)ノ前半のしっとりした曲調での目力、色気、フリーレッグの使い方、指の開き具合、見る人を挑発するような表現に萌えます!
見せ場はなんと言っても後半。テンポアップしてからのステップが圧巻です。タンゴダンサーもびっくりじゃないかと思う見事な足さばき! あの大ちゃんが「衝撃を受けた」というのも納得です。(※1)
そして、このプログラムも宮本賢二さんの振付。アレンジやスケーターは違えど、1つの曲に対して、魅力的なプログラムをいくつも作ってしまう手腕に脱帽です。

(※1) 2014年のアイスショーで、鈴木明子さんと高橋大輔さんの2人でリベルタンゴを競演したそうです。こちらも振付は賢二先生。残念ながら観られなかったのですが、観た方は一様に「決闘みたいだった」と(*≧▽≦)
2人とも現役ラストイヤー(大ちゃんは1回目の)。脂が乗りに乗った表現力でコラボ。その破壊力たるや……想像するだけでドキドキが止まりません! 収録されているDVDや動画がどこかにあるかご存じの方、是非教えてください。(人>ω•*)

佐藤駿 2023-24年 SP『リベルタンゴ』

振付は宮本賢二さん。音源は、なかなかストレートな♪ミファミドシミー♪が登場しない、攻めたアレンジを使用しています。

ピアノのしっとりとしたイントロとともに動き出した瞬間、滑らかさ、足捌き、手足の使い方まで、前回ご紹介したギョーム・シゼロンの影響を感じます。見応えのあるスケーティングに見入っているうちにあっという間に加速して、4T+3T。ジャンプが決まると、スネアやバンドネオンが入ってきて、テンポアップした曲調に変化します。
 
ちょっと脱線して。この先も、元のメロディをフェイクしたようなアレンジが続きます。こういうアレンジは、原曲が聴き手にしっかりインストールされている前提だから成立するんですね。恐らく、聴く側の頭の中では♪ミファミドシミー♪が同時に再生されています。だからこそ、それを土台にして多少違うフレーズを入れても『リベルタンゴ』に聞こえる。聴き手の脳内再生にサウンドの一部を委ねられるだけのパワーが原曲あるからこそできる手法です。名曲ならでは!と思って聴いていました。

話は戻って。Aメロ(♪ミファミドシミー♪)の最後に4F。休む間もなくBメロ(♪ソーーー シ♭ラソ#ラミソファミレーミファー♪)に入るとフライングキャメルスピン。再びAメロに戻ると、3Aと足替えシットスピン。見事なジャンプ、キャメルでも、深いシットの姿勢でも、足を替えても、回転速度の落ちないスピンの連続で心を掴まれます。

メディアなどで「ジャンプの天才」「ジャンプのスペシャリスト」と扱われて、その印象が強くなってしまっていましたが、見どころはここからのステップ。左右にバランスよく、かつ複雑なターンでリベルタンゴのキレのあるリズム表現しつつ優雅なメロディもしっかり伝わってきます。その上、♪ラーシ♭ーシードード♯ーミーレ♪のような裏メロも逃さず踊り切る姿は圧巻です。ここまできめ細かな振付をした、賢二先生もお見事!

ラストの足替えコンビネーションスピンまで一気に駆け抜ける名プログラムです。昨年12月の全日本から4大陸まで、1ヶ月ちょっとの間に、更に歌い込むような表現や、技の精度が進化していたので「今シーズンの大きな大会が4大陸で終わってしまうのがもったいない〜!o(≧~≦)o」と思って観ていました。来シーズン以降も活躍が楽しみです!

フルート2本とピアノで『リベルタンゴ』

kokoro-Neの結成初期から演奏していて、割とはっきりと、何度も♪ミファミドシミー♪を言うタイプのアレンジです。ただ、山ほどアレンジが溢れている曲なので「何か変えたいなぁ。」とは思っていました。

まず、田仲発案でメロ以外は極限まで音を削ぎ落として、ベースラインで押していくイントロで書き始めました。そこから

・せっかくだから弦やバンドネオンでできないフラッターを入れてみたり
・後半は流石に音数を増やそうか

などとあれこれ改造を重ねました。
フルートが2人=ラインが2本ある、というのもこの編成では考慮が不可欠な点です。

・ユニゾンorバラバラな動き多め、普通のハモりは少なめに振り切る(♪ミファミファミドラ♪とEnding以外)
・フルートとアルトフルート、それぞれの音色を楽しめるように
・ピアノがただの伴奏にならないように(ソロを入れたり、裏メロなどを絡ませる)

一通り書いて練習して試す⇄却下、を経て、どの曲に取り組む時も大前提としている「この編成で演奏する意義」が見出せるように書いてみました。

演奏動画

kokoro-Ne YouTubeチャンネル
 
 

楽譜とCDのご紹介

kokoro-Ne版の、楽譜は「コンサートで使える中上級アレンジ〜フルート・デュエット曲集(ピアノ伴奏付き)」(kokoro-Ne編曲&監修)に
https://kokoroneshop.thebase.in/items/5202183
音源は2nd Album『Microcosmos』に
https://kokoroneshop.thebase.in/items/5202203
収録されています。

 

 

アルソ出版でもTHE FLUTE197号の音源ダウンロードでフルートカルテットFIZZのの音源&楽譜をダウンロードできます。超絶技巧をお楽しみいただきた方はコチラ♪
https://www.alsoj.net/store/view/F197.html?storecd=

 

 
 
 

kokoro-Ne(ココロネ)プロフィール

kokoro-Ne (ココロネ)
門井のぞみ・大和田真由・田仲なつきによる、2本のフルートとピアノのトリオ。
クラシックで培った確かな技術と表現力を基に、色彩豊かなアレンジやハイレベルな演奏で好評を博している。
2007年結成当初より、ジャンルを超えたレパートリーに挑みながらも、リズムセクションや打ち込みなどを敢えて加えず室内楽トリオの可能性を追求し続けている。
TPOに合わせた演奏を得意とする一方、CD・楽譜・オリジナル作品の発表にも力を入れており、オーディエンスはもとより多くのプレイヤーからも支持を得ている。
主な作品
・2009年 1st Album 「 kokoroーNe/ココロネ 」
・2013年 「 コンサートで使えるフルートデュエット曲集kokoro-Ne編 」(ドレミ楽譜出版社)初版以降も増刷を重ね、ロングセラーとなる
・2016年 2nd Album 「 Microcosmos 」
同収録のオリジナル曲「 ミクロコスモス 」楽譜出版
・2017年 楽譜出版「 kokoro-Ne Library 」を立ち上げ、これまでに30タイトルを超える楽譜を発表。続々と新作発表を控えている。

kokoro-Ne公式HP https://www.kokoro-ne.net/
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