第28回|「ありのままで(日本語版)」「Let It Go(英語版)」
こんにちは! 2本のフルートとピアノのトリオ【kokoro-Ne(ココロネ)】です。グランプリシリーズの熱戦に加え、浅田真央さんプロデュースのMAO RINKが11月にオープンするなど、今シーズンも話題が豊富ですね。夢を叶え続ける真央ちゃんと、お姉様の舞さんがコラボした「アナ雪」の『ありのままで(日本語版)』と、グレイシー・ゴールドによる『Let It Go(英語版)』の2作品をご紹介します。このコーナーで初めてのディズニー楽曲! ぜひご覧ください。
ディズニー映画「アナと雪の女王」
2013年公開、一大ブームを起こし、続編も制作された大ヒット作。だいぶ改変されていますが、アンデルセンの「雪の女王」から着想を得た作品だそうです。
アレンデール王国の王女エルサと妹アナが主人公。
生まれつきの魔力を隠して孤立した暮らしをしていた姉エルサ。しかし両親が他界し、女王に即位する戴冠式の日が訪れます。久々に外の世界に触れた妹アナは、浮かれた勢いで隣国のハンス王子と結婚の約束までしてしまいます。エルサは反対し(当然です)、アナとケンカ中に魔法を暴発させて王国を永遠の冬に閉ざし、魔力を人々に目撃されてしまったせいで国外に逃げてしまいます。
アナはエルサを連れ戻すため旅に出ます。クリストフ(山男)、スヴェン(クリストフの相棒のトナカイ)、オラフ(魔法の雪だるま)たちに出会い、協力を得て、氷の城でエルサを見つけるも拒絶されます。またも暴発したエルサの魔法で心に氷のかけらが刺さってしまったアナ。(またかい)
アナを救えるのは「真実の愛」とトロールから教えてもらい、ハンスの元に急ぎますが、この男、超絶クズ級の裏切り者(しかもショボい)。エルサとアナ、そして王国も絶体絶命の危機に……
というお話です。
劇中歌『Let It Go (邦題:ありのままで)』
クリスティン・アンダーソン=ロペスとロバート・ロペスの作詞・作曲。英語版を歌ったイディナ・メンゼルを想定して書き下ろされました。
様々な言語で歌われていますが、特に日本語版でエルサを担当した俳優の松たか子さんの歌唱は「日本語版が素晴らしい!」と世界的に評価が高かったそうです。
ただの“上手い”では片付けられない、エルサとして生きた証が伝わる圧巻の歌唱。「他の人じゃ、こうは歌えないよね」という役者魂を感じるのが、専業歌手とは違う点かもしれません(ロンバケのお嬢さんがこんな名優になるなんて...(*´∇*))
その日本語訳詞を手がけた高橋知伽江さんもブラボー(*゚▽゚ノノ
1音で単語が言えてしまう英語に対して、1音に1文字しか入らない日本語は、同じ音数で訳すと情報量が激減します。さらに、日本語の特性上、グルーヴ感も損なわれるし、ある程度エルサの口の動きに合わないと劇中で不自然に見えてしまう……といくつものハードルがあります。映像付きの英詞の日本語訳詞は、双方の言語力とセンス、音楽性などの高い技術の合わせ技が生み出す作品なのです。幼い子どもたちが、いつの間にかフルコーラスを歌えてしまう名曲に引き上げた功績は計りしれません。
エルサだらけ現象
のぞみ「この時期、子どもたちみんな歌ってたよね」
まゆ「そうそう。朝保育園に行くとさ、女の子たちは大体エルサになりきってあちこちで城作りまくってたわ。めちゃ可愛かった(ノ∀≦。)」
なつき「ぐわぁ〜って下から持ち上げるあの仕草のエルサね〜。あとラストのドア閉めるシーンとかね」
まゆ「雪だるまも作りまくってたよね(笑)」
なつき「名曲揃いだからね〜」
のぞみ「私、アナ雪2も好きだった! 吉田羊さんの歌が素敵で:*:.。.:*(´∀`*)*:.。.:*:」
なつき「分かる! 落ち着いたアルトっぽさがたまらないよね」
のぞみ「アナ雪の曲は中毒性が高い(笑)」
まゆ「ずっとエンドレスで頭の中回るよね」
浅田舞&真央姉妹
THE ICE 2014の姉妹共演で話題になりました。松たか子さん歌唱の日本語版の音源が使用されています。ヴォーカルの入りとともに舞ちゃん登場(エルサ覚醒後の衣装)。長い手足の綺麗な動き、歌い込んで魅せる力が年齢とともに磨かれていて、登場しただけで魅入ってしまいます。
♪このままーじゃ ダメなんだーとー♪のタイミングで真央ちゃん登場(アナの衣装)。
♪とまーどーいー♪からは2人仲良く手を取って……ああ、なんて尊いんでしょう! 大人になって姉妹仲良く何かを一緒にできる、てなかなかないですよね。
この後は各々滑る→1回目のサビ→3回目のサビ、と短く終わってしまいますが、ジャンプなどの大業がない分、舞ちゃんの変わらないスパイラル、真央ちゃんのスケーティングの美しさ、スピードなど、姉妹の魅力とひたすらかわいい様子が拝める貴重なプログラムです。
グレイシー・ゴールド 2013-15 Ex
英語版のイントロとともにエルサ色(覚醒後)の衣装で登場(かわいい❤)。両手を広げて羽ばたくように滑り出し真っ直ぐ突き進みます。既にプリンセス感が放たれて、観る人をプログラムの世界に引き込みます(英語版と違うところはごめんなさい、なのですが、日本版の歌詞で追っていきます)。
Aメロ①に入ると、様々なターンを織り混ぜながら加速。Bメロ①に入ると
♪とまーどい〜♪→3ルッツ(多分)!幅も高さも回転も美しい✨
♪悩んでーた♪→スピン
♪やめーようー♪では手袋を脱ぎ捨てるポーズも。
サビ①も以降も
♪ありのーままのー♪はエルサが片手ずつ結晶を放つ動き
♪なーにーもー♪からはスピン。
静止して♪すこーしもさむくないわ(The cold never bothered me anyway!)♪を歌っちゃってるとこが悶絶です。かわい過ぎる!!
Dメロからは、エルサが山を駆け上っていくスピードが上がるのを表すように、軽やかなステップや伸びやかなスパイラルで加速。
♪なんでーもでーきーるー♪で2アクセル。
Bメロ②も力強いスケーティングで魅せながら
サビ②はイナバウアーやバレエジャンプ。客席の歓声も鳴り止まない状態に!
♪にーどーとー♪で腕を振り下ろす動作や、続くビールマンスピンも(雫型)からの
♪なみーだーはーながさーないわー♪など歌詞やPVとのリンクに萌えます。
この後、間奏はカットされてEメロに飛びます。ダイナミックな曲調とともにスピードがぐんぐん加速してからのアラベスクスパイラル。すごい移動距離とカーブ(←ちゃんとエッジに乗ってると自然に曲がっていきます)!
サビ③に入ると、静止して左右の手を広げます(エルサがアップしてた髪を下ろす動作ににてます)。
♪じぶんーをすきになってー♪では華麗なステップ
♪これでーいいのー♪両手を広げ(エルサのドレスがキラキラのエメラルドグリーンに変わるところ)
♪じぶんをしんじてー♪で前方に駆け出し
♪ひーかーりー♪でまた両手を広げてそのままスパイラル→バレエジャンプ→スピンと畳み掛けます。
最後も♪The cold never bothered me anyway!♪で締めくくられます。
歌詞を表現したような動きや、映画とリンクした振付で、大人から子どもまで笑顔になれるようなプログラム。エキシビジョンの醍醐味たっぷりの作品です。
演奏動画
松たか子さんの歌唱と重厚なサウンドを3人で可能限りな再現すべく頑張った結果、結構な体力勝負の1曲となりました(詳しくはアレンジのお話で)。3人がフルパワーで駆け抜ける渾身の「レリゴー」、お楽しみいただけると幸いです。
楽譜とCDのご紹介
フルート、アルトフルート(または、フルート2本)とピアノのための
「ありのままで(Let It Go)」『アナと雪の女王』/ クリスティン・アンダーソン=ロペス、ロバート・ロペス
kokoro-Neの楽譜はkokoroneshopでお求め頂けます。
◆LET IT GO ~Flute & Piano ver.~
アルソ出版 刊
https://www.alsoj.net/store/view/FLPC021.html?storecd=#.U6qJTo1_sg8
◆LET IT GO ~Flute Quartet ver.~
アルソ出版 刊
https://www.alsoj.net/store/view/FLPC022.html?storecd=
アレンジの話
映画公開当初から上記の動画に近い難易度に引き上げていて、お客様からも好評だったのですが、自分の中でずっと“ファイナルアンサー”にはできずにいました。
その一因が、重厚なサウンドです。1人は確実に歌のメロに取られてしまうので、残る2人でドラムやベースのリズム隊からオーケストラのラインまで再現する事になります。となると、もう1人のフルートが居たところで音1個しか出せませんから、そりゃピアノが大惨事です。当初は「室内楽編成だから」とリズム隊を諦めて、オケ中心に書いていましたが、音数の割には思うようにはカッコよくなってくれませんでした(泣)。
それに拍車をかけたのがメロの音域です。最高音:Esというのがアレンジ面では微妙に低くて扱い難く、苦戦しました(GとかAsくらいまで使われてると、主役感が出しやすいです)。その下に2ndを入れる、さらにピアノに重厚なバックを弾いてもらう、となると、メロが埋もれてしまって、サウンドが抜けてくれません(号泣)。
2ndをフルートで上回らせると邪魔になる
Altoだと高すぎて音が足りない
ピアノの音のベストチョイスがわからない
……演奏の機会があるたびに「ここ直していい?」をズルズルと繰り返し、気付けば10年。
「このままーじゃ、ダメなんだ」
と腹を括って根本から書き直す事に。当初プランから外したバンドのサウンドのほうに重点を置いたアレンジになりました。
演奏のアドバイス
フルート:エルサが雪山を歩くシーンを思い浮かべながら演奏スタートです。冒頭、Desがたくさん出てくるので音程に注意ですね。ヴィブラートはかけずに、どちらかというと淡々と演奏した方がいいかなと思います。そしてじわじわとサビに向かって持っていくのですが、後半はピアノの伴奏がパワフルなうえに2ndも覆い被さってきますから、メロディはほぼフルパワーです。
音圧を上げるために息のスピードはゆっくりで、ビブラートもうまく使えるといいと思います。やみくもに頑張って吹いてしまうと音程が上がるので気をつけましょう。
アルトフルート(2nd):主にオーケストラで一番耳に入りやすい音を担当していますが、時々メロがあります。どちらもフルートが力強いニュアンスなのに加え、ピアノもかなりの音圧なので、両者に負けないようにフルパワーで挑んでちょうどいいくらいかな、と思います。
最後のサビはアルトとしてはかなり高音になります。難しい場合は♪花咲く氷の結晶のように〜♪でオプションの2ndフルートに持ち替えてしまうのも一案です。
ピアノ:大和田がこだわり抜いて選抜した音、というのを近くで見て知っているので、気楽に弾けない激ムズ譜面ですが、完成するとトリオに感じない壮大なサウンドになります。フルートの方々、絶対速くならないでください(切実なお願い)(><)
kokoro-Ne(ココロネ)プロフィール
門井のぞみ・大和田真由・田仲なつきによる、2本のフルートとピアノのトリオ。
クラシックで培った確かな技術と表現力を基に、色彩豊かなアレンジやハイレベルな演奏で好評を博している。
2007年結成当初より、ジャンルを超えたレパートリーに挑みながらも、リズムセクションや打ち込みなどを敢えて加えず室内楽トリオの可能性を追求し続けている。
TPOに合わせた演奏を得意とする一方、CD・楽譜・オリジナル作品の発表にも力を入れており、オーディエンスはもとより多くのプレイヤーからも支持を得ている。
・2009年 1st Album 「 kokoroーNe/ココロネ 」
・2013年 「 コンサートで使えるフルートデュエット曲集kokoro-Ne編 」(ドレミ楽譜出版社)初版以降も増刷を重ね、ロングセラーとなる
・2016年 2nd Album 「 Microcosmos 」
同収録のオリジナル曲「 ミクロコスモス 」楽譜出版
・2017年 楽譜出版「 kokoro-Ne Library 」を立ち上げ、これまでに30タイトルを超える楽譜を発表。続々と新作発表を控えている。
kokoro-Ne公式HP https://www.kokoro-ne.net/
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