第3回 | 『ソナタ』ベートーヴェン Op.49-2
レッスン動画を参考に、 “自分とデュエット”しながら上達を目指す「録ってもデュエッツ」!!
ピアノの「ソナチネアルバム」より編曲した曲を練習してく「録ってもデュエッツ」第2シーズン。
収録曲は古典派の作品を多く収め、練習過程で自然とその音楽のニュアンスを取り入れられるようになっています。そんなピアノの良い例にならって、フルートでもそれらの曲を練習していきたいと思います。
ONLINEだけの"とってもコラム"も毎回更新します。動画と一緒にお楽しみください♪
「ソナタ ベートーヴェン Op.49-2」
第3回目は、ベートーヴェンのピアノソナタ op.49-2 より第2楽章です。前半部分のみの練習となります。後半も魅力的な作品なので、参考のためにもオリジナルのピアノの演奏を是非聴いてみてくださいね。この楽章は、ロンド形式の「Tempo di menuetto」です。
Lesson
参考演奏、マイナスワンも入っていますので、ぜひご活用ください
「年の瀬に思うこと」
あれよという間に年の瀬です。
つい先日のうだるような暑さも冷たい風に変わり、青々としていた木々はすっかり紅葉し落葉が道を覆います。喧しいほどのセミは夏の役目を終え、今は時より鳥の鳴く静かな夜です。
演奏前の楽器が冷えていると、冬の到来を感じます。
この時期になると「今年一年何してきたかな?」と、振り返ります。そして毎年思います。「ちゃんと成長しているのかしら?」と。
いつもの練習メニュー、曲をさらい、リハーサルに行って、本番、楽しかったと思いつつ反省、編曲、録音して、自分の下手さに嫌気が差して、締め切りがあるから何とかしようと、動画を撮れば自分の滑舌の悪さに毎度幻滅し、お気に入りのCDを聴きながらニュアンスを取り込もうとするけれど、その域には中なかなか到達せず、編集や書物のためにパソコン作業が多いせいで腰は痛いし、こんな、いつもどおりの日々。でも、向上心を持って生活しているのですが……
「水が沸騰して蒸発するとき、それは熱せられて沸点に突然に到達します。今まで液体だったものが、突然気体に変わるのです」
昔読んだなにかの本に書いてあったのを思い出しました。単なる現象ですが、人生と結びつけて書かれていたのと、何もかもがうまく行かなかった時に読んだものだから、妙に残っているフレーズなのかもしれません。
「努力を続けることは自分を熱し続けること。いつ沸点になるのかはその人次第」それを人は、「才能が花開く」というのでしょうね。
私はこういう考え方好きです。というかもし別の感覚を得ることができるなら、そのほうに興味があるので、進みたいと思っているのです。しかし、水から気体になったときは、自覚あるのでしょうか?まだ、そんな気がしていないので、きっとまだまだ火力が足りてないのでしょう。でも、火を止めれば冷めるのは早いですよね。あっという間にぬるくなってしまいます。
水の沸点は100℃ですが、水蒸気になると、なんと500℃以上にまで上昇するらしいです。驚きですね。ということは、蒸気の世界に到達できたなら、今よりもっと凄いことが起こるということです!これは、期待しかないですね。
自分の成長はなかなか自分自身では感じることはできないものかもしれません。フルートを始めてかれこれ30年になりますが、このモヤモヤと「できてない」感じはずっと続いていて、なんとかそれを解消したくて試行錯誤を続けています。
これはなにも自分だけではなくて、レッスンでもよく話をすることです。私の教えている生徒の皆さんはホントに上手になっています。でも皆さん口をそろえて「全然上達しないんです……」と。前回よりできるようになっているし、以前に比べたら格段に音もよく、音楽の流れも良くなって、2重奏でレッスンを進めているのでよくわかります。でも、本人はそれに満足はしていません。だからこそどんどんと上達できるのですが。
なぜ、このように感じるのか自分の経験と照らし合わせてお話しています。
上達の過程ではまず先に「耳」が良くなっていきます。なので、今まで気づかなかった細かな欠点がよく聞こえてきてしまい、そのためにいつまで満足できません。理想は常に頭の中にあり、それに近づこうと練習・レッスンの過程で修正されていきますが、「耳」が真っ先にアップグレードするので、演奏が理想に追いつくことはありません。上達しているのに、気づきにくいのはこのためですね。ここから、上達するためには、「耳」を鍛えるのがよいということがわかります。練習もそうですが、たくさんのいい音楽、いい響きに触れるのが良いでしょう。
今は便利な世の中ですから、是非録音を残しておくことをオススメします。今録ったものを、後々に聴き返すと「あの頃よりは確実に良くなっている」と実感できるはずですよ。
逆に、「今日の出音最高!」「めちゃくちゃ調子イイ!」みたいになった時は要注意です。それは「今日調子がイイのではなく、今日の『耳』が調子悪い」のですよ。……と、わかった上で、たまに気持ちよく演奏してみるのもまた一興です。それは、旨いものの食べすぎ飲みすぎによく似ています。大抵は、次の日ものすごく調子悪いです。
水の沸点は100℃、エタノールは78℃、メタノールは65℃、食塩は1413℃。
さて、自分の能力の沸点は何度なんだろうか……
英気を養う。寒い日は、沸騰する鍋を囲んで熱燗でも。ぬるくても旨いのは酒くらいなもんですからね。
齋藤 寛 (さいとう・かん)
東京芸術大学卒業。フルート奏者、作編曲家。2011-2014年ザルツブルクモーツァルテウム音楽院マスタークラスにてP.L.グラーフ氏に師事。京都フランスアカデミーおよびパリにて室内楽をクリスチャン・イヴァルディ氏に師事。2013年「あまちゃんスペシャルビッグバンド」参加。フルート四重奏「宵待小町」主宰。主な著作「フルートデュオ名曲集25」、「ディズニーソング・デュエットコレクション」、「ジブリメロディー集」等。