第6回 | モーツァルト『ソナタ』K.545 第3楽章
レッスン動画を参考に、 “自分とデュエット”しながら上達を目指す「録ってもデュエッツ」!!
ピアノの「ソナタ」より編曲した曲を練習してく「録ってもデュエッツ」第2シーズン。
収録曲は古典派の作品を多く収め、練習過程で自然とその音楽のニュアンスを取り入れられるようになっています。
今回はいよいよ最終回。モーツァルトのピアノ・ソナタを仕上げていきましょう。
ONLINEだけの"とってもコラム"も、動画と一緒にお楽しみください♪
「モーツァルト『ソナタ』K.545 第3楽章」
第6回目は、モーツァルトのソナタ K.545より、第3楽章です。
軽快なロンド形式の楽曲です。元気ハツラツと演奏しましょう。
Lesson
参考演奏、マイナスワンも入っていますので、ぜひご活用ください
平常心で
このところ、マーラーやブルックナーなどの演奏時間の長い作品、ハイドンやモーツァルトなどの同編成の作品が多いもの、バッハのカンタータを含む宗教曲を片っ端から、日にテーマを決めて聴きまくり、今まではなかなかできなかった贅沢時間の使い方をしています。演奏家によって、または同じ演奏家でも録音時期によって様々な解釈が聴けて興味深く、勉強になります。
本当に便利な時代です。定額制の音楽配信サービスがあり、音源はデータで手に入り、YouTubeをはじめとする映像コンテンツは世界とつながっています。貴重な資料に出会えて感動することも多々あります。巨匠のインタビューやリハーサル映像を見つけた日には、鼻血が出るほど興奮してしまいますね。いくら時間があっても足りません。
5月には非常事態宣言が発令され、仕事キャンセルの連絡ばかりでなにかと精神的に辛い日々でした。SNS を見ると余計に塞ぎ込みます。焦りと嫉妬ですね。
音楽で「生活」しているので、不安ばかりがよぎります。糧としての音楽。今後食えなくなったら……潰しのきかない音楽家業。
厚生労働省の提言する「新しい生活様式」は、音楽家にとって憂慮すべき事案です。……だからといって、あきらめて転職するのか?
同時に、なんで音楽やっているのか、根本的なことを考えたりもします。
好きだから。
ああ、即答です。
端的に言えば「好きだから」になるけれど、その中には「好嫌愛憎楽苦喜怒哀楽光闇聖悪… 」いろいろな思いを包括凝縮濃縮しています。もはや般若心経並みです。
そして、「音楽」という言葉の中にも、一般的な概念の他に、やはり「好嫌愛憎楽苦喜怒哀楽光闇聖悪… 」みたいなものがあって、一瞬で、芋づる式にいろいろな事柄が結びついて連想されます。
これを一言で言えば「人生」だから、となりますね。
消去法で音楽を仕事にしているわけではなく、選んで「努力」してきたからここにいると、再認識します。
すると、「音楽を続ける」という選択肢しか残りません。まだまだ途上です。
今やめたら、サグラダ・ファミリア教会の建設を中断します!みたいな話でしょ?
MOTTAINAI!
素材も知識も経験も持っている。絶対に捨てない。
もったいない。
これからどう活用するか、道が開ける可能性は多分にありますよね。……なので、今できることを、できるだけ。
「今」の積み重なりで「未来」になるのだから、もし「今」手を抜けば、スカスカな「未来」になってしまいます。そんな虫食いみたいなのは嫌なので、今までと変わらずいようと思えるのです。
さて、決意表明みたいになってしまいましたが、ここまでお届けしてまいりました「録ってもデュエッツ」は本号が最終回です。
なんとか無事に完走できました。読者のみなさま、わがままを聞いてくださった編集の和泉さん、本当にありがとうございました。原稿を作る過程で学んだことも多く、大変収穫になりました。手探りの中で始めた企画でしたが、このレッスンが少しでも楽しみながら演奏に取り組むきっかけになれば幸いです。
ありがとうございました。またいずれお会いしましょう。
2020年6月10日 齋藤 寛
齋藤 寛 (さいとう・かん)
東京芸術大学卒業。フルート奏者、作編曲家。2011-2014年ザルツブルクモーツァルテウム音楽院マスタークラスにてP.L.グラーフ氏に師事。京都フランスアカデミーおよびパリにて室内楽をクリスチャン・イヴァルディ氏に師事。2013年「あまちゃんスペシャルビッグバンド」参加。フルート四重奏「宵待小町」主宰。主な著作「フルートデュオ名曲集25」、「ディズニーソング・デュエットコレクション」、「ジブリメロディー集」等。
齋藤 寛