ヴィンテージサックス解体新書|Part.1 Introduction
Introduction
ヴィンテージサックス──まず最初にお断りしておくが、きっとこの言葉自体には賛否両論あるだろう。楽器は音楽を奏でるための道具であり、ただ古いだけのものではないかという意見も多くある。しかしながら、今もなお注目を浴び続けている古い楽器は、確かに存在する。多くのプレイヤーや愛好家はなぜ、その古い楽器を求めるのか……。その理由に迫るべく、THE SAX ONLINEでは《シリーズ徹底検証》の一環として、このヴィンテージサックスの世界に踏み込んでいく。当コーナーにおいては、「ヴィンテージサックス」という言葉を「現在は製造されていないもの、しかし人気の高い楽器」と定義し、楽器のリアルタイムにジャズシーンを彩ってきたプレイヤーたちが愛し、現在も名器として語り継がれているサックスをピックアップ、その道のプロやプレイヤーたちの意見を交えながら紹介、検証する。今回はイントロダクションとして、中でももっとも人気の高い5メーカーの、フラッグシップモデルと言っても過言ではない機種の特徴を挙げていこう。
PHOTO: YU KUSANO
【撮影・取材協力店】
■石森管楽器 http://www.ishimori-co.com/
■管楽器専門店 ミュージックライフTAO(東京店) http://www.m-l-tao.com/
■サックス専門店ウインドブロス http://www.rakuten.co.jp/windbros/
■THE中古楽器屋 http://www.tcgakki.com/
<コーンの名称について>
シリアルナンバーの前に刻まれた“M”の刻印に由来するのか定かではないが、日本ではニューワンダーのシリーズをMモデルといった通称で呼ぶことが多く、また、テナーに於いては、テナー奏者、チュー・ベリーの名にちなんで、チュー・ベリーモデルと言った通称もある。ニューワンダーIIの次に製造されたのがスタンダードだが、このモデルも日本では、モデルナンバーにちなんで、アルトを通称6M、テナーを通称10Mと呼ぶことが多い。また、この6M、10Mが製造されていたのと同時期にこの2機種の上位モデルであるコンクエラーモデル(アルト通称26M、テナー通称30M:いずれもモデルNo.に由来)も製造されている。その上、ニューワンダー(通称Mモデル)からスタンダード(6M、10M)へのモデル移行期に、機構的にその2つのモデルの特徴を併せ持ったような機種が短期間作られた。日本ではこのモデルのことを移行期という意味から通称トランジショナルモデルと呼ばれている。本誌では、日本では通称のようになっているということからニューワンダーをMモデル、スタンダードをアルト6M、テナーを10M、コンクエラーをアルト26M、テナー30Mといった名称で取り扱うこととする。