サックス記事 第10回 コンディションをレベルアップ!
  サックス記事 第10回 コンディションをレベルアップ!
[1ページ目│記事トップ
クラシカルサックスレベルアップ講座 │ 第10回 from THE SAX vol.108

第10回 コンディションをレベルアップ!

LESSON

THE SAX vol.99よりスタートした「クラシカルサックス レベルアップ講座」。講師に角口圭都さんを迎え、音色やテクニックを少しでも向上するために、わかりやすく解説してもらいます!

角口圭都 Keito Kadoguchi
富山県出身。東京芸術大学、同大学大学院音楽研究科を卒業。サクソフォンを池上政人、冨岡和男、須川展也、平野公崇、大城正司の各氏に、室内楽を中村均一氏に師事。第9回北陸新人登竜門コンサート優秀賞受賞。第9回ルーマニア音楽コンクール第1 位。「TOYSPARK」メンバー。「Dreamvivo Jazz Orchestra」主宰。「piazzolla de saxophone quartet concert」等、様々なコンサート企画も行なう。クラシック専門インターネットラジオ「OTTAVA」にてプレゼンターを務めている。2019年1st album「Chau Paris」2021年5月2nd album「Romance」を発売。

第10回 コンディションをレベルアップ! 前編

第 1 0 回のテーマは【コンディションをレベルアップ!前編】です。
安定したコンディションを保つのは、実はすごく大変なことです。
初心者のころは、音が出たら嬉しい!楽しい!ですよね。それが、練習を進めていくと次第に、なんとなく調子よい日と、なんだかいまいち乗らなくて消化不良......という日があることに気が付き始めます。毎回の練習の調子が安定しないと心がもやもやして、「なぜだ!!」と叫びたくなりませんか? ある程度上達してもコンディションの波は必ずあります。そんな波があっても、ある一定以上のコンディションを保つためのポイントを前編後編に分けてご紹介します。

 

1 リードがすべて波打つ恐怖体験

最初に「リード」のお話をしたいと思います。私は、富山県出身で現在は東京在住なのですが、今でも忘れられない芸大受験のいや〜な思い出があります。富山から実技試験用に選んで持ってきた「リード」がすべて波打ち、合わなくなってしまったのです。パニックになり慌てふためきましたが、念のため持ってきていたダメな「リード」を片っ端から吹いてどうにか試験で使えそうなものを探し当て、事なきを得ました。ずっと天気が悪くて湿度が高い富山の冬と、晴れが多く空っ風が強くて湿度の低い東京の冬。これが原因でした。湿度が高い場所で選んだリードが乾燥してしまい、とても軽くなってしまったんですね。そしてダメだと思っていた「リード」が湿度の低い環境ではちょうどよかったのです。思いがけないアクシデントでしたが、場所や天候が変われば選ぶ「リード」も楽器の鳴り方も全然変わってしまうことを知るよい経験となりました。

波打ったリード

2 楽器の調整

初心者のうちは楽器の扱い方に慣れていないために不意にアクシデントが起きたり、お手入れが行き届かずタンポを痛めてしまうこともあります。また、長い時間練習していると、どうしても少しずつ調整が狂っていきますね。状態が悪い楽器で吹いていると、無理やり音を出そうとするあまり、奏法が崩れてしまいます。変な奏法の癖がついてしまう前に定期的に調整に行き、良い状態の楽器で練習しましょう!

【楽器の不調ポイント】
・タンポの塞がり
・ネジのゆるみ
・オイル切れ
・コルクやフェルトの劣化
・管体の凹みなど

私はセルマーを使っているので、「ノナカ・ミュージック・ハウス」さんで調整をお願いしています。特に使用頻度の高いアルトサックスは3か月〜半年に1回程度見てもらっています。購入先のお店で見てもらうのもよいですし、個人のリペア工房も増えました。SNS で情報発信されているところも多いので、自分のお気に入りのリペアマンを探すのも楽しいと思います。リペアマンとの出会いもサックス演奏には欠かせないポイントですね。コロナ禍で出かけられない地方のプレイヤーによると、楽器をしっかり梱包して精密機器扱いで運送会社に依頼し調整に出しているそうです。気になる方はそれぞれのお店に問い合わせてみてくださいね。

楽器をしまう時は調整が崩れないようにタンポにコルクを挟んでいます

 

3 マウスピースの状態

マウスピースの劣化は意外と見逃してしまいがちな不調の原因で す。「最近当たりのリードの枚数が減ったような気がする......「思った音色が出ない」「ノイズが多い」。そんなふうに感じた時はマウス ピースを疑ってみてもいいでしょう。マウスピースはエボナイトと いうゴムを主原料とする合成樹脂で作られています。変化しやすい 材質のため、使っているうちにどんどん状態が変化します。試しに マウスピースをじっくり観察してみましょう。

【マウスピースの不調ポイント】(写真参照)
①先端が欠けている
②内側のエッジが息圧で摩耗している
③リードの裏面との接面に傷がついている など

こんなことが起きていないでしょうか。
私は新しいマウスピースの吹き心地が好きなので、年に一回くらいの頻度で新しいマウスピースを追加しています。また、たくさんの種類に加えて新しいモデルも出てくるので、レベルや音色の好みの変化で乗り換えていくのも良いですね!

・新しいマウスピース→輪郭がはっきりとして、最初は少し硬い音色が慣れてくるとまろやかになる
・古いマウスピース→柔らかいがぼやけた印象になり遠鳴りしずらい

 

おわりに

第10回いかがでしたでしょうか? ご紹介した項目をぜひチェックしてみてくださいね。普段からコンディションに気を付けているプロでも、調子が悪いな〜と感じる時がありますが、自分なりの調子の整え方・チェックポイントを持っています。後編では、不調を抜けだす練習法や、安定したコンディションを保つためのルーティンをご紹介します。スランプに打ち勝つ心構えもお伝えできればと思います。
これからも皆様のレベルアップのお役に立てれば幸いです。

これまでのレベルアップ講座第1~9回の譜例を演奏した「模範演奏動画」を角口圭都YouTube チャンネルにて公開中です。角口圭都 YouTubeチャンネルでは、ソプラノからバリトンまでや、様々なメーカーのサクソフォン吹き比べ動画や演奏動画もアップしています。また最近は note にて記事投稿を始めました。ぜひご覧になってみてくださいね。

また引き続き質問・お悩み相談・応援メッセージなど募集しております。お送り先は、info@alsoj.netまでお願いいたします。
おかげさまで、このレベルアップ講座も 2020 年から始まり、第10回を迎えることができました!読者の皆様の応援のおかげです。本当にありがとうございます。引き続き皆様と一緒にサックスを上達のためにいろいろ試行錯誤していきたいです。それでは、また次号でお会いしましょう! エンジョイサックス〜♪

※THE SAX Vol.108では上記以外にリガチャーやリードの取り扱い、ストラップ、フォーム、楽屋話なども掲載しています! 是非ご覧ください。
THE SAX Vol.108のご購入はコチラから

♪CONCERT Information
「生誕101年ピアソラに愛をこめて Saxophone plays Piazzolla」
〈日時〉3/20(日)16:30 開場 17:00 開演
〈場所〉金沢市芸術村パフォーミングアーツ
〈出演〉角口圭都/完戸吉由希/田中麻樹子/塩塚純 (Sax)、弘中佑子 (Pf)、生水敬一朗 (Bn)、Zydre
Ovsiukaite(Vn)、北井千都代 (Dance)
〈予約・お問い合わせ〉keitokadoguchi@gmail.com
角口圭都先生への質問、悩み、メッセージを大募集中!
 
読者の皆様から奏法の悩みや質問などを募集中です。質問や悩みだけでなく、角口先生へのメッセージでもOK! 

●質問・メッセージ送付先
メール送信先:mailto:info@alsoj.net
タイトルに必ず「クラシカルサックスレベルアップ術」と明記し送信してください。
登場するアーティスト
画像

角口圭都
Keito Kadoguchi

富山県出身。東京芸術大学、同大学大学院音楽研究科を卒業。サクソフォンを池上政人、冨岡和男、須川展也、平野公崇、大城正司の各氏に、室内楽を中村均一氏に師事。第9回北陸新人登竜門コンサート優秀賞受賞。第9回ルーマニア音楽コンクール第1位。「TOYSPARK」メンバー。「Dreamvivo Jazz Orchestra」主宰。
「piazzolla de saxophone quartet concert」等、様々なコンサート企画も行う。クラシック専門インターネットラジオ「OTTAVA」のOTTAVA Salone、OTTAVA Premio にてプレゼンターを務めている。2019年9月初ソロアルバム「Chau Paris」を発売。
(2020.05)