サックス記事 サックスの開発者“アドルフ・サックス”
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サックスという楽器を知ろう♪【第1回】

サックスの開発者“アドルフ・サックス”

HISTORY

サックスはいつ誰が開発したのか、どんな楽器なのか、サックスにまつわる基礎的な知識を掲載します。第1回はサックスの開発者“アドルフ・サックス”を中心にご紹介します。

サックスを発明したのは誰?

アドルフ・サックス

サックスという楽器を開発したのは、ベルギーの楽器製作者アドルフ・サックスです。アドルフは、1814年にベルギーのディナンという街に生まれました。父親が楽器製作者だったので、アドルフも楽器製作に携わり、15歳のころにはフルートとクラリネットをコンペティションに出展、入賞をするという才能の持ち主でした。
ブリュッセルで楽器製作を学んだ後、1941年にパリに移住します。最初は金管楽器の開発を行なってから本格的にサックスという楽器の開発に取り組み、1946年にサックスの特許を取得しています。そのときには、ソプラノサックスからバスサックスまですでに開発していました。

サックスは金管? 木管?

サックスという楽器は主に真鍮、その他銅や銀、洋銀などの金属で作られています。管楽器は木管楽器と金管楽器に分類されますが、サックスはどっちなのでしょうか? 金属で作られているから金管楽器?
木管楽器といえば分類されるのはクラリネット、オーボエ、ファゴットです。これらの楽器は木製ですから木管楽器というのもすぐに頷けるでしょう。フルートも木管楽器の仲間です。現在は洋白や銀、金などの金属が主流ですが、もともとは木で作られていたからです。
金管楽器は、真鍮を主な材料としている楽器で、トランペットやホルン、トロンボーン、チューバなどがあります。
とすると、「サックスはやっぱり金管楽器!」と答えたいところですが……答えは「木管楽器」なのです。木管楽器か金管楽器かの区別は、材質ではなく、音を出す原理で分類されるのです。金管楽器は「唇の振動によって音を出す管楽器の総称」で、木管楽器は「唇の振動によらない方法で発音する管楽器の総称」なのです。

「唇の振動によらない方法で発音」とは何でしょうか? サックスやクラリネット、オーボエなどは、葦の仲間のケーンというイネ科の植物で作られた薄いリード(右写真参照)というパーツをリガチャーという器具を使いマウスピースの平らな箇所(テーブル)に取り付け、息を吹き込むことでリードを振動させて音を出します。リードを使う楽器は二種類あり、1枚のみマウスピースに付けて音を出すのがサックスやクラリネットで、シングルリードと言います。ダブルリードは2枚を重ねてその間に息を吹き込む楽器で、オーボエ、ファゴットなどです。ちなみにフルートにはリードはなく、管体に吹き込んだ息が振動することで音が出るのです(エアリードと呼ばれます)。
サックスは、木管楽器の中で最も大きな音を出すことができます。
これはアドルフが、金管楽器に劣らない音量を出せる楽器を開発したかったというのが理由です。パワフルな音量だけでなく、優しく繊細な音色も出すことができるサックスは、クラシックのみならず、ジャズやポップス(むしろクラシックより今は人口が多い)でも活躍することとなったのです。

アドルフ・サックスはすごい人!

アドルフは楽器開発者として、15歳のときにコンペティションで入賞を果たしていると記しましたが、20歳の頃にはバスクラリネットの設計でも特許を取得しています。
楽器の開発でいくつもの特許を持つアドルフですが、ライバルの楽器製作者たちは、特許の正当性に繰り返し攻撃を加えます。そのため長期に渡る訴訟を起こされ、1856年と1873年に破産をしてしまうのです。このストレスからか、このストレスからか、癌に侵され闘病生活を余儀なくされましたが、数年の闘病生活を経て癌を克服しました。
アドルフはパリ国立高等音楽院サクソフォン科の初代教授として、後進の指導、育成に当たりましたが、その後の財政難のためサクソフォン科は一時閉鎖。1894年にパリにて没しました。当時はまだサックスの地位はそれほど高くなかったためか、パリ国立高等音楽院サクソフォン科の一時閉鎖から72年もの空白期間を経て、アドルフの後任としてマルセル・ミュールが就任しました。それからサックスの地位が飛躍的に向上したのです。
彼の死後100年経った1994年から生誕地ディナンで、「アドルフ・サックス国際コンクール」が開催されています。第3回には原 博巳さんが第1位を、2019年に行なわれた第7回は齊藤健太さんが第1位、小澤瑠衣さんが第2位を獲得しています。第1回から、これまですべて日本人が入賞を果たしているのですが、日本人が活躍しているのは嬉しいですね。

 

第2回は「サックスの種類:ソプラノ〜バリトンまで」(7/14公開予定)。お楽しみに!