サックスはどんな素材でできているの?
サックス素材の王道「真鍮」
まるで宝石のようなプラチナで作られたフルートから、動物の皮で作られた打楽器、木の温もりを感じさせるヴァイオリンなど、楽器の素材には目を惹くものがたくさんありますが、さて、サックスはどんな素材でできているのでしょうか。
まず、圧倒的に多いのが真鍮(しんちゅう)と呼ばれる銅合金です。「ブラス」と言う場合もあります。これは銅と亜鉛を混ぜたもので、互いの混合比率によって強度や色に変化が出てきます。
七三黄銅(イエローブラス)
サックスやトランペットなどの管体に多く採用されている。銅が70%・亜鉛が30%、または銅が65%・亜鉛が35%のもの。加工がしやすくメッキの付着率もいいので、楽器のほかに複雑な加工を施す必要のある飾りボタンなどに使用されることもある。音色は明るく張りがある。
ゴールドブラス(ブロンズブラス)
銅=75〜85%。イエローブラスに比べて少し赤みが増す。幅のある豊かな音色を出すことができる。
レッドブラス
銅=85〜90%。ゴールドブラスよりもさらに赤みが増す。柔らかく落ち着いた音色が特徴。
王道以外の材質は?
メーカーによっては持っている技術力を生かして、こだわりの材質で楽器を製作することもあります。
ブロンズ
銅と錫(すず)の合金。真鍮よりも素材自体が柔らかいため、やや加工に手間がかかる。しかし銅の比率が80%に近いためその音色には落ち着きがあり、華美ではないが丸みのある響き。
銀(シルバー)
銀は大変柔らかい素材であるため、実際は適度な硬度を保つために少量の銅などを加えたものが管楽器の素材として採用されていることが多い。音色は、透明感があり、遠くまで響いていくような印象。
このほか、サックスに限らず管楽器に使用される金属については、銅、亜鉛、ニッケルの合金であるニッケルシルバー、金と銅などの合金である金合金(よく18K、14K、9Kなどと呼ばれ、アクセサリーなどで目にすることも多い高価な金属ですね。ちなみに24Kは金100%です)。また、純プラチナ製のフルートもありますが、素材自体が大変高価です。重量的にも値段的にも、この素材でサックスを作るのは難しいでしょう。
表面仕上げも重要な要素
楽器の表面の仕上げにもいろいろあります。表面にラッカーやメッキの加工をしたり、逆になにも加工しない(材質のまま)ノーラッカー(アンラッカーとも言います)などです。
ラッカーは本体に使われた金属の表面を「塗装」して焼き付けます。メッキは金属に金属を「付着」させる仕上げです。
〈ラッカーの種類〉
ラッカーは素材自体が持つ音色を尊重しつつ、余分な拡がりを抑えた響きが特徴です。ラッカーには、素材を保護するという重要な役目があるので、メッキの上にラッカーをかける、という機種もあります。
クリアラッカー 透明なラッカーを吹き付ける。素材の色がそのまま生かされる
ゴールドラッカー、ブラックラッカー、ピンクラッカー 色の付いた塗料を混ぜて作られたラッカーを吹き付ける。
アンラッカー
表面仕上げを施さない機種。時と共に見た目の輝きは失うが、金属が退化したときに見られるアンティークなフォルムとその開放的な響きを好む奏者も多い。
〈金属メッキ〉
本体に使われた金属とメッキに使われた金属の両方の良さを併せ持つ音色となります。また金属に金属を付着させるので、ラッカーより管体の厚みと重量がほんの少し増します。
金メッキ(ゴールドプレート) 金の持つ煌びやかで輝かしい音色。
銀メッキ(シルバープレート) あたたかみのある柔らかい音色。
ピンクゴールドメッキ あたたかさと煌びやかさを兼ね備えた音色。
ブラックニッケルメッキ ナチュラルで指向性のある音色。
マウスピースの素材
マウスピースは出したい音色や演奏したいジャンルによって材質が変わります。主な素材には、ハードラバー・メタル・ウッド・樹脂(プラスチック・レジン系)があります(右の写真はハードラバーのマウスピース)。
金属製のものは音が明るく、輪郭をクリアに出すことができます。ラバー製は太い落ち着いた音色を出せます。ただしマウスピースの構造によっても音色に違いが出てきますので、一概にこのジャンルはこの素材、というのは難しく、最終的には演奏する人の好みで選びます。
エボナイト製(ハードラバー)
天然ゴムと硫黄、エボナイトの粉であるエボ粉を原料とする天然素材のエボナイト。ハードラバーマウスピースの多くはエボナイト製の物を指す。メーカーによってはこのエボナイトに石油由来の成分を加えた製品もある。柔らかく落ち着いた音色を出すものからエッジーでスピード感のある音色まで幅広いタイプのラインナップがあり、クラシック、ジャズを始めすべてのジャンルの奏者に好まれ使用される。
金属製(メタル)
金属製にはいくつか種類があり、真鍮、アルミ合金、ステンレス製などが主になる。ダークで深みのある音色を得られるタイプからパワフルでブライトなものなど様々なタイプがある。ジャズやフュージョン、ファンク、ロック系の奏者が好んで使うことが多い。
ほとんどの金属製マウスピースにはメッキが施され、主に金や銀などのメッキの種類がある。
樹脂製
エボナイトが熱硬化性なのに対し、熱を加えて流動化する熱可塑性のレジンやABS樹脂、ベークライトなど主に石油由来の合成樹脂製のものを指す。
音が鳴らしやすく、レスポンスも良く、比較的楽に吹くことができるタイプが多い。
エッジーでパワフルに鳴らす上級者向けのものもあるが、比較的安価で初心者向けの製品も多い。
第5回(最終回)は「日本は世界を席巻するサックス生産国!」(7/26公開予定)。お楽しみに!