サックス記事 庵原良司直伝 BOSSA NOVA & JAZZ
サックス記事 庵原良司直伝 BOSSA NOVA & JAZZ

庵原良司直伝 BOSSA NOVA & JAZZ

THE SAX102号連動CDでボサノヴァ&ラテン系の曲を演奏してくれた庵原良司さんの収録後のインタビュー記事の他、会員限定公開の2ページ、3ページ目では、曲中で披露してくれたグロウトーンやオルタネイトフィンガリングをはじめとする様々なテクニックについて、その演奏法をアルト編、テナー編それぞれ動画で解説してくれた。オルタネイトフィンガリングの運指や、グロウでの声をうならせる際の音程など、プロ奏者のテクニックが余すことなく解説、披露されている。動画を見て真似してサックスプレイヤー憧れのテクニックをモノにしよう!!

ジャズもフュージョンもポップスもと、幅広く各ジャンルで引く手数多の庵原さんですが、今回 レコーディングしていただいたボサノヴァやラテン系の音楽を演奏する機会は多いですか?
庵原良司
実はそれほどないんですよね。とはいえ、もちろん過去には演奏したことのある曲ばかりですけど。例えば、僕は学生の頃に夜の店で5千円くらいのギャラをもらってバンドで演奏するアルバイトをしたことがありまして。「オムニブック」とか「スタンダード・ブック」の中から曲を選ぶんだけど、その際に『イパネマの娘』を演奏した憶えがありますね。ただ、じっくり曲と向かい合うチャンスが今までなかったので、今回は新鮮な気持ちで取り組みました。
今回のCD収録曲で他に馴染みがあった曲はありますか?
庵原
どの曲も有名なので知ってはいるし聴いたこともありますよ。みんなが吹きたいと思う曲ばかりですよね。だから、なかにはアマチ ュア時代にはよく演っていた曲もあるんだけど、プロになってからは吹く機会がどれもあまりなかったですね。その辺は有名曲ならではというところでもあります。しかし、この時代の有名曲はよくできていますよね。『オルフェのサンバ』もシンプルだけど、ちゃんと仕掛けもあって。あと『マシュ・ケ・ナダ』のような誰もが知っているメロディを吹くというのも、なかなか緊張感がありましたね(笑)。
なかでは『キャラバン』などは、演り馴れた曲ではないですか?
庵原
そうですね。ジャズでもよくやる曲だし、大学のビッグバンドでも演奏したことがあるはずですけど、最近はやってなかったですね。今回はラテン寄りのテイストで途中に4ビートを挟むアレンジにしてみました。でもやっぱり難しいですよね。というか世の中には簡単な曲はないです(笑)! シンプルな曲はシンプルだからこその難しさがあるし、コードチェンジが多い曲はそれを追いかける難しさがある。
『想い溢れて(シェガージ・サウダージ)』『波(ウエイブ)』というアントニオ・カルロス・ジョビン作のボサノヴァ・スタンダードはどうでしょう?
庵原
ボサノヴァの難しいところは、あっさり演奏すると物足りないし、歌い込みすぎると粋じゃなくなる。ちょうどいい過不足のない絶妙な加減があるんですよ。リズムも前に行っても後ろに行ってもダメ、かと言ってジャスト過ぎてもダメだし。まあ、どの音楽でもそうだと思うけど、特にボサノヴァは、そこが難しいですね。
他に、こういうジャンルの音楽を演奏するにあたって心がけたことはありますか?
庵原
ブラジルものとラテンものって、僕らからすると似ている感じで捉えたりしますが、やっぱり明確な違いがあるんですよね。でも僕はブラジル音楽を本職にしている人やラテン音楽を本気で演っている人のようにはできないので、そこはジャズというフィルターを通してアプローチしようということは考えました。ボサノヴァも他のラテン・ミュージックもジャズと相互に影響しあって発展した歴史がありますからね。
では、レコーディングで使用した楽器とセッティングを教えてください。
庵原
アルトはウッドストーンです。普通のゴールドラッカーの楽器です。マウスピースはダダリオの5番です。リガチャーは昔から持っているセルマーですね。リードはバンドーレンJAVAファイルドカットの3 1/2です。テナーは10万番台のセルマーマークⅥ。マウピースはオットーリンクのフロリダ6☆。リガチャーもオットーリンクでもっと古いものですね。リードはウッドストーンの3 1/2です。
最後に、今回の付属CD収録曲のなかで最もチャレンジしがいのある上級者向けの楽曲はどれでしょう?
庵原
アルトもテナーも『キャラバン』じゃないですかね。コンディミ、オルタードといったスケールが満載のソロになっているので、吹いている方がいたら見てみたいですね(笑)。
逆に、初級者~中級者に最も手が届きそうな楽曲というと?
庵原
『 オルフェのサンバ』ですね。コード進行にジャズのエッセンスがたくさん入っているので、Ⅱ-Ⅴのアドリブのラインなどをわざとたくさん入れてあります。だから、そこだけ切り取って他の曲に使ったりもできると思います。いわゆるリックと呼ばれるフレーズの定型文のようなものですね。最初は難しいかもしれませんが、ゆっくりのテンポから練習して習得してほしいですね。今回は気心の知れたメンバーとリラックスして録音することができました。同世代の凄腕ミュージシャンの演奏も聴きどころの一つですね。
その素晴らしい演奏がカラオケになっているので、今回の付属CDはさらに貴重なものになりました。ありがとうございました。

次ページ→THE SAX 102号掲載曲で披露したテクニックを動画で解説

登場するアーティスト
画像

庵原良司
Ryoji Ihara

1979年9月3日生まれ。中学より、吹奏楽部でクラリネットを始める。早稲田大学入学を機にアルトサックスを始める。大学三年の時からテナーサックスを始め、四年になる前に佐藤達哉氏に師事、四年の時にハイソサエティーオーケストラでヤマノビッグバンドコンテストに出場。最優秀ソリスト賞を受賞。在学中に太田市ジャズコンテストで個人賞、吉祥寺ジャズコンテストでジャズライフ賞を受賞。卒業を機にプロとして活動を始める。主な活動歴として、マンハッタントランスファー、SMAP、TUBE、Kinki Kids、aiko、SOFFet 等のツアーに参加。久保田利伸、相川七瀬、堂本剛、石井竜也、ピンクレディやCM等のレコーディング。自身のバンド、オレバンドを始め、round-a-bout、つのだ☆ひろバンド、稲垣貴B.B、内堀勝B.B等に参加

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