サックス記事 TENOR Axos  ×  松下洋 試奏レポート
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THE SAX vol.104

TENOR Axos × 松下洋 試奏レポート

GEAR

サクソフォンのスタンダードを常に提示してきたセルマー・パリから、新たにプロフェッショナル向けサクソフォンのポテンシャルを受け継ぐモデル“テナー・サクソフォンAxos”がリリースされた。高いスペックを有するこの楽器を、クラシックからジャズまでボーダーレスに活躍中の若手本格派サックス奏者、松下 洋氏に試奏・徹底レビューをしてもらった。

Axos
初めて楽器を手にする初心者にとって、この楽器はいかがでしょう。
松下
とてもいい選択肢だと思います。初心者だとシリーズⅢなどのモデルはコントロールするのが少し難しい部分もあります。しかしAxosは最初からセルマーらしい音色がボンと出るので、吹いていて楽しくなると思いますよ。アルトなどからの持ち替えも楽だと思います。
 
テナーAxosの価格に対するスペックというコストパフォーマンスの面ではどのように感じられますか。
松下
シリーズⅡとシリーズⅢに比べて20万円以上Axosのほうが安いとなると、かなり迷うところですね。Axosはそもそも初心者だけでなくプロユースにも耐える楽器なので、その意味では買っても後々決して損はしないでしょう。そして手彫りの彫刻が入っていますから見た目も決して劣っていません。自分が中学生、高校生で楽器購入の予算が限られているような状況なら、Axosを選ぶと思います。もちろんシリーズⅡとシリーズⅢとの20万円の価格差に全く理由がないというわけではないです。セルマーの楽器ならではの特徴として、シリーズⅢの細くてタイトなpppの音色感はどの楽器よりも優れています。ヴァイオリンのE線の高音を使ったか細いヴィブラートや、オーボエのような音色を出すことも可能です。しかし実際にそのような音色を出すシチュエーションは、プロ奏者にしてもそこまで多くないとも思います。最高速が速くて加速もいい代わりに少し操作が難しいスポーツカー的なシリーズⅢを選ぶか、スポーツカーほどのハイスペックではないものの普段使いには最適で街乗りセダン的なAxosを選ぶか、というイメージでしょうか。
 
Axos
Axos
 
最後に、このTenor Axosはどのようなジャンルの奏者に勧めたいですか?
松下
まず吹奏楽を挙げたいですね。この楽器にはセルマーS80 C☆のマウスピースが付属していますが、このセッティングを用いると吹奏楽で使いやすそうな感覚でした。シリーズⅡやシリーズⅢなど他の楽器では音量や音色をコントロールしないと合奏の中で鳴りすぎてしまうこともありますが、Axosなら、例えばユーフォニアムなどの音域の近い楽器とアンサンブルして音色を溶け込ませたい時などにも苦労しないと思います。楽器の重量が他のセルマーの楽器と比べると若干軽いようなので、その意味でも中高生におすすめできると思います。バンドーレン オプティマム TL3のマウスピースを使って試奏した時はソロに最適な楽器だと感じました。カラオケやピアノ伴奏などで演奏をしたい時には、こういったソリスティックな音色、音量を持ったマウスピースと組み合わせるのが良いと思います。また、Axosは中・低音が太く柔らかなボトムのある音色なので、カルテットで使えば、バリトンとの音色が合いやすいでしょう。ポップスなどの低音のハーモニーが重要視される曲では充実したサウンドを簡単に作ることができると思います。選択するマウスピースによってシチュエーションに合った音を作ることができる懐の深さを持つ楽器です。
 
TENOR Axos
・メタル製レゾネーターつきレザーパッド
・樹脂製サムフック
・軽量化したネックソケット
・管体に、はんだ付けした譜ばさみ(ライヤー)装着部
・アクソス限定の“S”ネックオクターブキー
・アクソス限定の彫刻デザイン
・アクソス テナーサクソフォン用に開発されたゴールドラッカー
・セルマーS80 C☆マウスピース
・Tenor Axosケース付属
希望小売価格:530,000円(税抜)
この楽器に関するお問い合わせ 野中貿易株式会社 www.nonaka.com

 

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