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Gottsu Solid Silver Ligature完成!!
世界一のマウスピース制作を理念に掲げるGottsuより、Solid Silver製のリガチャーがリリースされ、すでにサックス奏者の話題となっている。
そこで、このGottsu Solid Silver Ligatureのポテンシャルを体感するため、実際に試奏させてもらい、また製作の様子もリポートさせてもらった。
その様子をお届けしよう。
驚きの音の余韻
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早速試奏させていただき、音の響きや余韻に正直驚きました。下締めのスタンダードなリガチャーとも吹き比べましたが、リガチャーを替えることでこれだけの違いを感じるものなんですね。
後藤
そうでしょう(笑)。この音の太さを味わってしまうと、なかなか普通のリガチャーには戻れないと思いますよ(笑)。
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最初にこのリガチャーを見た印象は、見た目の重厚さから、音量は出るけどあまり響かないタイプかな?と思っていましたが、こんなにサスティンがあるとは思いませんでした。
後藤
吹くのにガッツが要るタイプに見えるでしょう(笑)。例えばサックス本体もシルバーの楽器は吹奏感が重く感じると思いますが、このリガチャーにそういった重さは感じないでしょう。
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銀製の楽器やパーツに対する印象として、丸くて柔らかい音がする反面ヘヴィーな吹奏感のイメージがありますね。これだけ響きがあって、アーティキュレーションの反応も素早く、吹き味も心地よいのには驚きました。
後藤
そういった響きや吹奏感は、最後のハンマリングで調整しているんです。それをやらないとヘヴィー過ぎる吹き心地なってしまいます。どの程度ハンマリングするかは秘密だけど、その加減がとても微妙で、その仕上げによって金属が硬くなることで吹奏感に影響が出るんです。
「100% Gottsu 製」半端ないこだわり
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ハンマリングの打痕は、見た目にもいい味を出してますね。
後藤
この槌目は、意味があってわざと残しているんです。ツルっとした表面に仕上げると音色もツルっとしたものになってしまうので…。先ほど試奏してもらって、音の響きや程よい抵抗感を感じてもらったと思うけど、それはこの槌目が深く関わっています。
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銀の厚みや長さも音色、吹奏感に大きく影響すると思いますが、銀材は特注でオーダーされているんですか?
後藤
銀を溶かすところからウチでやってるんです。
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市販の銀板ではなく、銀材を作るところから行なってるんですか?
後藤
最初は市販の銀板で作っていたんだけど、いまいちで。
結局銀材を溶かしていろいろな太さを作って試した結果、現在の響き、音色、音圧が得られたんです。市販の銀板は規定の太さしかないので、一から作るしかなかった訳です。
結局銀材を溶かしていろいろな太さを作って試した結果、現在の響き、音色、音圧が得られたんです。市販の銀板は規定の太さしかないので、一から作るしかなかった訳です。
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とても手のかかる作業ですね。さすがGottsuさん、こだわりが半端ないです。
後藤
もともとの銀材は950シルバーですが、そうやって銀を溶かし打痕して作ることで、最初に市販の銀板で作っていた頃の単純な音ではなくなり、複雑で厚みのある響きが生まれました。
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銀の厚さもですが、長さや製法にも秘密があるのでしょうか?
後藤
何度も作っては失敗を繰り返し、その失敗の中でもたまたま工程のミスをした時にすごくいいものが出来上がったんです。それでその失敗を検証してわざと再現したらそれが正解で、いまのリガチャーになりました。結果としては製作工程が一手間増えてしまったんですが、失敗が成功の元でした(笑)。
槌目模様が個性的
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完成品のリガチャーはマウスピースに合うようなテーパーが見受けられますが、これはいつ形成するんですか?
後藤
ベンダーで銀を丸めたときは真円で、次にテーパーの付いた芯金に当ててハンマリングを施し80%くらいの形(テーパー形状)に整えて、それからネジの部分をロウ付けして、その部分をカットする。その後、ロウ付けで熱を入れたので、もう一度ハンマリングを施して仕上げていきます。最後にCNCマシンで「Gottsu」のエンブレムを入れて完成です。ウチにはせっかくCNCマシンがあるので、しっかり活用します(笑)。エンブレムの他に、ネジもCNCの削り出しで作ります。CNC以外の部分はすべて手作りなので、見た目は一つひとつ少しずつ違うのも特徴です。
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その違いも個性的でいいですね。ルックスはもちろんサウンドもコントロール性も素晴らしい、ハイスペックかつプレミアム感漂うリガチャーですね! しかしハンドメイドということはそれほど量産できないのでは?
後藤
作れて1日に3個ほどですが、発売開始から、ソプラノ、アルト、テナー、バリトン。またクラリネットまでラインナップがすべて揃ったので、ぜひ多くのプレイヤーの方に試してほしいと思います。
- 1
材料となる950シルバー材 - 2
950シルバー材をバーナーで加熱して溶解 - 3
溶解した950シルバーをあて型(ブランク)に流し込み銀棒を成型する - 4
このような銀棒ができあがる - 5
ある程度形を整える - 6-1
圧延ローラーで銀棒を伸ばしていくが、一気に圧延すると金属が割れてしまうので、何度か「焼入れ→焼きなまし→伸延」を繰り返し、規定の厚さになるまでこの作業を行なう。 - 6-2
- 7-1
側面の縁をある程度ヤスリで整え、ちょうどよい長さにカットするための印(線)を入れ、糸鋸で規定の長さにカットする - 7-2
- 8
ベンダーでマウスピースの形状に沿った筒状の丸みをつける - 9
さらに「焼入れ→焼きなまし」を行ない、その後さらに丸みを整える - 10
つなぎ目部分を並行にするため糸鋸で切れ目を入れる - 11-1
銀板を筒状につなげるための銀ロウ付け作業。銀ロウがしっかり回るようにフラックスを使う - 11-2
- 12
銀ロウ付けによって筒状につながった - 13
テーパーの付いた芯金に装着してハンマリングを行なう。この作業で、打痕によって金属分子が硬化すると同時にマウスピースに合うテーパーが形成される - 14-1
いよいよネジ受け部分のロウ付け。治具にしっかり固定し、熱によってネジ受けが変形しないように、ネジ受けにネジを付けたままリガチャーの本体に銀ロウ付けする - 14-2
- 15
銀ロウ付け後、ネジ受けからネジを外し、糸鋸で分割する - 16-1
糸鋸で切削した面をヤスリで整える。その後、再び芯金にはめてハンマリングを行なう - 16-2
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クルミの殻を研磨材にした研磨機で全体を磨いて完成 - 18
写真は、「Gottsu Solid Silver Ligature」をAlto用マウスピース Gottsu Sepia Toneに装着した様子
Gottsu Solid Silver Ligature
販売価格:
Rubber Soprano 用:¥41,800(税込)
Rubber Alto 用 / C Melody:¥44,000(税込)
Rubber Tenor 用:¥46,200(税込)
Rubber Baritone 用:¥49,940(税込)
B♭ Clarinet 用:¥44,000(税込)
Metal Tenor (Master 2021・Double Ring) 用:¥41,800(税込)
素材:本体:ソリッドシルバー(SV950) / ネジ:ビンテージブラス