サックス記事 YAS-82Z&YTS-82Z 仕上げ違い吹き比べ
  サックス記事 YAS-82Z&YTS-82Z 仕上げ違い吹き比べ
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庵原良司×鈴木 圭

YAS-82Z&YTS-82Z 仕上げ違い吹き比べ

GEAR

Tenor Saxophone

テナー ゴールドラッカー仕上げ(鈴木さん試奏)

鈴木 とてもバランスがいいですね。上の倍音のビーンと管体に響く部分がしっかり出ていますし、それでいて変に強調されたり膨らんでいる成分がない。
庵原 アルトでも感じたけれどバランスいいよね。企業努力なのかな。
鈴木 適度に吹奏感が軽い。軽いというとネガティブなイメージを持つ方もいるかもしれないですが、決して悪い意味ではないです。こちらの言いたいことが楽器にそのまま伝わるので、表現をする上での道具としてもとてもいいです。
庵原 我々は一人で吹くのは試奏の時くらいで、あとは必ず誰かとアンサンブルしています。楽器単体でいい音でも、他の楽器と同じ帯域に音の成分があると意外とマスキングされてしまうことがあるんです。その意味で、このゴールドラッカーはセッションでも埋もれなさそうでいいと思います。

テナー アンバーラッカー仕上げ(鈴木さん試奏)

鈴木 お、ゴールドラッカーと全然違う!
庵原 本当だね、このままジャズクラブに行ってそのまま吹ける感じだね。
鈴木 音の粒立ちがはっきりしています。ラッカーに比べて重さはありますが、その分こちらが寄りかかった時に音色の濃い成分が輪郭側に寄ってしまい、コアの密度が薄く聞こえるのではなく、全体で受け止めて向こう側に伝えてくれるような安心感があります。
庵原 音をベルの先でまとめてくれている感じというか。
鈴木 クレッシェンドしても音色が一旦閉じて潰れてしまうところがなくて、そのままシームレスに音色が開いてくれるのがいいですね。
庵原 アルトとアンサンブルしてみても、ちゃんと音に存在感がありますね。倍音が消し合わないというか。
鈴木 上の倍音成分がよく出ていて、その下の成分がほんの少しだけタイトになっているので、2管でも問題ないんでしょうね。
庵原 圭さんこれ向いていると思う。嬉しそうに吹いているし(笑)。
鈴木 手持ちのゴールドラッカーと置き換えもありか……?

テナー ブラックラッカー仕上げ(鈴木さん試奏)

鈴木 見た目、迫力ありますね。
庵原 テナーは大きいから余計にそう感じる。
鈴木 なるほど、確かに庵原君のいうとおり一番上の成分は少ないですね。今日使っているマウスピースは強めの、上の成分がよく出るマウスピースなので、組み合わせとしてはちょうどいいかもしれない。
庵原 そうそう。音が開くようなマウスピースを持っていてバランスを取りたい人か、クラシックのようにそもそも音を開きたくない奏者に向いていると思う。
鈴木 いまの楽器で音がビャーっと開いてしまう人は、この楽器ならいい感じに落ち着かせてくれるかもしれない。試す価値はあると思います。
庵原 アルトの試奏ではちょっとマットな音質でしたが、こちらのセッティングとの相性もあったのかも。今はクリアに聞こえていて、他の楽器とセッションすると良さそうな気もする。
鈴木 デュコフとか音色が少し開いていてパワーで押せるマウスピースとの相性が良さそうです。この楽器の場合はあまりしんどくないセッティングとあわせると良さそうだね。

テナー 銀メッキ仕上げ(鈴木さん試奏)

庵原 かなり長く吹いてますけれど、これ、圭さんが何のチェックしているかわかります? この楽器を仕事で使えるか、本気のチェックですよこれ(笑)。
鈴木 やっぱり自分の楽器との違いが気になってしまうよね(笑)。いま所持している楽器とはネックが違うんです。この試奏品はV1ネックで、低音でも音の粒立ちがはっきりしますね。
庵原 流石に銀メッキの楽器を吹き慣れている感じはあるね。
鈴木 吹きすぎてしまうと上の倍音が痛い音になってしまうと体感でわかっているからね。
庵原 銀メッキはやっぱり流石に音が強いですね。アルトと2本のアンサンブルで演奏してみても、ちゃんとテナーの存在感がある音がしますよね。
鈴木 あと、銀メッキの楽器は低音のサブトーンの反応がとても速いというメリットもあります。立ち上がりがいいので使いやすいです。
庵原 すっきりした音で立ち上がりもいいね。この楽器、お買い上げです!(笑)

テナー アンラッカー仕上げ(鈴木さん試奏)

鈴木 吹いていて楽しいな、ずっとこの小さめの音量で吹いていたい。
庵原 でも、吹き込んでもすごくいい音してますよ。銀好きのあなたには不本意かもしれませんが(笑)。
鈴木 (楽器の抵抗感に息の圧力を掛けて)寄りかかれないのかと思っていたけれど、意外としっかり寄りかかれるので吹きやすい。
庵原 弱音から強奏までシームレスに行き来できるのが一番いいね。
鈴木 サイドキィを使う高音でも音質が変わらない。軽い吹奏感でちゃんと繋がるし、開かせたい時は音色がしっかり開いてくれる。
庵原 ただ、こうやって横で私がアルトを吹くと、急に存在感がなくなってしまう。
鈴木 低い倍音の成分はいるけれど。トランペットとかと一緒に吹いても沈んだように聞こえてしまうかもね。
庵原 お互いアンラッカーの楽器だったらアンサンブルは成立するはずです。
鈴木 やっぱりアコースティックの生音が良さそうですね。ソリストや、一人で吹くことが多い奏者におすすめしたいです。

 

アンバーラッカー仕上げは現代のヴィンテージサックス

試奏の総評をお願いします。
鈴木
アンバーラッカーは、見た目通りいい意味でヴィンテージ感がありました。ヤマハさんの狙い通りだと思います。
庵原
ゴールドラッカーよりも少しマットな音色感で、でもちゃんとハイの成分もあるので吹きやすい。
鈴木
吹奏感の軽さも適度にあって、音の粒立ちもとても良かったです。現代のハイスペックな“ヴィンテージサックス”ですね。
庵原
あと、アンラッカーはイメージと違ったね。
鈴木
そうだね、違った。
庵原
我々の仕事で、他の楽器とアンサンブルをすることを考えると難しいけれど、ジャズだけならこれを選ぶかも。
鈴木
読者の皆様は普段の我々とは違い、マイクなど音響装置に頼らない環境で吹くことが多いと思うので、吹いてみる価値は十分にあると思います。
庵原
ジャズセッションにこの楽器を持って現れたら絶対かっこいいし、そういう場ではどうしても耳障りな音を出してしまいがちですけれど、この楽器はその成分が少ないのでいいと思います。
最後に、自分で吹いて気に入った楽器と、お互いに相手へオススメな楽器を教えてください。
庵原
仕事で選ぶなら金メッキ、もしジャズクラブに通うおじさんだったとすればアンラッカーかな。圭さんにはアンバーラッカーか、先ほど試奏した銀をいま持っている銀の楽器と入れ替えるのをおすすめします(笑)。
鈴木
個人的にはアンバーラッカーですね。生徒さんなどに勧めるなら、アンラッカーもぜひ試してほしいと思いますが、結局ゴールドラッカーに落ち着くのかもしれません。庵原さんは金メッキが良かったな。粒がしっかり聞こえるし、弱音も吹きやすそうだったよ。
庵原
お、カップル成立(笑)。
 
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