シエナ・ウインド・オーケストラ 第50回定期演奏会
2020.8/30(日)文京シビックホール 大ホール(東京)
[出演]原田慶太楼(Cond)、独奏:住谷美帆(ソプラノ・サクソフォン)
[曲目]ジョン・マッキー:セイクレッド・スペース/ソプラノ・サックスとウインド・アンサンブルのための協奏曲/吹奏楽のための交響曲「ワインダーク・シー」
Photo:K.Miura
7月に予定されていた本公演。コロナの影響を受け8月30日に延期され、入場者数も大幅に減らしての開催となった。とはいえ、会場は生演奏を待ちわびている聴衆で開演前から熱気が感じられるほど。
今回のプログラムはオール・ジョン・マッキー。シエナ創立30周年と第50回定期という節目にふさわしいものを、と指揮者の原田慶太楼氏がセレクト。原田氏がマッキー氏と親交もあることから実現した。
コンサートは『セイクレッド・スペース』のホルンの華やかなハーモニーから幕を開けた。約5分の短い序曲であるが、躍動感と疾走感に溢れた演奏で、久しぶりの生演奏に鳥肌が立つほど感動した聴衆も多かったのではないだろうか。メンバーも熱のこもった演奏を繰り広げているのが客席にいてもひしひしと伝わってくる。
2曲目はサックス奏者の住谷美帆氏をソリストに迎えての協奏曲。住谷氏は繊細な高音を美しく聴かせつつ、低音ではパワフルなエナジーを感じさせてくれる。曲はパズルのように立体的で、原田氏がソリストとバンドの一体感を作り上げていく。
フィナーレのカデンツァで住谷氏は、艷やかな音色でスケールの大きい演奏を聴かせてくれた。機会の多い『ワインダーク・シー』。紀元前8世紀頃に成立した叙事詩「オデュッセイア」から、マッキー氏が3つの場面を音楽化したもので、3楽章で構成されている。1楽章はホルンのトゥッティから始まり、2楽章のハープからクラリネットにつながるソロでは、天上の光が見えるような音色を聴くことができた。3楽章では不安げなメロディが次第にリズミカルなり華々しくなっていく。
アンコールでは、住谷氏もバンドに加わり『レッドライン・タンゴ』とシエナの定番曲『星条旗よ永遠なれ』(今回は聴衆の参加はなし)を演奏して幕を閉じた。いずれの作品も、アメリカの音楽、マッキー氏の音楽をよく知っている原田氏のバンドを牽引する力が、音楽に大きなパワーを与えていると感じさせる演奏だった。
聴き終えた後、吹奏楽のダイナミックなハーモニーの余韻を楽しんでいた聴衆は多かったに違いない。音楽の力は偉大、まさに心からそう感じた演奏会であった。