サックス記事 BUFFET CRAMPON“PRODIGE” 松井宏幸 試奏レビュー
  サックス記事 BUFFET CRAMPON“PRODIGE” 松井宏幸 試奏レビュー
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BUFFET CRAMPON“PRODIGE” 松井宏幸 試奏レビュー

GEAR

このたび、BUFFET CRAMPONから待望のアルトサックス“PRODIGE”が発売された。普段はSENZOを愛用する、東京佼成ウインドオーケストラのサックス奏者、松井宏幸氏に新機種の実力のほどをうかがった。

銘器「PRESTIGE」を彷彿させる、万能型サックス

ビュッフェ・クランポンから待望の新モデルが発売されましたが、PRODIGEはビュッフェの中ではどんな立ち位置になりますか?
松井
アルトだと、BC8101やBC8401という10万円台のスタートキットのサックスがあって、その上はSENZOというプロモデルがあるのですが、ちょうどその間を埋める楽器ですね。
今回、選定されたそうですが、実際に吹かれてみてどうですか?
松井
吹いた瞬間にビュッフェ・クランポンの音がします。造りもしっかりしているので、選定をしても個体差が少なく、正直どれも甲乙つけがたかった(笑)。音色は、旧モデルのPRESTIGEのようにキラキラと明るい音色がします。輪郭がはっきりしているから音も聞こえやすいし、音の立ち上がりも速いです。それでいて抵抗感もあるので、吹き込んだものがしっかり鳴ってくれる安心感があります。
松井さんはアルトはSENZOを愛用されていますが、比べてみていかがですか?
松井
価格的にはSENZOよりだいぶ安いのですが、下のグレードの楽器という印象はまったくなくて、むしろビュッフェの旧モデル「S1」と「PRESTIGE」のように音の傾向が違うと思いました。僕は以前、S1、PRESTIGEと使ってきて、SENZOが出た時にまるでS1のような音色だったので「やっぱこれだよなー!」って思ってSENZOにしたんですけど、今回PRODIGEを吹いみて「あれ? これPRESTIGE? これもいいぞ!」っていう感覚になりましたね(笑)。
SENZOの音色は重厚感のあるダークで柔らかい音色が魅力で、自分を中心に円状に響きが広がっていくのに対して、PRODIGEは明るく華やかな音色で、遠くに音が飛んでいくイメージですね。PRESTIGEを吹いた時の爽快さというか、あの気持ちいい鳴りがありました。
 
 
それはPRESTIGEを愛用していた人には嬉しいですね!
松井
S1もPRESTIGEも今はないですし、新しいモデルとしてそれに代わるものが出てきたのは嬉しいですよね! だからこの楽器は、SENZOより安いからプロは使わないという選択肢じゃなくて、例えばヤマハのEXを使っている人が、ポップスで82Zを使ったり、ビッグバンドで62を使ったりするのと同じように、ジャンルやシーンによる使い分けがしっかりできる楽器だと思います。
例えばどういうジャンルに向いていますか?
松井
どのジャンルでも使える万能さがあります。音色がビュッフェ・クランポンなので、クラシックのセッティングを使えばクラシカルなサクソフォンの音が出せるし、もともとの音色が明るいのでポップスでも映えるし、もちろん吹奏楽にも向いている楽器だと思います。僕だったら、オケのソロとかで使いたいですね。目の前の弦を越えて、遠くに音をしっかり届けるときに使いたい。その辺もPRESTIGEに似てるんですよ(笑)。
それらを踏まえて、どういった人にオススメですか?
松井
吹奏楽から始めて、そのあと本格的に音大に行ったり、音楽の道に進んでいっても使っていける楽器なので、最初に手にする“長く使う一本”としてオススメしますね。
最初の楽器として、特に学生さんにオススメできるポイントは?
松井
メカニックってすごく大事で、例えば中学生の女子だと手も大きくなかったりするから、キィとキィの隙間があると指が引っかかってもたついたり、指を無理に開くと構えも崩しやすい。その点、PRODIGEは造りがコンパクトで、指を開かなくてもキィを押さえられます。あとは楽器が軽いのもこの楽器の特長。子どもが長時間首からぶら下げるのってかなり負担で、小学生だと数分で「首が重い」って感じちゃうので、楽器が軽いのはメリットですよね。それでいて一生懸命やろうとしている子の要求にも応えてくれる楽器なので、そういう意味でも長く使える一本になると思います。


そう考えるとこの価格帯は嬉しいですね!
松井
この価格帯の楽器が今は少なくなったので、このクオリティの楽器がこの値段(右頁参照)で買えるのはありがたいですよね! 最初から無理してハイクラスの楽器を買う必要はないですし、練習していって自分の実力も上がっていったときに、「自分が出したい音が出せる楽器」を選べばいい。そのときに、パッと吹いて「これだ!」って思ったものを使うのが本当のステップアップですよね。楽器選びはもちろんピッチも大事だし、持った時の感触や吹き心地も大事だけど、僕は「自分の好きな音が出るか」を一番大事にしてます。自分の音って、自分が一番近くで聞くし、毎日聞かなきゃいけないから(笑)。ピッチは自分でカバーできるけど、楽器が持っている音色は変えることができないですからね。
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