サクソフォンの歴史|前編
THE SAX 65号と66号で、我々がこよなく愛するサクソフォンという楽器をこの世に生み出したアドルフ・サックスの生誕200年を記念して、サクソフォンが170年の歴史のなかでどのように進化してきたのかを前後編の2回に亘って振り返った。
サクソフォンの歴史
THE SAX 65号と66号で、我々がこよなく愛するサクソフォンという楽器をこの世に生み出したアドルフ・サックスの生誕200年を記念して、サクソフォンが170年の歴史のなかでどのように進化してきたのかを前後編の2回に亘って振り返った。前編では人気奏者であると同時にヴィンテージサックスの研究者、そしてコレクターとしても名高い宮崎真一氏に寄稿してもらった。
また、THE SAX vol.65、66号に掲載したサクソフォン年表も併せて参照してもらいたい。
(文/年表作成:宮崎真一)
ベルギーの楽器製作者アドルフ・サックス(1814-1894)が発明したサクソフォンはゼロから生み出されたまったく新しい楽器ということもあって、音楽の進化とシンクロしながらそのサウンドを今日も進化させ続けています。しかしジャズ/ポピュラーの世界ではヴィンテージサクソフォンの人気は高く、近年はクラシカルサクソフォンでも注目度が高まってきています。とは言え残念なことに現状では多くの人の興味の対象はモダンジャズ黄金期の銘器かアドルフ・サックスのどちらかで、全部まとめて単純に「昔の楽器は良い楽器」と語られがち。実はそこに至る試行錯誤の過程にこそサクソフォンだけが持つ音楽と社会の進化と密接にリンクした波瀾万丈な物語があるのです!
この記事ではサクソフォンの歴史のうちの前半部分、つまり誕生から成人までの成長の物語を紹介します。普段何気なく吹いているサクソフォンに対して歴史的な認識を持つことで、この楽器のさらなる魅力を発見できるのではないでしょうか。
紹介するサクソフォン
アドルフ・サックス社 アルト(1869年)
ビュッフェ・クランポン 「イヴェット&シェファー」アルト(1912年)
コーン 「Wonder」アルト(1912年)
コーン 「New Wonder」Cメロディ(1921年)
コーン 「New Wonder」カーブドソプラノ(1923年)
ホルトン 「ルディー・ウィードフト」テナー(1929年)
コーン 「6M」アルト(1930年)
アメリカンセルマー 「バランスドアクション」テナー(1936年)
キング 「スーパー20 シルバーソニック」アルト(1945年)
ブッシャー 「400」テナー(1942年)
ビュッフェ・クランポン (1875年頃)アルト
エデュアール・サックス (1910年代)アルト
ブッシャー 「トゥルー・トーン」(1940年頃)アルト
セルマー 「Model 26」(1926年)アルト
クラシカルサクソフォン奏者として数多くの作品を世界/日本初演。国内外にて演奏会を催す。楽器史研究家としてサクソフォンの発達と社会のかかわりを研究。専門誌などに記事を執筆。国立音楽大学卒業。早稲田大学理工学術院アドヴァイザー。石森管楽器クラシカルサクソフォンコース講師。
雲井雅人
Masato Kumoi
国立音楽大学を経てノースウェスタン大学大学院修了。第51回日本音楽コンクールおよび第39回ジュネーヴ国際音楽コンクールで入賞した。1984年東京文化会館小ホールでリサイタル・デビュー。2012年ハンガリー・ソルノク市立交響楽団、2013年「香港国際サクソフォン・シンポジウム」、2014年「シンガポール木管フェスティバル」などで協奏曲を演奏。2016年インディアナ大学にてオーティス・マーフィー教授のサバティカルリーブにともなう客員教授を務める。2017年アメリカ海軍ネイビー・バンドのサクソフォン・シンポジウムに招待されて演奏とマスタークラスを行う。同年、準・メルクル指揮、国立音楽大学オーケストラとドビュッシー「ラプソディー」を共演。2018年NASA(北アメリカサクソフォーン評議会)に雲カルとして招待され演奏とマスタークラスを行なう。2005年と2014年「サイトウキネン・フェスティバル in 松本」に参加。
ソロCDに「サクソフォーン・リサイタル」、「ドリーム・ネット」(バンドジャーナル誌特選盤)、「シンプル・ソングズ」(レコード芸術誌特選盤)、「アルト・サクソフォーンとピアノのためのクラシック名曲集」、「トーン・スタディーズ」(レコード芸術誌特選盤)、「ラクール:50のやさしく段階的な練習曲」、「リベレーション 我を解き放ち給え」などがある。雲カルCDに「ソングス・フォー・ザ・カミング・デイ」、「マウンテン・ロード」、「むかしの歌」、「レシテーション・ブック」、「チェンバー・シンフォニー」などがある。大室勇一、フレデリック・ヘムケの各氏に師事。
「雲井雅人サックス四重奏団」主宰。国立音楽大学教授、相愛大学客員教授、尚美学園大学講師。
宮崎真一
Shin-ich Miyazaki
国立音楽大学在学中よりポピュラーを含む様々な音楽シーンで活動を始める。 現在はソリストとして国内外で演奏を展開するとともにサクソフォンの楽器史研究家として専門誌などに寄稿。吹奏楽コンクールやアンサンブルコンテストなどの審査員として全国各地で指導者としての活動を行なっている。
サクソフォンを石渡悠史、雲井雅人、下地啓二の各氏に、呼吸法などを村田健司氏(声楽)に師事。