サックス記事 Part.3 音色を楽しむ名盤&定番CD
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THE SAX vol.44

Part.3 音色を楽しむ名盤&定番CD

ARTIST
恐怖と壮麗

10. 恐怖と壮麗
【UCCL-9043】ユニバーサル

現代イギリスにおける最高の演奏家であるジョン・ハールは、1980年代以降のイギリス・サクソフォン界の方向性を決定づけました。ジャズ畑の出身でもあるハールは、演奏のみならず作曲や編曲、他アーティストのプロデュースをも手掛け、幅広い音楽ジャンルに対してClassic Saxの存在を知らしめたのです。「恐怖と壮麗」は、そんな"総合芸術家"ハールを代表する一枚。様々な編成で、バロック音楽から現代のポップスまでを縦横無尽に駆け巡る楽曲(もちろんハール自身の作曲)の上で鳴り響くサクソフォン。『本当の恋人をどうして見分けましょう?』は、トヨタ・クラウンのCMに使われたことでも有名です。

 

マルセル・ミュールに捧ぐ

11. マルセル・ミュールに捧ぐ
【TOCE-55284】EMI

国内を代表するサクソフォン四重奏団のひとつ、トルヴェール・クヮルテット。メンバー全員がソリストとして第一線で活躍するほどの技量の持ち主。そんな4人が集まった四重奏団の演奏が、面白くないわけがありません。出版されているCDも多いですが、ここではクラシックに徹したアルバムをご紹介します。グラズノフ『四重奏曲』やボザ『アンダンテとスケルツォ』といった四重奏のスタンダード曲を、丁寧に仕上げています。特にパスカルとリュエフは録音も少なく、この曲に取り組もうとするアマチュアにとってはバイブルとも言える録音です。クラシックの室内楽として、じっくりと聴いてみたい一枚。

 

マウンテン・ロード

12. マウンテン・ロード
【CACG-0039】Cafua

サクソフォンの美しい響きを引き出した演奏にファンも多い、"雲カル"こと雲井雅人サックス四重奏団。演奏会やCDで魅力的な作品を次々と紹介していますが、すべてはマスランカ『マウンテン・ロード』から始まりました。本作品はCDが発売されるやいなや人気を博し、既に国内では定番曲として各所で演奏されています。同曲が収録された雲カルのファーストアルバムは、極上の響きで演奏されるバッハの『パルティータ第4番』とマスランカ作品(作曲者自身も絶賛した演奏!)を対比させた構成。さらに併録されている生野裕久の『ミサ・ヴォティーヴァ』も、ソプラニーノ・サックスを含んだスピード感あふれる名曲です。

 

L'Engrenage〜歯車のように〜

13. L'Engrenage〜歯車のように〜
【alpha518】Alpha

現代最高のサクソフォン四重奏団とも評される、フランスのハバネラ四重奏団。登場以来、"サクソフォン四重奏"という室内楽のジャンルを根本的に覆してしまったと言っても過言ではありません。これまで考えられていたサクソフォンの技術的限界を突破し、聴き手を音楽そのものと結びつける演奏は、各所で高く評価されています。そんなハバネラ四重奏団と、天才即興演奏家ルイ・スクラヴィスとの共演盤「歯車のように」。この強烈なアルバムを、いったいどのような音楽ジャンルへと分類すれば良いのでしょうか? 火花が飛び散るようなスーパーテクニックのアンサンブルから生み出されるのは、これまでに聴いたことのない未知の響きです。

 

Contrasts

14. Contrasts
【ELCD1001649】Melodiya

4年に一度ベルギーのディナン市で開かれるアドルフ・サックス国際コンクールは、世界で最も権威あるサクソフォンのためのコンクールです。2006年大会におけるセルゲイ・コレゾフの優勝がサックス界を驚かせたことは、まだまだ記憶に新しいことでしょう。コレゾフは、これまでほとんど注目されることのなかったロシアのサックス界が生んだ大スター。師匠のシャポシュニコワ譲りでもある「えっ、そこまで?」と驚くほどに楽器を鳴らしきるプレイスタイルが独特ですが、意外なことに録音では大人しい。定番曲が収録されており、吉松隆『ファジイバード・ソナタ』やデニゾフ『ソナタ』などは特に聴きごたえがあります。

 

Sax EXPO!!

15. Sax EXPO!!
【WKCD-0030】ワコーレコード

日本を代表する4人のスーパーソリスト……彦坂眞一郎、宮崎隆睦、國末貞仁、田村真寛を集め、吹奏楽をバックに協奏曲を一曲ずつ演奏してもらってCDを作る、という、アイデアは出ても実現が難しそうな企画ですが、何があったのかこの通り実現してしまいました。新作を含む4つの協奏曲(すべて邦人作品)は、それぞれの独奏者に献呈された曲ですが、奏者のテクニックや音楽性を存分に引き出すことに成功しています(中にはバリトンサックスのソロも!)。もちろん、カッコいい作品ばかりで、ソリストの気合いの入り方も相当なもの。小難しいことを考えずに心から楽しみたいCDです。

 

サキソフォックスのお気に入り

16. サキソフォックスのお気に入り
【SKSF-090910】スーパーキッズ・レコード

動物たちの音楽団、ズーラシアンブラスに仲間入りしたサクソフォン四重奏団"サキソフォックス"のデビューアルバム。『こぎつね』や『ルパン三世のテーマ』、さらには『長崎は今日も雨だった』など、おなじみのメロディがたっぷり18曲も収録されており、文句なしに楽しめる一枚です。演奏も、驚くほどの高クオリティ。さて、注目すべきは、ここで演奏されている曲すべてのアレンジ楽譜が、安価に入手可能なこと。ちょっとしたアンサンブルに最適な楽譜が簡単に手に入るのは、アンサンブルを楽しむ愛好家として見逃せないポイントです。"サキソフォックス"の楽譜シリーズはその数を順調に増やしており、セカンドアルバムの発売が待ち望まれます。

 

Ligeti, Tüür, Levy, Neuwirth, Xenakis

17. Ligeti, Tüür, Levy, Neuwirth, Xenakis
【GEN1064】Genuin

ドイツから注目すべき若手グループが登場しました。その名もソニックアート四重奏団。ファーストアルバムで取り上げられているのは、クセナキス『XAS』を始めとするサクソフォン四重奏のために書かれたハードな現代音楽ばかりですが、瑞々しいテクニックと美しい音色で、聴き手にまったくストレスを感じさせません。ソニック(音速の)アート(芸術)とは、よく名付けたものです。収録されているトゥールの『ラメンタティオ』は、エストニアのフェリー沈没事故にインスピレーションを受けて作曲されました。数ある四重奏曲の中でも例外的に強いメッセージを備えたこの曲を、ソニックアートの面々は見事に演奏しています。

 

Different Worlds

18. Different Worlds
【mar-1804】MARSYAS

こちらもドイツの四重奏団ですが、既に結成15年の中堅どころの団体です。テリー・ライリーとの共演など、興味深い活動を展開しており、今後の活動から目が離せません。これまでにも数多くのCDをリリースしていますが、この最新アルバムが実に面白い! 民族音楽と現代音楽を融合させた響きは耳にもなじみやすく、思わず踊り出してしまいそうな愉悦感、そして先の展開が読めない驚きに溢れています。フリージャズのサクソフォン奏者、ジョン・ゾーンの作品を四重奏向けにアレンジしたトラックが目を引きますが、ここではメンバーの即興も交えながら一段と華やかな演奏を繰り広げています。

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