サックス記事 Dr.Sawamuraの「ゼロから始めるアドリブ入門!」Lesson3
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THE SAX 74号 連載<第3回>

Dr.Sawamuraの「ゼロから始めるアドリブ入門!」Lesson3

LESSON

アドリブができずに悩んでいる読者に向けて送る、沢村氏による連載第3回目!本誌連動の動画・カラオケ音源を利用して、モニター受講生と一緒に体験してみよう!

Sonic Solfa Music Method TM.(渋谷アクタスSelmer Japan 後援)
難しい音楽用語を一切使わずに自由にアドリブが出来る様に工夫 された、効率の高い新しい学習システム、Sonic Solfa Music Method TM.を確立した沢村満氏が、アドリブができずに悩んでいる読者に向けて送るアドリブ入門クリニックが、THE SAX71号よりスタート! 音楽のスタイルではなく、根本的に自分のアイデアで自由にアドリブができるように、この連載を通して沢村満氏がナビゲート! 本誌には演奏例も記載しているが、手順を覚えたら、見ないでやってみることが効果的だ。ここではモニター受講生の動画を中心に紹介しよう。

 

LESSON 3  自由にアドリブするための正攻法手順 
モニター受講生と一緒にやってみよう!
今回も3人のモニター受講生に、連載に沿って実際に体験してもらいました。このプログラムは「自由にアドリブできるための手順」を体感することが目的です。受講生は、それぞれの症状に応じながら処方を受け、手順を体感します。みなさんも自分の状況に照らし合わせて、動画を参考に手順を追ってみてください。手順を覚えたら、誌面の譜例や動画の音をなぞるのではなく、何も見ずに自力でやってみましょう。なお、今回の動画から、sonic歴6年の下總さんにもご協力いただきました。
アドリブ入門モニター受講生
下總友貴
処方箋4
ドレミの便利な歌い方
バークリー音大の授業のイヤートレーニングでも必ず使うこのドレミファソラシドの原形をご紹介します。ドの半音上はド・シャープと歌ったり、ミの半音下をミ・フラットと曖昧に歌うのではなく英語圏のドレミ考案の発想はとても合理的にできています。アメリカのイヤートレーニングの授業では文字を平たく書いて歌います。 sonicの発想は生理的・視覚的に歌うのと同じ感覚で直接脳にリンクするように高さを加えた点が特色です。つまりこの歌い方自体は既にアメリカの音楽教育にありますが、音楽をより体感しやすく、図のように高さを付けたところがsonicの特徴です。イギリスで1840年に始まり、アメリカで1965年に改良。sonicが1980年に再改良。168年の歳月を経て日本で改良された実用的なドレミの図をご覧ください。文部省指導要項ではドレミファソラシドしか普及していませんが、実はこのようにすべての音を的確に歌えるようにイギリスとアメリカの方々が重ねてきた尊い工夫がその背景にあります。

syllable writing & singing
全部覚える必要はまったくありません。今は上記の処方箋の階名だけで十分です。今までの「ラb」は、詳しい階名読みでは「Le」と言います。生まれて初めてやるので戸惑って当然ですね。今はただ、パスワードだと思って好奇心のまま、慣れていきましょう! この詳しい階名読みは英語圏の音楽教育に当たり前に使われています。 特殊なものではなく、ただ日本にその全部が輸入されていなかっただけですので、本場の階名の歌い方に慣れると本場のアドリブがネイティブに話せるようになります。ここからは、英語圏の音楽の歌い方が実用的になりますので少しずつ慣れましょう。この歌い方に慣れると将来的に楽しいことがたくさんあります。お楽しみに!

処方箋5
「変化音」自分の心を変える音

下図のように、ここからは今までのドレミ読みを卒業して英語圏の音楽教育と同じ階名読みDRMで体感していきます。 4つの箱(4小節)を使い、ラの音を変化させた変化音「ラb」=「Le」を加えてやってみましょう!

■まずはこちら→|F S L〜|F S L〜|F S L〜|F S L〜|
■次にこちら→|F S Le〜|F S Le〜|F S Le〜|F S Le〜|
※「ラ」=「L」と「ラ♭」=「Le」のニュアンスの違いを感じ取りながら
カラオケ音源1inC
カラオケ音源1inB♭
カラオケ音源1inE♭


モニター受講生動画

大内さん(演奏歴8ヶ月)


米山さん(演奏歴10年)


富山さん(演奏歴50年)


下總さん(演奏歴17年)


変化音「Le」の基本スケール
Leを含む4つの箱

■手順A:ストップタイム(練習用カラオケ④)
ここから手順に入ります。下の図のように、前半2小節は変化音なし、後半2小節は変化音「Le」のストーリースケールで吹いてみましょう。
Leを含む4つの箱
カラオケ音源1inC
カラオケ音源1inB♭
カラオケ音源1inE♭
処方箋1と同様、ドの音から始められるようになったら、次はレから始めましょう。そして次はミから。つまり、ドレミファソラシド全部の音からスケールを吹いて4小節ぴったりで止まるわけです。両端のドからはみ出ないようにコントロールが求められます。ここでは身体能力が意外と必要になります。「余計なところで変な音を出してしまう」という悩みがある場合、その原因はこの時間感覚が不正確なことに由来します。

処方箋5_手順A:モニター受講生動画

大内さん(演奏歴8ヶ月)


米山さん(演奏歴10年)


富山さん(演奏歴50年)


下總さん(演奏歴17年)
■手順B:ストップタイム(練習用カラオケ④)
D・R・M・F・S・Le・L・T・D のスケール練習の最中に、速く吹きたい時は速く、遅く吹きたい時は遅く、また自分が止まりたいと思った時は、音をストップしてみます。先ほどの練習用カラオケ④を使って吹いてみましょう!

<気持ちの三原則〜自由にアドリブするための3つの意志表示>
①速く吹きたい気持ち
②遅く吹きたい気持ち
③吹きたくない気持ち

Leを含む4つの箱
この際も手順Aと同様に、両端のドから絶対にはみ出ないようにコントロールが求められます。そして、全部の音から始めてみましょう。これが自由にアドリブするために必要な、自分の中から出る必然性エネルギーを引き出します。

処方箋5_手順B:モニター受講生動画

大内さん(演奏歴8ヶ月)


米山さん(演奏歴10年)


富山さん(演奏歴50年)


下總さん(演奏歴17年)


■手順C:枠はずし(練習用カラオケ⑤)
通常、スケールと言うとドからドまでを練習しますが、これを習慣にしてしまうと、ドから下へ、上のドから上へ、とっさに行きたい願望に駆られた時に指が動かない症状が出ます。ここでは、練習用カラオケ⑤を使って、ドからドの枠をはずして、箱の長さを気にせず夢中になって吹いてみましょう。ここまではスケールの範疇ですので、途中の音は飛ばさないように。「Le」と「L」のコントラストが感じられるように、メロディアスにスケールすることがポイントです。



処方箋5_手順C : モニター受講生動画

大内さん(演奏歴8ヶ月)


米山さん(演奏歴10年)


富山さん(演奏歴50年)


下總さん(演奏歴17年)
講座風景

 

■手順D:メロディ創作(練習用カラオケ⑤)
ストップタイムで唯一できなかったアピールは、音を飛ばすこと。今度は、音の横並びをやめて、音を飛ばして自分の個性を最大限アピールしてみましょう! スケール練習ではないので、始めて変化音「Le」の時間帯で「L」を負荷なくて良くなるわけです。言い換えれば、メロディ創作では変化音「Le」の時間帯で「L」は絶対に吹かないようにしましょう!「Le」「L」は近いところにいるので、隣合わせの音は、「Le」の気持ちの邪魔をしてしまうのです。 そこに気を配って、先ほどの練習用カラオケ⑤を使って、自分なりのメロディを創作してみてください。

Leを含む4つの箱
スケールは練習すれば誰でも吹けますが、それができたところで没個性です。アドリブとは自分の個性を音で表現できるところに価値があります。音同士が横並びのスケールではなく、「どのように音を飛ばすか?」にその人の性格や個性が反映されます。自分の感性を信じて音を飛ばしてみましょう! 音を飛ばす判断とその発想は人それぞれ。それが個性豊かなアドリブになります。当たり前なスケールがとたんに曲のように生まれ変わる瞬間です。このようにして個性豊かなアドリブは音を飛ばす創作脳のエネルギーが必要になります。
処方箋5_手順D : モニター受講生動画

大内さん(演奏歴8ヶ月)


米山さん(演奏歴10年)


富山さん(演奏歴50年)


下總さん(演奏歴17年)

 

次号までのホームワーク
4つの箱
■A:スケール>B:ストップタイム>C:枠はずし>D:メロディ創作
の手順で、前半2 小節は変化音なしのスケールで、後半2小節は変化音「Le」を加えたD・R・M・F・S・Le・L・T・D のスケールを使って、どの音からでも正確に吹けるようにしましょう!手順が分からなくなったら、処方箋1 から復習していきましょう。
Leを含む4つの箱
講師紹介  沢村満 

Profile 沢村満…………1975年タンパ・フロリダ州立Chamberlain高校卒業。1981年ボストン・バークリー音楽大学卒業。フィル・ウッズ、ジョー・アラード教授に師事。在学中に2年間理論補講クラスの講師を務める。在学中に結成したグループがランディ・ブレッカーに認められ、来日の際にランディ・ブレッカーの「Jazz Life」誌インタビューで紹介されたことをきっかけに、日本の音楽業界で活動を始める。その後、YMOリーダーの細野晴臣のために作成したデモテープが採用され本格的にレコーディング契約を結ぶ。また、坂本龍一や渡辺香津美などのツアーメンバーとしてサックスとキーボードを担当。さらにキリンビール、キャノン、日産自動車などのCM音楽を手がける。その後、パリコレクションの音楽担当などを経て、細野晴臣主宰の代々木アニメーション音楽学校の理論主任を務めるなかでSONIC SOLFA MUSIC METHOD TM. 登録商標を獲得。以降、メソッドはスキルや知識情報伝達に関しての合理的なシステム開発へと進む。現在、自己のソロアルバムをレコーディング中。