サックス記事 Gottsu×THE SAXコラボレーションマウスピース“Resonance”誕生
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The Sax vol.74

Gottsu×THE SAXコラボレーションマウスピース“Resonance”誕生

GEAR

サックス誌チームと後藤氏がコラボレートしたプロセスやこのマウスピースに対する想い、理想とする音色といった完成までの試行錯誤を紹介!!

ニューヨーク・メイヤーに近づき、そして超える
マウスピースを作りたいResonance誕生に至るまで

Gottsu後藤将彦

フィル・ウッズ、キャノンボール・アダレイ、ルー・ドナルドソン、チャールス・ミンガスとの競演で知られる名手チャールス・マクファーソンなど、ことに魅力的な音色を持つアルト奏者たち。そんな彼らの音色を語るうえで絶対に外せないのが、ヴィンテージマウスピース“ニューヨーク・メイヤー”だ。ジャズレジェンドたちが残してきた数多の音源を聴き、その音色を追い求め、自分の理想としている現代のプレイヤーも少なくないだろう。
この“ニューヨーク・メイヤー”の音色を再現し、さらにそれを超えるようなマウスピースが作れないだろうか……。サックス専門誌『THE SAX』として、長年温めてきた想いをぶつけてみたのが、株式会社 Gottsuの代表として、数々のマウスピースを世に送り出している後藤将彦氏だ。ヴィンテージマウスピースを、現代の最新技術を取り入れ再現すると同時に新たな息吹も吹き込むGottsuマウスピース。そんなマウスピースを手がける後藤氏と取り組んだ今回のコラボレーション企画。その経緯や、マウスピースの完成度についてレポートしよう。

 

理想の音を求めて半年……

後藤氏とTHE SAX、お互いに強い覚悟をもって臨んだマウスピース作りは試行錯誤の連続だった。THE SAXとして、長年の取材で取り上げてきたクオリティの高いマウスピース。特にヴィンテージのメイヤーや、それをリスペクトして作られた現代のマウスピースなどの造りを確認し、思い浮かべて、バッフルからチェンバーへの落とし込み、バンプの角度、サイドウォールの掘りの深さ、チェンバー容積、全体の太さなど、常に後藤氏と議論を交わしながら理想へと近づけていく。

マウスピース制作写真

後藤「基本となる成型は最新の5軸CNC旋盤を使いますが、ここのプログラミングで1000分の1ミリ単位で修正を入れていきます。最後の仕上げは手作業で行ないますが、ひとつひとつのバラつきをなくすためには、まずはCNCで完全に元となる各部位の数値を決定しなければなりません。ただし、モニター上で理想の値をプログラミングしても、最終的には吹いて判断しなければわかりません。試作しては何度も吹いて、チェンバーを少し削り、また、100分の数ミリ数値を改定してバッフルを盛り上げる。そんな作業の繰り返しでした。」

機械での正確な作業部分がカチッと決定した後、機械では再現できない熟練の職人による手作業が加わることで、理想のマウスピースが完成する。後藤氏のリフェイサーとしての長年の経験が、一本一本に活かされているのだ。

 

自分自身の音を楽しみたい人へ

肝心の音色部分については、まず素材としてエボナイトを使うことにこだわった。当然ながら素材によって求める音色が変わってくるが、今回はエボナイトでなければ出せない“音の深みと艶”を持たせたかったのだ。
さらに具体的に言うと、ブリっとした芯のある中音域、低音域に加え、全体的にザワザワというよりはシャリッとした倍音成分、付帯音を多く含む、いわゆる“バズが効いた音”を目指した。

後藤「「ふくよかな中音域、低音域に加え、高音もストレスなく出すことができます。メインストリームジャズをやる人はもちろん、どんなジャンルでも活躍してくれるはずです。また、吹きやすさに加えてバラつきがないため、最初の一本としてもおすすめできます。とにかく『吹けばわかる』ということで(笑)、まずは一度音を出してみてほしいですね」」

自分が求める音の好み、指向によって様々な表情を見せてくれるのが“ニューヨーク・メイヤー”だ。そのエッセンスを集結して作られた“Resonance”で、あなたが求める、あなただけの音を存分に楽しんでいただきたい。