NYメイヤーをリスペクトし製作に至ったアルト用マウスピース「Resonance」誕生の軌跡。
いまもなお高い人気を誇るヴィンテージマウスピースNYメイヤー。この優れたマウスピースを再現したいという思いのもと、ザ・サックスとGottsuがコラボし完成させた「Resonanse」。その軌跡をご紹介。
サックスマウスピースの取材を重ねる度に、いつも取りざたされるマウスピースこそアルトのヴィンテージメイヤーと、テナーのヴィンテージオットーリンクだ。ことアルト奏者において、現在でもこのNYメイヤーの使用者は多く、また多数メーカーもNYメイヤーを手本にしたモデルを製造している。そこで、この優れたマウスピースを、ザ・サックスチームでなんとか再現できないか、また、叶うならばそれを販売してみたい。そんな考えを、取材を通じて以前から親交のあった後藤氏に相談したところ、コラボレートによる製作を快諾いただいた。そしてプロジェクトが始動し、完成に至った。ここではその内容をかいつまんでご紹介したい。
レゾナンス完成までの試練
後藤氏がこれまでに試作を重ねてきたマウスピースの中でも、バランスが良く、明るめの音色で、このままでも販売できそうなプロトタイプ。そのデータがレゾナンスの基となった。
そのプロトタイプのチェンバーの広さやバッフルの高さなど、CADデータの数値を少しずつ変更してはCNCマシンでエボナイトを削り出す。規範にする数値は、編集部員所有のヴィンテージ&現行メイヤー数十本の中から、付帯音を多く含んだ艶っぽい音色の数本を選び出し、チェンバーやバッフル、ボアからスロートにかけての長さなど各部位を計測し割り出した。そこから得た情報をプロトタイプに当てはめたが、ただ数値を当てはめるのでなく、そこには後藤氏の経験による感覚やザ・サックスチームの意見も加味される。
造っては試奏するといった、両者のトライアンドエラーを繰り返し、昨年11月初旬、共に納得のいくマウスピースが出来上がった。
そして、いよいよ販売に向けて最初のロット製作を後藤氏に依頼。これまでの苦労を思い返しながら安堵に浸っていたその矢先、「完成品を試したけど、修正が必要だね」と後藤氏からの連絡…。「良い感じに仕上がっていたはずなのに、なぜ !?」そんな思いのまま後藤氏の工房で早速試奏してみる。音は良いが、息を吹き込むとやや詰まった感じ、また結構息を持って行かれる印象で、確かにダメだと悟った。完成予定日を気にするあまり、どこかに妥協の意識があったのかもしれない。そう反省しながらも、ここからの切り返しは疾かった。「この息の詰まりは、おそらくロールオーバーバッフルのバンプの位置が先端に近すぎるのが原因!」と、後藤氏の指摘を実行してみるとズバリその通り。そしてもう一つの問題点、息を持って行かれる感じは、協議の結果、チェンバーからスロートにかけて少し絞り気味にやや狭くしてみたらこれも大正解。最終的には、後藤氏のマウスピース製作の経験、技量が大きな頼りとなったが、昨年末ついにレゾナンスは完成した。
当初定めていた完成までの試作品製作本数を大幅に超え、完成予定日をも経過してしまうなど紆余曲折を経たものの、ポテンシャルの高いマウスピースに仕上がり、ザ・サックスチーム、後藤氏ともに歓びを感じている。
エボナイトの丸棒をCNCマシンで削りだし、後藤氏によるハンドフィニッシュが施されるアルト用マウスピース「Resonance」は、アルソオンラインで絶賛発売中。また、3月13日に東京目白NCKビルで開催される「Gottsuマウスピース試奏会(詳しくはTHE SAX 75号 P.64、またはリフェイス講習会イベント申込みページ参照)」でも、この「Resonance」を試すことが出来る。レゾナンスとセピアトーンVIの吹き比べなど、是非お愉しみいただきたい。
アルト用マウスピース Resonance
ティップオープニングサイズ:5、6、7
価格: ¥35,000(+税)