チャーリー・パーカーのすべて
まずは聴いておきたいパーカー名盤5選
―文:原田和典
「チャーリー・パーカー・オン・サヴォイ 〜マスター・テイクス」
日本コロムビア COCB-53488〜9 [1944-48]
ビッグ・バンドによるスウィング・ジャズが絶大な人気を誇り、ディキシーランド・ジャズもリバイバルしていた40年代半ば、パーカーは忽然とシーンに登場し、このCDに収められているようなビバップ(モダン・ジャズ)を演奏した。ジャズ雑誌からは「有害」とすら書かれ、一方では「伝統的ジャズvsビバップ」なる論争も起きた。1曲1曲が“ジャズの時代”を揺るがしたといっても過言ではない、当時最先端の演奏集。
「チャーリー・パーカー・ ストーリー・オン・ダイアル vol.1」
ユニバーサル ミュージック UCCU-5769 [1946-47]
“ダイアル”は熱狂的パーカー・ファンであったロス・ラッセルが46年にロサンゼルスで創立したレーベル。翌年、パーカーのニューヨーク帰還にあわせてオフィスを同地に移した。これは西海岸時代に吹き込まれた演奏集で、東海岸録音の「Vol.2」と対をなす。パーカー自ら「こんなすごい吹奏はもうできない」と語ったと伝えられる『フェイマス・アルト・ブレイク』を筆頭に、永遠に古びないパフォーマンスが並ぶ。
「ウィズ・ストリングス」
ユニバーサル ミュージック UCCV-9033 [1949]
弦楽合奏をバックに、スタンダード・ナンバーの数々を悠々とプレイしている。この企画によってパーカーの存在は、一部の前衛ジャズ・ファンの間から幅広いジャズ好きの間へと広まったという。狂おしいほどのアップ・テンポに乗って超絶フレーズをこれでもかと連発するパーカーもいいけれど、『サマータイム』の“泣き”、チャーミングな『ジャスト・フレンズ』など、このアルバムにはここにしかないパーカーの美点がある。
「Complete Live At The Rockland Place」
Rare Live RLR88641 [1950-52]
死の3年前に残したライブ・レコーディング。正規の録音ではなく、オーディエンスが記録したものなのかもしれないが、猥雑なざわざわ感、異様な生々しさが「何かとてつもないエキサイティングな場所に居合わせているスリル」をかきたてる。演奏はどれも圧巻だが、頂点に達するのは『レスター・リープス・イン』。クリント・イーストウッド監督映画「バード」にも挿入された、アドリブの桃源郷というべき劇演・爆演だ。
「ナウズ・ザ・タイム」
ユニバーサル ミュージック UCCU-8035 [1952-53]
パーカーのオフィシャル音源は最初の10年が「ワックス録音」、最後の5年が「テープ録音」である(ステレオ録音が普及する前だったので全部モノラル)。本作はパーカーの後期を代表する1枚で、サヴォイやダイアル時代に比べて音質が向上、しかも数少ない全編ワン・ホーンによる作品であることも価値を高める。45年頃に作曲されながら、録音運に恵まれなかった『コンファメーション』はこれが唯一のスタジオ吹き込み。