サックス記事 小林香織 サックスというインストの枠を超えたい
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THE SAX vol.46 Cover Story

小林香織 サックスというインストの枠を超えたい

ARTIST

毎年アルバムを発表し、その都度新しい表情を見せてくれる小林香織氏。待望のニューアルバム「PRECIOUS」は、ベスト盤、J-POPカバーアルバムを経て、実に3年ぶりとなる本編すべてオリジナル曲で構成された意欲作だ。 自身、「この3年間の想いはとても濃いものであり、それをすべて注ぎ込んだ充実のアルバム」と語る通り、これまでのフレッシュなイメージに加え、ひとりのアーティストとしての成長を感じさせてくれるプレイの数々が収められている。
小林氏が語る「濃い想い」とはどんなものだったのか、久しぶりの巻頭インタビューが実現した。


いろいろなカラーの音楽を詰め込んだニューアルバム

最新アルバム「PRECIOUS」は、ボーナストラックを除く全編オリジナル曲で構成され、意欲的な内容という印象を受けました。特に前編の楽曲では、これまでの小林さんのイメージを保ちつつも挑戦されている姿勢を感じましたが……。
小林香織
自分自身、常に挑戦し続けたいとは思っています。音楽ってゴールがないじゃないですか?  例えば、今できないことができるようになったら、また新たにできないことが見えたりして…… たぶん、ずっとそれを追い求めて、気が付いたらレベルが向上しているという。一つのことを追い求めるというのはそういうことだと思うので、今作では私が3年間追い求めてきた「今現在できるベスト」を尽くせたかなと思っています。
一度聴いたら耳に残るメロディックなテーマが印象的な『PRECIOUS』や、インド音楽を彷彿させるモーダルでエキゾチックな『Great India』など、何度も聴き返してしまうようなクセになる楽曲が魅力的ですね。作曲のコンセプトはどのようなものですか?
小林
私が作った曲と、プロデュースしてくださったベーシストの村田隆行さんの曲、そして私と村田さんの共作という3種類あります。
『PRECIOUS』は私が一人で書いた曲で、『Great India』は村田さんが「サックスでこんなのどう?」といって書いてくださった曲。ベースという楽器はサックスと正反対のところにいる楽器だと思うんですね。私たちは吸った息で音を作り出します。そして楽器についているボタンで音を変えるわけですけど、ベースをはじめ弦楽器は弦を押さえたり弾いたりして音を出します。なんというか、管楽器とはまったく違う発音体を持つ楽器なので、そういう楽器をプレイされている方が作ったサックスの楽曲はおもしろいなと思いました。今回、村田さんが書いてくださった曲は、サックスプレイヤーとして新たな発見をさせてくれる楽曲ばかりなので、アルバム制作を通して、1枚分以上のことを学ばせていただいたと思っています。
『PRECIOUS』も、今までの小林さんの曲よりさらに印象的なメロディというイメージがあります。
小林
今年でデビューして6年目になります。デビューしてからいろいろと変わったことがあ りますし、6年という月日は長いような短いような...... ただ、1年に一度アルバムを出させていただいて、いろいろな発見をしていくなかで ...... 大きく変わったこともあるけれど、デビューしたころからずっと、変わらずに伝えたいことってあるんですよね。『PRECIOUS』は、自分の周りの環境であったり、自分自身の価値観が大きく変わったり、できないことができるようになったり、その中でも「変わらないもの」が一番出ている感じがします。
今回のアルバムのコンセプトなどがありましたら教えていただけますか。
小林
私の演奏は、大きく分けると Jazz と言われることが多いんですが、私自身は Jazz プレイヤーであるという自覚がまったくないんです。「だって、アドリブやっているじゃない」と言われれば、まぁ Jazz なのかもしれませんけど......。私はただ音楽が好きで、感動できるものや温かいものが好き。楽器の中でひとつ選べと言われたらサックスだということで、デビューから6年間ここまできましたが、やはり Jazz と限定されてしまうことはすごく窮屈な感じがします。とにかく、Jazz やフュージョンの枠を超えて「あの人のサックスは何系なんだろうね、なんかいいよね」って言ってもらえればそれでいいと思っているんで すよね。聴き手の捉え方によってはイージーリスニングでも構わない。ですから、アルバムのコンセプトとしては、幅広いというか、エスニックなほうにも行くけれど、ちょっと打ち込みっぽいハウス系のものやオーガニックなもの、逆に Jazzy なものもあったり。いろいろなカラーの、いろいろな洋服を着てみたという感じです。
なるほど。聴いていても、ビートもメロディも、様々な要素が凝縮されていると感じました。
小林香織

Profile
小林 香織 (こばやし かおり)

神奈川県生まれ、東京育ち。中学校の吹奏楽部でフルートを担当。個人でサックスを始め、クラシック・サックスを原ひとみ氏に師事。1999年ジャズ・サックスに転向、ボブ・ザング氏に師事。洗足学園音楽大学、ジャズ科へ入学。2005年、ビクターエンターテインメントより「Solar」でデビュー。国立代々木競技場で開催された CROSSOVER JAPAN '05 に村上“ポンタ”秀一氏(Ds)らと共に出演。2006年2ndアルバム「Fine」、コンピレーションアルバム「kaori's Collection」、初のライブDVD「Kaori Kobayashi LIVE」をリリース。2007年3rdアルバム「Glow」をリリース。韓国「Baekam Art Hall」で、コンサートを開催。2008年4thアルバム「Shiny」をリリース。2009年ベスト・アルバム「小林香織 ゴールデン・ベスト」、J-POPカバー・アルバム「LUV SAX」リリース。2010年、台湾で YouTube にアップされたライブ映像が350万回を越えて閲覧され、アジアで大ブレイク。10月、タイでファンクラブが結成され、タイに招聘された公演が大きな話題を呼んだ。
http://www.kaorikobayashi.com


CD Information

「PRECIOUS」小林香織
 
「PRECIOUS」小林 香織
初回盤(CD+DVD)【VIZJ-11】¥3,600(税込)
通常盤(CD)【VICJ-61646】¥3,150(税込)

[CD収録曲]Overture 〜火の鳥〜 / PRECIOUS / TANABATA / Prologue 〜Great India〜 / Great India / Kahlua Milk / Organic Relation / Maximum Attack / Garniture / Stay with You / Peridot / Nothing's Gonna Change My Love for You(Bonus Track)
[DVD収録曲] TANABATA(ライブ) / Prologue 〜Great India〜(ライブ) / PRECIOUS(PV) [Personnel] 小林香織(As,Ts,Fl)、マサ小浜(Guit)、 NOBU-K(Key)、村田隆行(Bass、プロデュース)、宮崎裕介(Key)、中沢剛(Ds,Perc)、岸田容男(Ds)


次ページにインタビュー続く
・アルバムを作るたびに学ぶことがある
・小林香織流 “ハイトーンの心構え“
・オーディエンスにたくさんの夢を持ち帰ってもらいたい

登場するアーティスト
画像

小林香織
Kaori Kobayashi

1981年、神奈川県生まれ東京育ち、母はピアノ教師、父は写真家。中学1年から吹奏楽部でフルートを、高校2年でアルトサックスを始め、原ひとみ氏に師事。2000年に洗足学園音楽大学ジャズコースに入学し、ボブ・ザング氏に師事。在学中より都内のライブハウス等で活動し、卒業後の2005年2月、ビクターエンタテインメントより「Solar」でメジャーデビュー。現在までにベストアルバムを含む12枚のアルバム、ライブDVD、譜面集2冊を発表。YouTubeにアップされた『Nothing's Gonna Change My Love For You』が世界中で多大なアクセス数を記録し新聞テレビで話題になり、アジアでの公演を行なう。2013年には台湾のサックスメーカーTKMelodyとの共同開発による小林香織モデルのサックスが発売される。2016年8月に発表した洋楽カバーアルバム「MELODY」では、魚類学者でタレントのさかなクンが参加したことで話題となる。現在、泉谷しげる、タケカワユキヒデらのライブサポートに加え、ジャンルを問わず様々なレコーディングにも参加する他、母校である洗足学園音楽大学ジャズコースの講師として後進の育成にも力を入れている。2018年9月26日キングレコードに移籍、その第一弾として全曲オリジナルのニューアルバム「Be myself!」を発表。

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