サックス記事 ボサノヴァの巨匠たちにオマージュを 捧げたニューアルバム 「ブラジリアン・ナイツ」が完成!
  サックス記事 ボサノヴァの巨匠たちにオマージュを 捧げたニューアルバム 「ブラジリアン・ナイツ」が完成!
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THE SAX vol.69 Cover Story

ボサノヴァの巨匠たちにオマージュを 捧げたニューアルバム 「ブラジリアン・ナイツ」が完成!

ARTIST

サクソフォンという範疇を超えて、ポピュラー系インストゥルメンタル音楽の世界で史上最も成功を収めた音楽家であるケニー・G。そんな偉大な男がニューアルバムのテーマに選んだのは「ボサノヴァ」。アントニオ・カルロス・ジョビンをはじめとするボサノヴァの巨匠たちにオマージュを捧げ、カヴァーとオリジナルでケニー・G流ボッサの世界を作り上げた「ブラジリアン・ナイツ」は季節を問わず一年中楽しめる絶品の仕上がりだ。
(文:櫻井隆章/協力:ユニバーサル ミュージック合同会社)

真正面からボサノヴァと向き合った意欲作

世界的な存在のサックス奏者、ケニー・Gが実に意欲的なアルバムを完成させた。何と4年ぶりとなるそのアルバムは「ブラジリアン・ナイツ」。それは、タイトル通りの内容だ。要するに彼がボサノヴァに挑戦した作品なのである。だが、そんなにコトは簡単ではない。ここには、幾重にも張られた多くの意味合いが込められているのだ。一つひとつ、見ていこう。
まず、サックス奏者がボサノヴァ・アルバムを真正面から作るということが、実は珍しいのだ。サックス奏者の多くは、誰か共演相手を得た上でボサノヴァ作品を作るという例がほとんどなのである。例えば永遠の名作との評価も高い、スタン・ゲッツの「ゲッツ/ジルベルト」でのゲッツは、ボサノヴァを作った一人とも言われるジョアン・ジルベルトを共演相手に選び、あの名作を生み出した。もちろん、そこには当時のジョアンの奥方であったアストラッド・ジルベルト他の素晴らしい共演相手もいたのだが。つまり、サックス奏者が単独でボサノヴァのアルバムを作ること自体が、割と珍しいことなのだ。なお、ケニー・Gは今までのアルバムで数多くのシンガーをゲスト・ヴォーカルに迎えているが、今回はそうしたシンガーのゲストはいない。つまり、裸の状態で「今の僕の実力とセンスとで作ったボサノヴァ・アルバムを聴いてほしい」という宣言でもあるのだ。

また、今回も彼は共作相手にウォルター・アファナシエフを選んでいる。彼は、ケニー・Gのファンからは長年の名コンビとして知られる存在で、1992年のグラミー賞に輝いた名作「ブレスレス」以降のすべてのアルバムでケニー・Gと一緒に共同プロデュースを担当し、アレンジも担当。今回もケニー・Gと共同でのプロデュースとアレンジを担った。このアファナシエフ、世間一般にはデビュー当時からのマライア・キャリーに大成功をもたらした男として有名だ。日本でも大ヒットとなった『恋人たちのクリスマス』も彼の手になるナンバーである。他にもホイットニー・ヒューストンやセリーヌ・ディオン、リッキー・マーティンやベイビーフェイスなどを手掛けてきたプロデューサーでもあるのだが、実は彼はブラジルのサン・パウロの生まれなのである。つまり、アファナシエフにとって、ボサノヴァは幼い頃から耳に馴染んできた音楽なのだ。彼は1958年の生まれなので、ちょうどボサノヴァが誕生した直後に生を受けたことになる。更には、彼はミュージシャンとして非常にマルチな人間。メインにはピアノを始めとする鍵盤楽器を担当するが、ギターも弾けばドラムも叩くし、チェロまでプレイするという多才ぶりなのである。今まで色々なアーティストのプロデュースを担当してきた際に、そうした各種の楽器を自ら奏でて来たキャリアを持っているのだ。また、優秀な作曲家でもある。


CD Information

Brazilian Nights
「ブラジリアン・ナイツ」 
ユニバーサル ミュージック
【UCCO-1153】¥2,600+税
演奏]ケニー・G(Ss,As,Ts)、ウォルター・アファナシエフ(Pf,Kyd,Prog)、サム・ハーシュ(Pf)
[収録曲] 1. ボッサ・アンティグア(As) 2. コルコヴァード(As) 3. ボッサ・リアル(Ss)  4. ブラジリアン・ナイツ(Ts) 5. エイプリル・レイン(As) 6. メニーナ・モッサ(Ts) 7. ブー・ボッサ(Ts) 8. クラウズ(As) 9. イパネマの娘(Ts) 10. サマー・ラヴ(Ss)

次ページにインタビュー続く
・キャノンボールでハマりゲッツに浸るボサノヴァ愛
・ 往年の名曲のカヴァーと並べても遜色ないオリジナル曲
・歴史的な先輩サックス奏者たちと同じ土俵に上がる!

登場するアーティスト
画像

ケニー・G
Kenny G

1956年6月5日、ワシントン州シアトル生まれ。大学卒業後、22歳で ジェフ・ローバー・フュージョンの全米ツアーに参加、 各地を回るうちに当時アリスタ・レコードの社長クライヴ・デイヴィスに見出されソロプレイヤーとして契約。デビューアルバム「シティ・ライツ」(1982年)でソロとしてのキャリアをスタート。転機となったのが、86年発表の4作目のアルバム「デュオトーンズ」からのシングル『ソングバード』の大ヒット(全米4位)。当時インスト・アルバムとしては異例の全米600万枚のセールスを記録、続いて88年の「シルエット」も大ヒット。92年グラミー賞に輝いたアルバム「ブレスレス」は、2年間で全米1,500万枚のセールスを突破、4年間もチャート・インして、インスト史上初の快挙となり、ギネスにも登録された。続いて、ベイビーフェイス、トニ・ブラクストンらの参加が話題となった96年の「ザ・モーメント」を経て、97年に「グレイテスト・ヒッツ」を発表。99年には初のスタンダード・カヴァーアルバム「クラシックス〜キー・オブ・ケニー・G」を発表。2005年には、名曲の数々を豪華ゲストとともに共演したアルバム「デュエット」が大ヒット。2006年にはポップ・カヴァーアルバム「ムード・フォー・ラヴ」などアリスタで全18枚のアルバムをリリース。2008年には、長年所属していたアリスタ・レコードを離れ、コンコード・レコードに移籍、第1弾「ロマンスの足音」、第2弾「ハート・アンド・ソウル」をリリース。現在もコンテンポラリー・ジャズ~スムース・ジャズのアイコンとして世界中で絶大な人気を誇っている。全世界で7,500万枚以上のアルバム、シングル、ビデオを売り上げ、グラミー賞、アメリカン・ミュージック・アワード、ソウル・トレイン・アワード、ワールド・ミュージック・アワード、NAACPイメージ・アワードを受賞。ハリウッド・ウォーク・オブ・フェイム入りなども果たしている。

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