サックス記事 馬場智章  NY在住の日本人ミュージシャンが集結した「J-Squad」テナー奏者 サックス記事 馬場智章  NY在住の日本人ミュージシャンが集結した「J-Squad」テナー奏者
THE SAX vol.93 Interview

馬場智章  NY在住の日本人ミュージシャンが集結した「J-Squad」テナー奏者

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プロになろうと思ったきっかけは?
馬場
バークリー音楽院とタイアップしたグルーブキャンプに参加した時です。バークリーで教授を務めていたトランペッターのタイガー大越さんが札幌にいらして、その指導の内容や熱量などすべてが新鮮でした。自分もバークリーに行ってみたいなと感じ、そのキャンプでもらった賞の副賞で「バークリーサマープログラム奨学金」をいただいて、15歳のとき初めて渡米しました。夏休み中の5週間、世界中から同世代のミュージシャンの卵が集まって、寮での共同生活をしながら勉強するんです。最初は英語も話せないし、ホームシックもあって辛かったけれど、終わるころには「また来たい!」となりました。結局、毎年参加するための奨学金をかけたオーディションを受けて、夏休み毎に計4回渡米しました。
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その後、2011年にバークリー音楽大学に入学されたのですね。
馬場
はい。錚々たる顔ぶれのいろんな先生方に教えを受けて、カルテットなどのバンドレッスンでも大いに刺激を受けました。とにかく競争社会で悔しい思いもたくさんしたけれど、それがあったからこそ、ここまで続けてこられたと思います。在学中に、自分が本当にやりたいことは何なのかを考え抜く時期もあって、ジャズはもちろん、あらゆるアートとのコラボレーションに挑戦したいという結論に至りました。そのチャレンジに合っているのはニューヨークだと感じて、卒業後はボストンから拠点を移したんです。
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ちょうどその頃、「J-Squad」への加入が決定したそうですね。
馬場
すごいタイミングで声が掛かって、ご縁を感じました。無名だった僕にとって、このバンドは大きな転機となりました。メンバーはみんな自分の作る音楽にストイック。百戦錬磨の人たちなので、自分の音楽性や演奏技術について、とても考えさせられます。僕らはニューヨークで培った技術や考え方を日本に還元したいと考えているので、アルバムやライブを通して多くの人に伝えられたらいいなと思っています。

どんどん鳴りが良くなる 新しい相棒をさらに育てる!

馬場智章
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「J-Squad」はセカンドアルバムをリリースし、11月から12月にかけての日本全国をツアー。そこでは、楽器を替えて挑まれたそうですね。
馬場
ヤマハのYTS-82ZSを購入して使い始めたのですが、ツアー中にどんどん鳴りが良くなってきました。僕が楽器選びで重視するのは、いろんな音色が出せること。また、音の質感と音程のコントロールも大切です。この楽器は、それをクリアしてくれました。以前はセルマーのヴィンテージを使用していたのですが、やっぱりヤマハは圧倒的に音程が取りやすく、吹きやすいですね。キィの操作性は、ヤマハアトリエ東京に相談し、工夫してもらいました。技術者のサポートはとても心強いですね。僕が吹き込むことで、この新しい楽器が育っていく手応えを感じています。
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「J-Squad」はセカンドアルバムをリリースし、11月から12月にかけての日本全国をツアー。そこでは、楽器を替えて挑まれたそうですね。
馬場
ヤマハのYTS-82ZSを購入して使い始めたのですが、ツアー中にどんどん鳴りが良くなってきました。僕が楽器選びで重視するのは、いろんな音色が出せること。また、音の質感と音程のコントロールも大切です。この楽器は、それをクリアしてくれました。以前はセルマーのヴィンテージを使用していたのですが、やっぱりヤマハは圧倒的に音程が取りやすく、吹きやすいですね。キィの操作性は、ヤマハアトリエ東京に相談し、工夫してもらいました。技術者のサポートはとても心強いですね。僕が吹き込むことで、この新しい楽器が育っていく手応えを感じています。
 
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今後の活動予定は?
馬場
実は、昨年からソロアルバムを制作中です。ボストンとニューヨークで活動してきて7年になるので、そろそろ自分が何をやりたいのか発信していかないと、次の活動に繋がらないなと痛感しました。ミュージシャンにはいろんなスタイルがあって、リーダーとして牽引していく人やスタジオ・ミュージシャンに徹する人など、さまざまですよね。じゃあ、自分はどうなのかと考えた時、今の僕が自分の世界観を作るためには「作曲」が一番しっくりくると感じました。今回は初のアルバムになるので、本当に自分がやりたいことをやってやろうと思い、作曲に力を入れています。
既にバンドのレコーディングはニューヨークで済んでいて、僕が一緒にやりたいメンバーを集めたら、日本人、韓国人、ギリシャ人という顔ぶれになりました。それから、デュオとしての収録が現在進行中で、サウンドクリエイターの國本怜さんと2人でプロジェクトを進めています。僕が即興で吹いたサックスの音を基本に、ベース音、ノイズ音などに変換しながら、新たな音楽を作り出しています。このアルバムのリリースは春ごろを目指していて、その後は日本でツアーをやれたらと考えています。そして、ゆくゆくはバンド+オーケストラというスタイルで自分の曲を演奏できたら最高だなと思っています。来年は難しくても、再来年くらいには実現したいですね。
馬場智章
 

バークリー仕込みのとっておきロングトーン練習法

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では、最後に読者へ効果的な練習法をひとつレクチャーしていただけませんか?
馬場
推奨するのは、ロングトーンです。と言っても、いろんな方法がありますよね。おすすめしたいのは、僕がバークリーで指導を受けたジョージ・ガゾーン直伝の練習法で、リードが振動するかしないか、音が鳴るか鳴らないかの音量で保つロングトーンです。このとき吹きこむ息の量は普通に音を出すときと同じで、リードを振動させることを意識するのが大切です。力が入っていると音が安定しないので、アンブシュアの確認にもなります。大きな音を出さないので、ツアーで移動が多くて満足に楽器が吹けない時にもできるし、口が鈍ってしまった時の修正にもなります。この練習をすることで、音を鳴らすというプロセスをしっかり理解することができます。
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なかなか難しそうなロングトーンですね。
馬場
できるようになるまでは、少し時間がかかるかもしれません。僕も一日中この練習に取り組んで、習得するまでに3日程かかりました。最初は難しいと感じるかもしれませんが、続けてみると1週間後には音が圧倒的に変わります。サックスだけでなく、楽器の演奏では音が良いことが正義なんです。自分の音色を作ることが一番大事。そのためには、この練習が欠かせないと思います。できることなら、皆さんに教えたくないくらいです(笑)。
YTS-82ZSWOF
 
登場するアーティスト
画像

馬場智章
Tomoaki Baba

1992年生まれ。札幌ジュニアジャズスクールにてサックスを始め、2005年、タイガー大越氏により開催されたBerklee College of Musicタイアップの「北海道グルーブキャンプ」で優秀賞受賞、2010年、テリ・リン・キャリントン(Ds)が指揮するBerklee Summer Jazz Workshopのメンバーに選抜、奨学生として参加。2011年、バークリー音楽大学に全額奨学生として入学以来、テリ・リン・キャリントン、テレンス・ブランチャード(Tp)、ジェイミー・カラム(Vo,Pf)等のグラミー・アーティストと共演。2016年から4年間 「報道ステーション」のテーマ曲を所属するバンド「J-Squad」で手掛け、UNIVERSAL MUSIC JAPANよりアルバム「J-Squad」、「J-Squad Ⅱ」を リリースし「Blue Note Tokyo」、「Fiji Rock Festival 17」にも出演。2020 年 に自身初のリーダーアルバム「Story Teller」、 2022年4月に2ndアルバム「Gathering」を発表。

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