サックスの歴史を変えた スーパーレジェンド デヴィッド・サンボーンのすべて
そのワン&オンリーのスタイルで多くのフォロワーを生み、サックスという楽器のシンボルのような存在にもなったデヴィッド・サンボーン。サックスヒーローへと駆け上がった劇的な歩みを辿っていく。オンラインではその一部をご紹介する。
そのワン&オンリーのスタイルで多くのフォロワーを生み、サックスという楽器のシンボルのような存在にもなったデヴィッド・サンボーン。巻頭インタビュー「Cover Story」では彼の最新ヴォイスをお伝えしたが、今回はそれに続いて特集でもサンボーンを深く掘り下げていく。まずはサックスヒーローへと駆け上がった劇的な歩みを辿っていく。オンラインではその一部をご紹介する。(文:熊谷美広)
多くの出会いにも彩られたドラマティックなヒストリー
医師のすすめでリハビリのためにサックスを手に
デヴィッド・サンボーンは1945年7月30日、フロリダ州タンパで生まれ、幼い頃にミズーリ州セントルイスに移る。子どもの時にポリオにかかってしまい、医師のすすめでリハビリとしてアルトサックスを始めた。彼の独特のアンブシュアによる個性的なスタイルが生まれたのは、そういった事情によるものなのである。そしてブルースやジャズにのめり込むようになり、14、15歳の頃から地元のブルース・バンドなどでプレイし始め、1967年にサンフランシスコに移ってポール・バターフィールド・ブルース・バンドのメンバーとしてプロ・デビューを果たす。
1971年にバターフィールドのバンドを脱退し、ニューヨークに移ってセッション・ミュージシャンとして活動を始め、数多くのトップ・アーティストたちのレコーディングに参加し、またギル・エヴァンス・オーケストラにも参加する。
1975年にブレッカー・ブラザーズに加入して彼らのデビュー・アルバムに参加する一方で、初リーダー作「テイキング・オフ」をリリースする。その後「メロウ・サンボーン」(1976年)、「流麗なる誓い」(1977年)、「ハート・トゥ・ハート」(1978年)とリーダー作を制作する一方で、セッション・ミュージシャンとしても数多くのアーティストと共演していった。
その後のパートナーとなるマーカスらとの出会い
1980年、アレンジャーのマイケル・コリーナ、エンジニアのレイ・バーダニと画期的な作品「ハイダウェイ」を制作する。深めのエコーや自身の多重録音によるサックス・セクションなどを取り入れたサウンドはシーンに大きな衝撃を与え、リーダー作としては初めてゴールド・ディスクを獲得する。さらに1981年に「夢魔」を制作し、後に名パートナーとなるマーカス・ミラーも初めて参加した。
その後も「ささやくシルエット」(1982年)、「バックストリート」(1983年)、「ストレイト・トゥ・ザ・ハート」(1984年)と快作をリリースし、1986年にはボブ・ジェームスとの共演作「ダブル・ヴィジョン」をリリースして好評を呼んだ。そして1987年、その後ライブの人気曲となる楽曲を多く収録した「チェンジ・オブ・ハート」をリリースし、その人気は揺るぎないものになっていった。さらに「クローズ・アップ」(1988年)のリリース後、1990年にはマイケル・ケイメンがサンボーンのために書き下ろした「コンチェルト・フォー・サキソフォン」を、さらに1991年にはビル・フリゼール、チャーリー・ヘイデンなどとフリーなインプロビゼイションを展開した問題作「アナザー・ハンド」をリリースして話題となった。また1988年からテレビ番組『ナイト・ミュージック』のホスト役を担当して話題となった。
押しも押されもせぬスーパースターへ
その後も「アップフロント」(1992年)、「ヒアセイ」(1994年)と、マーカスのプロデュースによるファンキーなアルバムを制作する一方、オーケストラをバックにスタンダードやポップス・ナンバーを歌い上げた「パールズ」(1995年)、打ち込みを中心とした「ミュージック・フロム・ザ・ナイト・ビフォア」(1996年)、「アナザー・ハンド」の続編ともいうべき「インサイド」(1999年)など興味深い作品も次々とリリースしていった。 また1997年には、マーカス・ミラーとエリック・クラプトンが中心となって結成されたスペシャル・ユニット“Legends”にジョー・サンプル、スティーヴ・ガッドともに参加し、ヨーロッパをツアー、世界的に大きな注目を集めた。
その後は「タイム・アゲイン」(2003年)、「クローサー」(2005年)、「ヒア・アンド・ゴーン」(2008年)、「オンリー・エヴリシング」(2010年)と、ルーツ回帰ともいうべきR&B色溢れる作品を発表し、2013年にはボブ・ジェームスとの共演第2作「クァルテット・ヒューマン」を、そして最新作「タイム・アンド・ザ・リヴァー」では再びマーカスと組むなど、今なお精力的な活動を展開している。
まずはコレを聴くべきリーダーアルバムSELECT10
must buy DAVID SANBORN Solo Album Collection
リーダーアルバムの数だけでも30近くにのぼるデヴィッド・サンボーン。その中からサンボーンをこれから聴こうという人に是非とも薦めたいマストアイテムと呼べる10作品を選んでみた。(文:熊谷美広)
本誌では、各アルバムについて細かく紹介しています。
ワーナーミュージック・ジャパン
WPCR-27411 [75年]
ワーナーミュージック・ジャパン
WPCR-28021 [80年]
ワーナーミュージック・ジャパン
WPCR-28070 [82年]
ワーナーミュージック・ジャパン
WPCR-28072 [84年]
ワーナーミュージック・ジャパン
WPCR-28023 [86年]
ワーナーミュージック・ジャパン
WPCR-28110 [87年]
ワーナーミュージック・ジャパン
WPCR-28137 [88年]
ワーナーミュージック・ジャパン
WPCR-27468 [91年]
ワーナーミュージック・ジャパン
WPCR-28138 [92年]
Warner Bros.61759
[95年]
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・Lesson「アドリブ解析」
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